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 自分が出ていった後のギルドで何を言われているかなど知らないカツミヤ。彼はレンガで出来た大通りを歩き、そのまま街の外を目指していた。

 リールの話では残り1つか2つ依頼をこなせばランクが上がるという。それなら時間も早いのだしこのままラビッツの討伐を達成してしまおうと思ったのだ。

 ラビッツとは柴犬程の大きさのウサギで強さはFランク。一般人が武器を持ち数人で倒せるレベルの魔物だが、油断すると発達した後ろ足で蹴られて簡単に骨折する。

 この世界の住人より圧倒的に体格差が劣っているカツミヤにとって、Fランクと言えどラビッツは中々の強敵であった。


「あ、その前に買い物していこう」


 カツミヤはそう言うと思い出したかのように1つの店へと足を運ぶ。

 優しそうな、しかし体格の良い老人が営む店内には様々な日用品が雑多に陳列されている。

 中はそれほど広くなく、元の世界のコンビニより二回り狭いくらいだろう。


「この瓶5つください」


 理科の実験で使うようなアルコールランプ形の瓶を3つ抱え、カツミヤはそれをカウンターへと運ぶ。質が良くないのか透明度は低く濁っていた。

 陳列場所からカウンターまで一度で運べると良いのだが、この世界基準の瓶は一つ一つが大きい。その為無理に運んで落としても嫌なので、確実に運べる数を抱えて移動する。


「相変わらずお前さんは小さいねぇ」

「うーん、こればっかりはどうしようもないですし。僕ももう少し大きくなりたかったんですけどね」


 残りの2つは持ちきれなかったカツミヤのため、店主の老人が毎回のことだと運んでくれた。

 自分の孫に話しかけるような視線や口調に苦笑しつつ、カツミヤは肩から提げた鞄に手を入れ金を出す。

 1瓶50カロ。瓶5つで250カロ。

 通貨の単位は一番小さい小銅貨一枚が10カロ。元の世界で10円といったところだ。それが10枚で大銅貨に繰り上がる。

 銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順で価値が高くなり、それぞれ小銅貨、大銅貨のように大小二種類。

 カツミヤは小銅貨5枚と大銅貨2枚をカウンターに乗せ、それほど質の良くない、しかし2リットルは入ろうかというほどの大きさの瓶を鞄に詰め込んだ。


「また来なさいよ」

「はい、また来ますね」


 カウンターに運ぶまでは一苦労だが鞄に入れてしまえば楽々運べる。その秘密はゲームの名残であろうアイテムボックスのお陰で、入れたものの重さを無くし時間経過を止めるという優れもの。収納数、内容量は無限である。

 この世界にも収納鞄というアイテムボックスのような効果をもつ道具があるらしいが、ダンジョンからしか出てこないため高価で希少、それに内容量にも限りがあるらしい。

 カツミヤはその話を聞き、自分が無限のアイテムボックスではなく収納鞄持ちだと誤魔化すことに決めた。


「えっと、探索(サーチ)


 街から出る際心配性の門番の男性から、何度目になるかも解らない程の注意事項を受け、カツミヤの足で一時間ほど街道を歩いた場所で魔法を唱える。

 唱えた瞬間脳内に丸くマップが描かれ、そのマップの中に何かあればその存在を教えてくれる優れものだ。


「んー……居ないなぁ」


 探しているラビッツは魔物として赤い点で表示される。その他薬草や素材、使えるものは青い点で表示され、人間は黄色で表示される。

 捜索を展開したままやや街道から逸れるように森の方へ。するとポツポツと青い点がマップに写し出され始めた。


「あ、メミ草だ。モギ草もある」


 目的の魔物ではないが、使えるものを見つける度カツミヤはそれを採取していく。普通なら荷物になるため諦めるのだが、そこはアイテムボックス様々で、ラビッツを見つけた頃には採取クエストを達成出来るほど集めていた。


 カツミヤは無音(サイレント)を発動し、やっと見つけたラビッツに背後から近寄る。

 食事中なのだろう、地面の草を食んでいる姿はカツミヤに気付いておらず、どこかのんきそうだ。


「えいっ」


 無音でラビッツの背後に隠れ、そこから魔法で攻撃。一瞬カツミヤの手元が光ったと思えば、そこからラビッツへと何かか飛んでいった。


 ギュアッ!!


 飛んでいった何かはバチッ!!と激しい音と共にラビッツへと当たり、四方にその紫電を散らせる。

 数十秒待ってみたがその後ラビッツはピクリとも動くことはなく、完全に死んでいることを確信した。


「ふぅ、まず一匹」


 先程カツミヤが放ったのは電気(ボルト)(アロー)。調節に調節を重ねたその威力はラビッツの毛皮を焦がすことなく命を奪う。

 元の世界では牛や豚などの生き物を食べていたのだ。今更可哀想だからと言って躊躇ったところで偽善でしかないが、無闇矢鱈に殺すことはしない。

 人の害となるものならば倒さなければならないし、殺さなければこちらが殺される。生きていくためには必要なことだと割りきらなければ。

 依頼の数は10匹。その数はギルド登録の際受け取ったギルドカードがカウントしてくれる。

 勿論素材として持ち込めば肉や皮などが金になるため、カツミヤは傷の殆どないラビッツをアイテムボックスである鞄にしまうと、新たなラビッツを求めて再び歩き出した。





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