始まりの記憶
“ゴウッ,,
激しく風の鳴く音がして、僕は気が付いた。
最初からそこに居たのか。意識を無くしていたのか。わからなかったけれど、そこに立っていた。
空が異様に近い。
まるで、せまっくるしい絵本の中に閉じ込められた様だ。
わざとらしく青い空と、べったりと貼り付けられた雲は、これは夢なんだ。と僕に考えさせた。
しかし、ただジリジリと眩しい太陽だけが、僕に唯一の本物を植え付けた。
カラスやらスズメやらが煩く喚いていて、この鳥たちでさえも、まるで狂った様に飛び交っている。そして、ぶつかりあって死んでいくのだ。
潰されそうな精神の中で、やっとのこと絞り出した言葉は自分でもいみが分からないものだった。
「なに..........?」
誰かに問い掛けていた。
こんな所にいるから、頭が可笑しくなってしまったのかも知れないし、誰かに頼りたくなってしまったのかも知れない。
しかし、返事は聞こえかなった。
「わからない。聞こえないよ....!」
返事は返らないのだと知っている。
知っているのに、言葉は溢れる。
僕の口は止まらず続けた。
「どうすればいいの?全部おかしいよ。こんなの変だ....。これからどうなるの?もっと変わってしまうの.....?」
溢れて来るのは質問ばかりなのに、答えて欲しい事はたくさんあるのに、相変わらず沈黙が返ってくるだけだった。
「.......ねぇ、お願い。誰か聞いてるんでしょ?僕に答えてよ。」
.......もしかすると、僕の質問に気付いている人も居たのかも知れない。
「もう、戻れないの?こんなの......嫌だ。嫌だよ.......っ、もう一度...」
そう。もう一度。
「会いたいよ........っ。」
会いたい。やり直したい。
.......分からなかった筈の全てが分かった気がした。言葉と心が一致したその時、涙が溢れた。
「..............よ?」
頬を伝った涙が落ちたのは、土の上ではなく、真っ赤な塊の上だった。
真っ赤なそれは、何かを伝えようとしている様な気がした。
僕は驚くでもなく、しっかりと聞き取ろうと聞き返した。
「.....っなに?もう一回、もう一回言って.....!」
無我夢中になっていた。
しっかり受け止めたくて、耳を澄ます。
「信じてるよ.....?まってる、から.....ね?」
懐かしい、大切な声だった。
「っ、うん!わかった.....!」
本当はよく分からなかったけれど、この約束が何より大事なのはわかっていた。そして、この声も。
だから、必死で叫んでいた。
もう、届いていなかった気もするけど
「っ.......ぜったい、待っててよ?僕が....僕が助けるから........!!」
心からそう叫んでいた。
そう言うと、真っ赤な塊(あの人)はほんの少し微笑んだ気がした。