魔法の勉強と霧雨魔理沙
「今日は、ここに泊まっていくといいぜ」
霧雨魔理沙がそう口にする。
紅莉栖は、思わず遠慮の意を口にしそうになるが、宿もない、お金もない、無一文な自分を思い出す。
「ありがとう。今日はお世話になります」
霧雨魔理沙という少女は、活発で、思ったことをそこそこ素直に口に出す少女だということがわかった。
見た目に反して、この何もない森の中で、自給自足をしているらしかった。
夕食にはキノコのスープや、キノコの炒め物、少量のお肉やお米がでてきた。
「ねえ、魔理沙、もしよかったら私に魔法を教えてもらえないかしら」
夕食が済んだ頃、唐突に紅莉栖はそう口に出す。
魔理沙は驚いたように目を見開いた。
そして、ニヤリとする。
「魔法は邪法として嫌われ、目指す奴はろくな奴はいないぜ?」
茶化すように言う。
普段の紅莉栖なら、あまり人に頼るようなことはしなかっただろう。
だけど、一度、自身の消滅について向き合った紅莉栖の心境は変わっていた。
生きたい、消えたくない、そう思って本当は眠れなかった。
父親との確執や、友達が少ない自分の境遇を考えたり、なぜ死んでしまったのかを考えたり。
子供のころから、自分で何でもできると思っていて、周りに心理的な壁をつくって、自分から逃げ出して、
そんな自分が嫌われるのは、当然よね・・・。
この世界では、悔いのないように生きたい。
それが、あの世界での記憶の残滓である、この私の願い。
「この世界で、生き残る術を得たいの。もし、嫌ならあきらめるけど・・・・・・ダメかな?」
ふむ、と魔理沙は考えている。
魔法使いとはどんな存在なのかを、軽く教えてもらっていた。
自分の道を究める為に、魔の法に手を出す者。
魔理沙が何のために魔法使いをやりたいと思っているかは分からない。
基本的に、魔法使いは自己中心的な存在だと、前もって言われている。
「さっきは説明しなかったけど、時々外来人がこの世界に迷いこむ事があるんだ。外来人なら、霊夢に言えば、元の世界へ送り返してもらえるかもしれないぜ?」
迷い込む外来人が時々いて、明日、私が落ち着いた頃に霊夢という人物の所へ連れて行くつもりだったのだと、魔理沙は言った。
「私、ね。元の世界で、消えてしまったの・・・・・・」
「・・・?それは、死んだってことか?」
「ある意味では、そうね」
紅莉栖は語った。
自分は少し前に死んでしまったこと。
そして岡部倫太郎の電話レンジというタイムマシンで私の死が無かったことになったということ。
そして、そのせいで岡部の大切な人が死んでしまって、その人を助ける為には、タイムマシンで、私が生きていることを、無かったことにしなければならなかったこと。
私がそれを、望んでいたこと。
「話は分かったぜ・・・・・・」
魔理沙が私を眺めている。
何を考えているか分からない表情をしている。
しばらく経った頃だろうか。
魔理沙は唐突に口を開く。
「私は独学で魔法を学んでいる。まだまだ魔法使いとしては未熟で、人に教えるなんてできやしない。自分の研究の時間を削るつもりはない」
「そう・・・・・・なr「だけど」
諦めの言葉を口にしようとする間際、魔理沙は言葉を被せてきた。
「魔導書を見せる、そして独学で学ぶ手伝いくらいならできるぜ」
不敵な笑みを浮かべている。
思わず、紅莉栖は息を呑む。
魔理沙の姿に、ドキリとしてしまった。
魔理沙は美少女だ。
そんな笑顔を見せられたら、誰だってときめいてしまうだろう。