精霊剣士の物語〜 〜Adasutoria〜其の十二
どうも、作者の伊藤睡蓮です。ちょっと遅くなってすいません(´・ω・`)
というわけで今回のお話は……見てからのお楽しみということで(上手く言えない)
それではどうぞ!
22,〜精武祭2日目 突然の乱入者〜
「それではみなさん、今日が精武祭の最終日。今日、この晴天の中、学園のナンバーワンのチームが決まります。」放送委員長の鈴木みなみ先輩が体育館の真ん中に立つ。
「それにしてもすごいな。観客がほとんどいない。大会出場チームだけか。」と控え室のモニターを見ながら独り言で呟いたつもりだったが、
「まぁ1日目を見た人たちがSNSでその試合を拡散してる人がいて人気が出たらしくて一般の人がいっぱい見に来たから立ち入り禁止にして武精学園の生徒たちは学園のモニターで見てるらしいわよ、しゅう。」と夏音が歩きながら近寄って来た。
「さすが夏音先輩ですね。なんでも答えてくれますね。」春香もとことこと駆け寄って来た。
「お、2人とも着替え終わったか。あれ?真冬が見当たらない。それに夏音、そろそろ対戦チーム決めが始まるんじゃないか?」と言うと春香が、
「あぁ、それなら真冬先輩が……あっ、ほらほら、モニター見てください。来ましたよ。」
何を言ってるんだ?
「それでは、対戦チームを決めたいと思います。各チームの代表1名ずつ、計5名、全員いますね。くじには1か2の数字が入っています。同じ番号のチームとの対戦です。尚、チーム1は前日の試合でシード権を獲得しましたので、今回はくじを引かなくても大丈夫です。それでは残りの4名のみなさん、どうぞ引いてください。」
そこには真冬の姿が映っていた。
「あいつに行かせたのか⁉︎まぁリーダーが行くわけじゃないから大丈夫だろうけど。」
「真冬さん、自分が行きたいって言ったんだよ。なんか前と随分変わったよね。」そうだったのか。それは確かに変わったな。
「春香のおかげだな。ありがとな。」ぽんぽんと頭を撫でた。
「い、いえ。みなさんのお力になれたなら私も嬉しいです。」顔を真っ赤にしながら言った。
「むー。あ、対戦相手が決まったみたい。」夏音は顔を膨らませて、モニターを見て言った。
「えーっと、1番を引いたのは、チーム66とチーム33ですね。ということは2番はチーム99とチーム192。さあ、それではもう私は待ちきれないので、早速放送室にいきま〜〜す!」凄まじいスピードでその場を後にして放送室に直行して行った。
モニターで対戦相手を見た俺たちは内心では安心していた。
「よかったな、チーム66じゃなくて。」
「そうだね、優勝候補を相手にするのは今の私たちじゃ中々厳しいからね。決勝の3チームでの対戦でもつれ込むしかなかったから、よかった。」俺たちが勝てば、チーム66とチーム1との試合だ。絶対に負けられない。
そんな事を考えていると真冬が控え室に入ってきた。
「真冬先輩、ナイス引きでした。これなら決勝も夢じゃありませんよ。」真冬は少し落ち込んでいた。
「どうしたんだよ、真冬?まさか誰かに何か言われたか⁉︎」怒りが湧いてきた。
「………全力のチーム66の先輩たちと戦いたかった。」
「…………え?」俺と夏音、それに春香は真冬の発言に固まってしまっていた。
俺は我に返って頭を振った。
「いやいやいや、おかしいだろ。真冬、そこは喜ぶべきだ。それにおそらくだけどチーム66は決勝に上がってくる。その時に戦えばいいだろ。」
「それじゃあダメなのよ。今から始まる試合で少なからず魔法を使う、それじゃあ本当の全力は見れない。全力じゃない。今からチーム66と戦ってきていい?」控え室を去ろうとする真冬を3人で止める。
「ダメですよ真冬先輩!何いってるんですか⁉︎」
「真冬さん、お、落ち着いて!も、もしもチーム66が魔法を使ったとしてもおそらくなんだけど少量の魔法しか使わないと思うの、だから決勝戦までには魔力回復してると思うよ!」真冬の動きが止まった。
「夏音さん、それは本当なのよね?……だったらいい。」
3人でホッと息を吐く。ナイス夏音!
「そ、それじゃあ試合でも見るか。」とみんなに言う。
「そうね、そうしましょ。」
「さあさあもう待てませんよ!それでは早速始めたいと思います!チーム66、チーム33のみなさん準備はいいですか〜!」
両チームのリーダーは手を高く挙げる。
「それでは!しあいかい………、」突然実況をしていた鈴木みなみ先輩の放送が止まった。いや、音は入っているが何かに驚いている。
「な、何ですかあれ?」鈴木先輩はそう言った。
それは、信じられない光景だった。そのモニターに映っていたのは空の景色、しかしいつもの空の景色とは違う。
黒く、禍々しい雲がこのイプシロンの体育館の上空に渦巻いていたのだ。
慌てて控え室を出て、チーム66とチーム33がいるところに駆け寄った。
他の出場チームも出てきた。観覧席にいるチームも立ち上がってその雲を見ている。
「さっきまで雲ひとつない晴天だったよな。」誰に聞いたわけでもなかったが、
「あぁ、それにあの雲は、普通じゃない。」そう答えたのはチーム66の天津光明先輩だった。
「先輩方、あの雲が何か分かるんですか?」春香が尋ねた。するとチーム66のもう1人、地場暗真先輩がその質問に答えた。
「あれは魔力の塊だ。みんな武器を試合の武器から自身の武器に持ち替えた方がいいな。それと、君たちは避難した方がいい。さっき生徒会長から避難しろと連絡があった。」
避難、けどあの雲の正体が気になるというか、何故か見なければいけない気がして動けずにいた。
すると、渦巻いていた黒い雲は3つに分かれてまた渦巻き始めた。
生徒会の3人が集まってきた。
「生徒会長、学園長は今どこに?」光明先輩が聞くと、生徒会長は
「それがここ、圏外になって繋がらないの。おそらくあの雲のせいね。でも昨日、学園長が私に言ったことがあって、今日は4学園会議があるらしくて。決勝戦までには来ると言ってましたが……。ってしゅうとくんたち!何で逃げてないのよ。」
「す、すいません。気になってしまって。」そう言うと生徒会長は頭に手をやり、
「もう、全員の避難が出来たら私たちと一緒に逃げるわよ。」と言った。
「は、はい。よろしくお願いします。」夏音はぺこりと頭を下げた。
「生徒会長、観覧席にいたチームは全て帰らせました。後はここにいる我々だけです。」副会長の滉一先輩だ。
「生徒会長、こちらもチーム33と99の避難完了しました。」秘書の双葉もいる。
「ご苦労様、滉一、双葉。それじゃあ私たちもここからひとまず離れましょう。」
「その方が良さそうですね。」暗闇先輩も賛同する。
しかし、少し行動するのが遅かった。3つに分かれていた雲の渦からそれぞれ1つずつ、黒い塊が飛び出してきた。
「みなさん、何か来ます!」春香がそう言うと、生徒会、チーム66は咄嗟に戦闘態勢に入った。
光明先輩と暗真先輩はそれぞれ片手剣を生徒会長の零架先輩は杖を滉一先輩は大剣、双葉は魔道書を手に取った。
黒い何かがだんだんと近づいて来るにつれて、それが人の形をしている事に気付いた。
それぞれ俺たちを囲むように落ちて来た。
地面にぶつかった。砂ぼこりが舞い、前方がよく見えない。
そんな砂ぼこりの中から声が聞こえてきた。
「ふぅ〜、ようやく暴れられんのか。待ちくたびれたぜ。」男の声だ。
「でも今回の相手も、なんか弱そうだよ。」小学生くらいの男の子の声がする。
「つまんないわね。」女もいるようだ。
砂ぼこりがようやくおさまってきた。
そこにいたのは、人間だった。
「人……なのか?」光明が言う。すると剣になったイグニが何かを感じ取ったらしく、少し怯えている気がした。
「どうした、イグニ。」
「……気をつけろお前ら。そいつら3人とも、悪魔に体取られてる!」
悪魔……俺の父親を殺した……悪魔だと……。
「みんな、しゅうとくんの精霊の言う通りだと絶対に1人にならない方がいいわ。悪魔は精霊の何倍もの力。決して1人で立ち向かおうとしないで!」生徒会長の指示を聞いたみんなはこくりと頷いた。
「あの中に父さんを殺した奴の顔は見えない。だったら、直接聞くまでだ!」
その命令を聞く心の余裕が、俺にはなかった。
「ちょっと、しゅう!だめ、1人で行っちゃ!」
1人の悪魔の前まで辿り着く。
「お、お前が俺の最初の相手か。俺の名前はレオ、一応名乗っておくぜ。そして質問だ、お前は強いのか?」レオが尋ねてくる。
「ナイトメアって奴を知ってるか。知ってたら教えろ。」
「無視かよ、まぁいいか、知ってても教えねぇよ。教えなかったらどうなんだよ。」
教えなかったら?剣に炎を纏わせて剣を振るうが、一発も当たらない。
「……言わないんなら他の奴に聞く。炎狐の尻尾!」
「こりゃすげぇな。人間も大したもんだぜ。」
炎の尻尾が1匹のレオを潰した。
ーーーしゅうが飛び出していった。1人にさせてはいけない。合流しないと。
「はるちゃん、真冬さん。私、しゅうの所に行くから2人は他の先輩たちと一緒にいて。」
はるちゃんが私の腕を掴んだ。
「私も行きます、私たちはチームなんですよ!1人で行こうとしないで下さい。」真冬も同じらしい。
「わかった。一緒に行こう。」3人でしゅうの元へ行こうとした瞬間、横からもう1匹の悪魔が飛んできた。
避けられない。
「光と闇の罠!」半分は光、もう半分は闇の結界の様なものが悪魔を囲んだ。
「そのエリア内では魔法を使えない、俺と光明の合体魔法だ。」暗闇先輩に光明先輩が私たちの前に立っていた。
「大丈夫か、お前ら。」光明先輩は顔は笑っていたが剣は眩しいほどに光っている。全力だろう。
すると結界の中にいる悪魔は笑った。
「へぇ、人間にこんな事が出来るなんてちょっと驚いちゃった。それに光属性と闇属性。でも私は悪魔よ。悪魔のアクアリアス、こんなの魔法なしでも余裕よ。」片手を少し結界に触れただけで結界は粉々に砕けた。
「なっ⁉︎マジかよ……。」暗真先輩も声には出さなかったが光明先輩と同じらしい驚いている顔をしていた。
あいつを倒さなければしゅうの元へは行けない。だったら、
「はるちゃん、真冬さん。私たちも先輩たちと一緒に戦おう。そしてしゅうの所に行って怒ってやるんだから。」
「お、怒るんですか?ま、まぁしゅう先輩の所へ行くのには変わりありませんし。分かりました、頑張ります。」
「もちろん、ぶん殴ってやるわ。その前にあの悪魔、アクアリアスをぶった斬るけど。」2人がいると心強い。
「行くよ、はるちゃん、真冬さん!」
ーーー「悪魔にも性別あるのかしら?」と期待半分に目の前にいる悪魔に話しかけてみた。
「性別?あぁ、そうだね。人間で言う男か女かでしょ?僕は男だよ。見た目で分かるでしょ、人間の体分かりやすいし。ちなみに僕の名前はリブラ。」
「あら、質問してないことまで答えてくれるのね。もしかしてこのまま帰ってと言ったら帰ってくれる悪魔さん?」正直時間稼ぎにしかならないけど、これが今取れる最善の行動。しゅうくんは勝手に飛び出しちゃうから無事を祈るだけ。後できっちり怒らないと。
「それは無理。君たちを全員倒さないといけない命令だからね。ねぇお姉さん、時間稼ぎになってないよ。学園長が到着するのは4学園会議はまだ終わらないから。」やっぱりバレてたか。だったらもう戦うしかない。
「滉一、双葉!最初から全力で行くわよ!」
「もちろんです、会長!」
「もう準備万端です。」2人の準備は整っている。時間稼ぎなのは間違ってないが、別の時間稼ぎの意味もあった。こっからは戦って時間を稼ぐしかない。
ドドッドドンッ!遠くの方で凄い音がした。音のした方を見ると、火柱が空高く昇っていた。しゅうとくんか。あの魔力、おそらく昨日も同じ技を使っていた。昨日とは比べ物にならないくらい高い魔力を秘めている。
こちらも早く終わらせて合流しないと。
「滉一、いつも通りあんたが前線、双葉は主に攻撃魔法で滉一を援護しつう出来れば回復。私は滉一を強化するから。腕力強化Ⅳ(アームエンチャント)、耐久力強化Ⅳ(ベアエンチャント)、脚力強化Ⅳ(レッグエンチャント)!」とりあえずこのぐらいで様子見かな。
「持続回復。」双葉も回復魔法を滉一にかけた。これで今の滉一は相当な強さのはず。
滉一が一歩踏み出しただけで相手の懐まで一気に近寄った。
「わぉ、いきなりここまでこれるのかい。これはヤバイかも。でも作戦内容全部聞いちゃったけど大丈夫?」リブラが笑いながら言う。
「ご心配なく。この攻撃で沈んでもらいましょう。斬!」
滉一の攻撃がリブラに直撃し、その瞬間に周りの地面が割れた。
「よし、これなら……。」ふと気になって遠くの火柱を見た。
その瞬間、火柱が縦に切れるのを見てしまった。
ーーー「はぁ…はぁ…はぁ……。」
流石にここまで力を出せるとは思ってもいなかった。火柱が空に途切れることなく昇っている。
「よし、イグニ。次行くぞ。」
「お、おい。大丈夫なのかよ、今の一撃で相当な魔力使ったろ?少しぐらい休めよ。」休んでる場合じゃないんだ。俺はあいつらを全員倒さないといけないんだ。だから、
「休んでなんていられない。」
「おいおい、ちょっと待てよ。何勝手に殺してんだよ。」火柱の中から声がした。
「まさか……。」次の瞬間、火柱が真っ二つに割れ、その中からさっきのレオが何もなかったかのような顔で出て来てきた。
「しゅう、逃げろ!あいつはやばい、力の差があり過ぎてる。とにかく逃げろ!」イグニが相当焦っている。
「逃さねぇよ。ここにいる人間も精霊も皆殺しだ!」笑いながらレオが言う。
「逃げる?だめだ。俺はこいつを倒して、他の悪魔も全員倒して、復讐するんだ。」自分でも感情を抑えられていなかった。
「火纏Ⅲ(フーラップ)。」炎が剣を包む。
レオは余裕とばかりに手を腰にやり、挑発してくる。
「くそがーーーっ!」一直線で奴に向かっていく。レオは武器を持っていない。防ぐのは魔法でない限り不可能なはず。魔法を使うそぶりがあればまた別の対処は考えてある。
剣を振りかざした。この距離じゃ魔法を使う時間はない!
ギンッ!硬いものと剣がぶつかった音がした。俺は一体何を斬ってる?目の前にある光景が信じられなかった。
奴が剣を抑えているのは自身の手だった。
「手で防いだのか?」
「手刀って知ってるか?つまりお前の力は手刀で防げるような力なんだよ。」
手刀、そんな事ありえるのか?
「今度はこっちの番だぜ。炎ってのはこういうもんだぜ。炎魔。」奴が手を振りかざすと手には黒い炎が渦巻いていた。咄嗟に剣で防いだ。
が、その瞬間に俺は後悔した。
鉄の破片が飛び散っていく。
俺の剣が、砕けていた。イグニが剣から引きずり出されるように出てきた。かなりのダメージを負っていた。
「イグニ!大丈夫か?」狐の姿になって倒れているイグニの元へ駆け寄る。
「あ、あぁ。ギリギリな。けどこのままだとお前までやられちまう。だから、逃げろ……しゅう。」今にも気を死んでしまいそうな弱々しい声でイグニが言った。精霊が宿されている武器が壊れると、精霊はその武器から弾き出される。死にはしないがかなりの痛みが伴う。まさにその状況だ。
「おいおいおいおい、この程度の魔法でくたばるんじゃねぇよ。所詮精霊も精霊使いもこの程度か。それじゃあ早くお前ら殺して残りもん片付けるとするか。」レオがゆっくりと近づいてくる。
初めてここまで力の差を目の前で感じた。それも圧倒的な。勝機が全くない。こいつを倒したいのに、殺したいのに……。体が震えて、力が入らない。
「しゅうから離れて!水槍Ⅲ(オーランツェ)!」
その声が聞こえたと同時に前にいたレオは俺から距離を置いた。目の前を水の槍が通過していった。
「……夏音?」
そこにいたのは夏音だった。
ーーー紅葉 秋翔の剣が折れる少し前。
光明先輩と暗真先輩が悪魔を相手に互角に戦っている。
「はるちゃん、真冬さん、私たちは光明先輩と暗真先輩の援護をするわよ。」さっき遠くで炎の火柱が真っ二つに割れるのを見た。おそらくしゅうの最大魔法が敗れた。このままだとしゅうが危ない。
「夏音先輩、やっぱり考えたんですけど、しゅう先輩の元へはあのアクアリアスが通してはくれません。だから、私たちが一瞬時間を稼ぐのでその隙にしゅう先輩の所へ行って下さい。」前を向きながらはるちゃんが私に言ってきた。
真冬さんも何も言わずに私を見て、すぐに前を向いて敵の方を見た。
「はるちゃん、真冬さん……。でも………。」決断を迷ってしまう。
迷ってしまっている間に、光明先輩と暗真先輩が敵に弾き飛ばされ、私たちのところまで飛んできた。
「くそっ、あいつまだ全力じゃなかったか。おい、お前らの仲間の1人、飛び出して行ったろ。誰か助けに行かないとヤバいんじゃないか?」光明先輩がボロボロになりながら言ってきた。
「光明先輩、暗真先輩、今回復魔法を……」回復魔法を唱えようとした時、
「その必要はない。それよりも俺たちだけじゃあの男の所までの道が作れない。誰か1人行って残りの4人であいつを足止めする。それしか全員生きられる可能性がない。」暗真先輩はそう言った。
「夏音先輩、お願いします!悪魔に勝って下さいなんて言いません。しゅう先輩を守って下さい。」守る……そうだ。私に悪魔と戦う力なんてない。けど、“しゅうを守るための力を出すしかない”。
「光明先輩、暗真先輩、はるちゃん、それに真冬さん。私がしゅうの所へ行けるように隙を作って下さい。私があいつを守ります。」
「はい、夏音先輩。」
「今回は特別。ライム、来なさい。」
「おう、任された。」
「いくぞ光明。」
「あらあら、次はどんな攻撃を仕掛けてくるのかしら。」
はるちゃんが双剣を前に構える。
「行きます、初速。」はるちゃんは真っ直ぐに相手に向かうのでなく、左に大きく飛び出した。
「ライム、あなたの全力を私に貸しなさい。氷突Ⅲ(グラスト)。」
「真冬、OKだZEI!今回はかなりヤバいようだから死ぬんじゃねぇZE。」
真冬さんは一直線に敵に向かっていく。
「単純な子ね。真正面からくるなんて。」かなりの余裕があるようだ。
「加速。」はるちゃんはアクアリアスの外周を回っている。
光明先輩と暗真先輩はいつの間にか悪魔の懐に入っていた。
「あなたたち、いつの間に⁉︎」
「光明、あの子たち、中々すごい魔力を持ってるな。俺たちも負けていられないぞ。影斬。」
「だな。追い抜かれねぇようにしねぇとな!光斬。」
「くっ、まさか……この私がダメージを受けた⁉︎」みんなが頑張ってくれてる。私も私の出来ることを。
「私もいるわよ、氷突はあなたに近づくための技。これを至近距離で私の全力を受けて立っていられるかしら?凍結斬。」
真冬さんが刀を振ると、一瞬でアクアリアスが凍りついた。
「今のうちに通りなさい。」ありがとう真冬さん。
凍りついたアクアリアスの横を通ろうとした瞬間、氷にヒビが入った。
氷が砕け、中からアクアリアスが出て来て、真冬を蹴り上げた。ニヤリと笑った。こちらに手を伸ばす。まずい、今こいつを止められる人が近くにいない。
「そのまま走って下さい!超加速。」双剣をX字に構えたはるちゃんがアクアリアスの横っ腹に突っ込んで来た。
「ぐあぁっ!」急な攻撃に流石の悪魔も不意を突かれたようだ。
「夏音先輩!行って下さい!」はるちゃんがくれたこの時間、無駄にはできない。一直線にしゅうの所まで走る。
ーーーなんとか夏音先輩をしゅう先輩の所まで通すことが出来た。弾き飛ばしたアクアリアスが立ち上がった。
「このガキ!許さない。悪魔の鞭。」足に何かが巻きついた。黒い……鞭?
アクアリアスが上に鞭を振ると、体を空中に飛ばされてしまった。
そんな……空中では私の魔法は効果を発揮できない。そのまま横に振られ、鞭が足から離れた。そのまま勢いを止めることが出来ず、壁に激突した。
「うっっ……。」意識が朦朧とする。体を動かそうとすると痛みが全身を襲った。
「春香……大丈夫……?」左足を引きずりながら真冬先輩が私の元へ来た。
「ま、真冬先輩こそ大丈夫ですか。」
「お互い、人の心配をしてる場合なの?余裕見せられちゃってるわね。」アクアリアスが近づいてくる。逃げられない。立ち上がろうとしても体がついてこない。
真冬先輩が前に立った。少し前にもこんな状況があった。2週間特訓したはずなのに……、あの時と変わらない。
「俺たちを無視するなよ、てめぇ!光十字突!」アクアリアスはひらりと躱すと、光明先輩を蹴り飛ばした。
「これならどうだ、影内斬」アクアリアスの影から暗闇先輩が飛び出してきた。
「そんな魔法もあるのね、それでさっき急に現れたのね。でも私に同じ魔法は通用しないし、そもそもさっきの攻撃、全く痛くなかったわ。」魔法が効かない?
暗真先輩の剣を片手で掴み、腹に強烈な一撃を食らわせられ、暗真先輩はその場に倒れ込んだ。
「光明先輩!暗真先輩!」そんな……優勝候補の先輩方が手も足も出ないなんて。こんな奴らにどう勝てばいいの?
ーーー「滉一の重い一撃を食らってリブラが生きてたら、勝ち目ないわね。」
土煙が舞う中、双葉に近づきながらそう言った。
「相手に作戦を伝えたと見せかけて相手をうつのは中々考えられることじゃないですから、会長はやっぱりすごいです。」双葉は毎回私を褒めてくれるけど……照れるな〜。
「早くしゅうくん達に合流しないとね。」双葉にそう言ったつもりだった。だが答えたのは別の人物だった。
「それは無理だね。だって僕が行かせないから。」煙の中からリブラの声がした。
土煙の中から出て来たのは間違いなくリブラだった。そしてその手に滉一の頭を持って滉一の体を引きずりながら出て来た。
「滉一!」滉一がやられた⁉︎
「そんなに驚く事じゃないよ。」ぽいっとゴミのように遠くに滉一を捨てる。
「君たちは精霊使い、僕は悪魔。それがどんな違いか分かる?力の差もあるけど、魔力の質が君たちとは圧倒的に違うんだよ。」魔力の質?あいつは何を言っているの?
「よくも副会長を!突風鎌鼬。」双葉の全力。初めて見る魔法。双葉の上空には大量の風の塊?のようなものが浮いていた。
「私もまだこれは上手く扱えませんので、なるべく動かないで下さい。」
リブラがパチパチと拍手する。
「わぁーすごいすごい。それはどんな力なの?」楽しそうに尋ねている。
「これはですね、見ていれば分かります。」双葉が手を振ると、風の塊から鎌鼬が飛び出して、リブラに当たる。
「ぐっ⁉︎なるほどね。そういう魔法か。」少し動揺したようにら見えた。
「まだまだこれからですよ。」手を振ると同時に鎌鼬も飛び出す。
初めてリブラが避けた。
「双葉……あんた……。」いつも私のために動くあなたが、傷ついた滉一を見て流石に我慢の限界だったのかしら。初めて私以外の人に私の命令なく動いた。私は、そんなあなたを見たかった。
鎌鼬は確実に精度が上がってきている。このままなら連続でリブラに当てることもできる。
「いやー、困ったね。仕方ない。人間がここまで出来るとは思わなかったよ。」鎌鼬を躱しながら言う。
「見せてあげるよ……僕の本気。」急に空気の流れが変わった気がした。
「それっ!」リブラが手を突風鎌鼬に対して、拳を握る動作をとった。
その瞬間に、双葉の魔法、突風鎌鼬が消えた。
「そんな馬鹿な⁉︎」双葉が膝から崩れ落ちる。
「双葉、しっかりして!」相当な魔力を消費したらしい。
「人間は魔力の貯蓄量が少なすぎるな〜。だからつまらないんだよ。」今度は両手を握る動作をした。
すると、首の辺りを締められたかのように苦しくなった。体が宙に浮かんだ。双葉も同じ状況になっていた。
「これは……重力操作系魔法?」
「はははっ!そんなの僕らにとっては低級魔法だよ。僕が今使っているのは空間魔法。空間を自由に自分の物に出来るんだよ。」
そんな………。力の差なんて次元じゃなかった。滉一……双葉……しゅうとくん……みんな………。ごめん、何も出来なかった。意識が薄れていく。体に力が入らなくなり、持っていた杖が地面に落ちた。
「ばいばい、きれいなお姉さん。」
どうも改めまして作者の伊藤睡蓮です。
今回は突然の悪魔の襲撃ということで悪魔と精霊の差を書いてみました。
次回はもう少し早めに投稿したいと思いますよ( ´ ω ` *)
そして今更気づいたんですけどもしかしたら文章が訛ってるかもしれませんw
文章ミス、誤字などありましたらご報告してくださればスグに訂正します
twitterなどでも告知しているのでそちらもご覧ください
それではまた!




