精霊剣士の物語 〜Adasutoria〜其の一
どうも作者の伊藤睡蓮です。再編集しました。前よりは良くなっていると思いますが、誤字や脱字、文法の間違いがあるかもしれません。その時はコメントなどください。後書きではキャラクターの紹介をしたいと思います。
ここは精霊と人間が共に生きている。
大都市”イプシロン”を中心とした東西南北にあるそれぞれの学園、
北は”武精学園”
西は”磨精学園”
東は”忠精学園”
そして南の”刻精学園”
その中の武精学園に通う、1人の男の物語。
1,〜始まりの朝〜
「・・・ろ・・ウ。」
「・・きろ・・シ・・ウ。」
「起きろ。シュウ。」
ーーー誰かに呼ばれた気がした。
あくびをしながら起きてみると机に向かって寝ていたらしく、首が少し痛かった。
「ようやくお目覚めか。」と、後ろから声がした。
振り向くとそこには紅い炎を纏った小さな狐がいた。
「なんだ、イグニか。」
俺は紅葉 秋翔、快晴町に住み、武精学園に通う高校1…いや、2年生だ。そして俺を「シュウ」と呼んだ狐の名前はイグニ。一言で言うと「相棒」だ。
「なんでその姿になってんだ?」
イグニが溜め息をつきながら言った。
「昨日、徹夜で勉強しようとして、1時間も経たずに睡魔に負け、さらに始業式に遅刻しようとしているシュウを起こそうとしてたんだよ。」
「あー。なるほど・・・・今、何時だ?それから始業式は何時に始まる?」
「今ジャスト8時だね。あと20分もしたら始まる……。」
イグニが言い終わる前に行動にでて、支度をしていた。食パンを食べ、慌てて家を出た。
イグニを残して。
「・・・お、おいシュウ。俺を置いてくなーー!」
2,〜狂人〜
急いで家を出たものの、近道をすれば十分間に合う時間だった。まぁ多少他人の家の敷地をまたぐことになるが……。
「なんとか間に合いそうだな。」
そう思っていると前に見える公園に人があつまっているのが見えた。
「なんだ?」
近寄ろうとしたその瞬間、悲鳴が聞こえた。
急いで野次馬に駆け寄ると、公園の真ん中の噴水の所で警察に周りを囲まれている男がいた。
「来るな!それ以上近づくとこの女を殺すぞ!」と男が30代ぐらいの女の人に短剣のような物を突きつけていた。警察が数歩引き下がった。
事故ではなく、事件だった。
「ヤバイな。」心の中で思っていた事が不意に出てしまった。関わらない方がいいとも思ったが、それと同時に嫌な記憶まで思い出してしまった。
ーーー父さん、母さんが俺を庇って………。
嫌な記憶を振り払い男の前に出た。
「やめとけ。やるだけ無駄だ。」と俺は前に出て行った。
「そこの君!離れて!」
警官が俺を止めにくる瞬間、
「助けてくれ。」確かにそう聞こえた。
ーーその言葉を放ったのは目の前にいる男だった。
すると男は人質から手を放し、自分に短剣の先を向けた。
「これ以上人を殺したくない!」顔が涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「どういうことだ?」と俺が口にした瞬間、
男は急に顔を下に向き、静かになった。
ーーーさっきと違う。何かが変わった。俺はそう思った。そしてそれは不幸にも当たってしまった。
「コ・・ロ・・・ス。皆殺しだ!」
女の人を放し、謎の男は懐から短剣を俺に向けた。警官が立ち塞がり、拳銃を手にした。しかし、男は怯むことなく、突撃してきた。
「ひっ!」警官は銃口を男に向けて放とうとしていた。
「やめろ!」という俺の言葉は警官には聞こえていなかったらしい。俺は目を閉じた。
ーーー2発の銃声が鳴り響いた。ゆっくりと目を開けると、男が血を流して倒れているのが見えた。
警官は息を荒げている。警官は力が抜けてガクンと倒れこんだ。初めて人を撃った感じだった。
何かがおかしかった。そして俺はすぐに気が付いた。男の周りには風が渦巻いていた。
「あんた、早く逃げろ!」腰が抜けている警官に言ったが遅かった。目の前で腹に回転した短剣が刺さる瞬間を目撃した。
ーーーこの様な光景を見るのは2度目だ。
……恐い、身体が震えた。でも、やるしかない。
「こい!イグニ!」
・・・・・・あれ?
そして今頃気づいた。イグニを置いてきてしまったことを。
男が間合いを縮めてきた。そして短剣を正確に心臓を貫くように突進してきた。
間一髪で躱すと顔面にパンチをお見舞いしてやった。
相手はうずくまり、暫く悶えていた。
「どうだ。……っていうのはフラグだったりするんだよな…。」
まさにその瞬間、相手は体勢を整え、短剣を投げてきた。
「危ねぇ!」それが相手の陽動だと気付いた時には遅かった。左手にはさっき投げたはずの短剣を握っていた。
ーーーー死ぬ。そう覚悟した時、火の粉が飛んで相手の左手に当たった。
「ふー、危ない危ない。僕のパートナーを殺さないでおくれよ?」
イグニだった。
「すまんイグニ、助かった。」
「その”すまん”は今助けた時の?それとも僕を置いて行った時の?」
「・・・両方だ。」
「おっけー。僕は心が広いから許すよ。だから早く終わらせよ?」
「あぁ、もちろんだ!」
「こい!イグニ!」
そう呼ぶとイグニは形を変え1本の剣になった。
相手が動揺していたので攻めに入った。
剣と短剣が交わった。男は左手を突き出してきた。その手には風を纏っていた。
ーーー このままでは俺はやられちまう。
咄嗟に俺は左足で男の足を蹴りバランスを崩した。
「なぜ技を使わない?」イグニが訊ねた。
「人間相手に使えねぇよ。」
「こいつはもう人間じゃない。化け物だ。」
確かに男はもう人間の姿をしている化け物のようだ。でも、
「さっきあいつは俺に”助けてくれ”って言ったんだ!だから殺さずに捕らえる。」
「お前そんな事してるといつか死ぬぞ。」
「絶対に死なねぇよ。お前のためにも、両親のためにも。」
と言い終えると、男が何故か苦しみだした。
「ガァァァァァ!グガァァァ!」
「……残念だけど全力を出さないとこっちが先にくたばりそうだぜ。」急にイグニが声色を変えて言った。
「くそっ、掛けてみるしかねぇ。」
「火纏<フーラップ>」
剣に火を纏わせ、風を纏う短剣と相殺し、
「今がチャンスだ!シュウ!」その掛け声とともに俺は走り拳を握りしめた。するとどこからか風が舞い上がり、男を包んだ。短剣を持った男の風とは別格の強さだった。
あまりの風の強さに吹き飛ばされた。
目を覚ますと、
男はその場に血を流して倒れていた。脈を確認し、心臓の辺りに耳を近づけ、動いているか確認した。よかった。生きてる。
「シュウ。この男もしかすると……」イグニは何か言おうとしたが
「そこの君!大丈夫かい?」警官だった。
「あ、はい。それよりさっき刺された警官は無事なんですか?」
「あぁ、今ちょうど救急車で運ばれて行ったよ。」
「そうですか。」ホッとしたと同時に質問された。
「君?名前は?」
「あ、紅葉秋翔です。」
いくつか質問されたが、面倒だったので4,5分で終わらせてもらった。
ーーーーーー
「ホントありがとな、イグニ。」
「だからー、俺様は心が広いから許すって。」
イグニが”様”と付けて言う時は何かを隠している証拠だ。一緒に3年間も過ごしているんだ、それぐらいわかる。
そういうときは、
「イグニ、心が広いから俺もなんでも許す。
何か隠してる事があるなら言え、今日はすき焼きにしてやる。」
「本当に!実は、始業式は明日だったんだ。
シュウが出て行った後に気づいたから、それはそれは慌てたね。でもよかった〜。」
「・・・・嘘だろ。」
周りを見ると武精学園の生徒の親がいるのか
「なんであの子制服着てるのかしら?明日が始業式って聞いたけど?」などとヒソヒソ話しているのが聞こえてきた。
「・・・イグニ、ふざけんなー!」
ーー”とある地下”
「実験は成功したのか?」
「いえ、80%まで精霊とリンクしたのを確認しましたが、器が耐え切れず壊れてしまいました。」
「ふむ。やはり無理矢理精霊を捩込むのではダメか。もっと工夫がいるな。」
「はい、ですがまだ実験体は人間と精霊ともにまだ在庫ははありますのでご安心を。」
「紅葉 秋翔。本当に面白い奴だ。」
3,〜精武学園〜
ーーー俺は追われていた。迫りくる恐怖を振り払いながら……。
”時間”という敵に必死に闘っていた。
「なんで起こしてくれなかったんだ!」
俺は狐のストラップになっているイグニに聞いた。イグニは基本ストラップか本物の狐のような姿になって生活している。
「何度も起こそうとしたさ。でも起きなかったのはシュウだろ。」とイグニは少し怒り気味に言った。
ーーー 朝起きるとイグニは何故か身体中ボロボロだった。俺はその理由をあえて聞かないようにした。
それよりも今は学園に向かうのが先だ。昨日の事件で公園が立ち入り禁止だったので少し迂回したが、ギリギリ間に合いそうだ。
ーーー始業式開始3分前で武精学園に着いた。急いで中に入り、廊下を駆け抜け、体育館を目指した。
「これなら間に合いそうだな。」そう言って走っていると、横の廊下から出てきた人とぶつかってしまった。
「あいたたたた・・・。う〜〜。」という声が聞こえたので前を見ると、桜髪でショートヘアの女の子が尻もちをついて倒れていた。
新品の制服からして1年生だった。
「すまん。大丈夫か?」と聞くと「は、はい。なんとか。」と言ってくれた。手を差し伸べると、「ありがとうございます。」と礼を言われた。
「ほんとにどこも怪我してねぇか?」
「は、はい!大丈夫です。」と自分の身体を確認しながら言った。
「そうでした!始業式!」
と彼女が言い、ようやく俺もさっきまで急いでいた事を思い出した。完全に忘れていた。
2人揃って体育館を目指してダッシュした。
ーーー体育館に着くと生徒が列を作って左から1年生、2年生、3年生、と並んでいた。桜髪の子は「私のクラスは〜、3組だからあそこだ!」と言って走って行ったと思ったら戻ってきて、お辞儀をしてまた走って行った。
「さて、俺は………。何組だ?」慌てていたのでクラス替えの掲示板を見るのを忘れていた。
困っていると、どこからか「しゅう。しゅうってば。」と聞き慣れた声が聞こえてきた。
声のした方を見ると、黒髪でロングヘアの懐かしい顔がこっちを見て手招きしていた。
葉月 夏音<はづき かのん>だ。小さい頃からの幼馴染でよく遊んでいた。成績優秀スポーツ万能のすげー奴だ。
「久しぶりだな、かのん。」
「久しぶりだねー、じゃないよ遅刻じゃない!」
「ギリギリセーフだから遅刻じゃねぇよ。」
というたわいもない会話を続けていると、アナウンスが入った。
「これより、始業式を開始いたします。」
始業式が始まった。
ーーーー「学園長のお言葉。」
急に生徒がざわつき始めた。まぁそれは仕方がない事だと思う。
前に出てきたのが美人で学園長には相応しくなさそうな人なのだから。しかしあの姿で世界の精霊使いトップ3とはほんとに驚きだ。
「あの人が学園長?めっちゃ美人さんじゃね?」、「綺麗だなー。」
などの声が飛び交っていた。
「皆さん、おはようございます。学園長の時雨 吹雪<しぐれ ふぶき>です。この学園では知っての通り、精霊を武器に宿している生徒も全体の3分の1を占めています。1年生で精霊を武器に宿している人は少ないと思いますが、必ず見つけられるはずです。そして、”来る時”に備えておきましょう。また、ーーーー。それでは、私からの話は終わりたいと思います。」
ーーー「ふー。終わった終わった。」
「ちゃんと聞いてた?」
「最初は聞いてたけど後はよく分からん。」
「まったく。大事な事だけ言うけど、今年から新しい授業が始まるらしいわ。まぁ、噂で少しは耳にしてたけど……。」
「相変わらず色々とすげぇな。学園長の話なんてほとんど誰も聞いてねぇだろ?」
「人の話を聞くのは当たり前の事よ。それより早く教室行きましょ?」と言われ、一緒に2年2組の教室を目指した。
教室に着くと何人かの生徒がいて、話をしていた。
夏音がホワイトボードに貼られた座席表を見て、
「えーっと。私たちの席は……あった!しゅうと隣だね。
「マジか!まぁ知らない奴よりかはましか。」
「なんかあんまり嬉しくなさそう…。」と少し寂しそうに言って俯いた。泣かせたかと思い 謝ろうとしたら、
「泣いてませーん。びっくりした?」と笑いながら言ってきた。俺は相手にするだけ無駄と思い、席に着いた。俺の席は窓際の後ろから1つ前で夏音はその隣だ。
「担任の先生誰なんだろう?」と夏音が言った。
するとタイミングよく教室の扉が開き1人の女性が入ってきた。この教室にいる全員が驚いていたのがよく分かった。
「2年2組の担任に就くことになりました。学園長の時雨です。よろしくお願いします。」
大変な一年になりそうだ。
改めまして作者の伊藤睡蓮です。今回は主人公の秋翔くん視点で描いてみました。今回短めですが、〜其のニ〜はもう少し長いと思います。そろそろ書くこともなくなってきたのでキャラクターの紹介を2人ずつしたいと思います。
まずは主人公の紅葉 秋翔<くれは しゅうと>くん。
17歳の武精学園に通う2年2組の学生。夏音と幼馴染で小さい頃よく遊んでいたが武精学園に入ってからクラスが違いあまり会う機会がなかった。
最後に葉月 夏音<はづき かのん>ちゃん。
17歳の武精学園に通う2年2組の学生。秋翔と幼馴染。秋翔の事を”しゅう”と呼んでいる。
他に何か質問ありましたらコメント下さい。また、Twitterも初めたのでそちらでも質問受け付けます。@Bleach15Ichigo
です。フォロバします。