牧瀬紅莉栖の幻想入り:前篇
3人の男女が机に向かっている。
その内の白衣の男性は、酷い悲しみの形相をしながら、宣言をあげる。
「・・・全て・・・・・仲間たちに感謝を・・・・・・・・・・犠牲・・・・・感謝を、せ・・・・・・・再構築される!」
所々聞こえづらいが、その白衣の男性が、厨二病的な宣言をあげることは、珍しいことではない。
カチ、
それはキーボードを叩く音なのか、それとも世界そのものの歯車がかみ合った音なのかは、分からない。
そう、牧瀬紅莉栖にとって、それは同じ意味なのだ。
バタン!
牧瀬紅莉栖は扉を開ける。
ハァ、ハァ、息切れが激しい。
心臓の鼓動も、何もかもが安定しない。
だけど、私は言わなけばならない。
「紅莉栖!」
男性の叫び声が聞こえる。
「岡部、私・・・・ぁ・・・・」
その瞬間、牧瀬紅莉栖はこの世から消える。
視界がゆがむ。
それは涙のせいでは決してない。
世界が再構築される。
自分が消える。
----あなたのことが、好きです
その言葉は、幾千、幾万回繰り返しても決して届かぬ幻の言葉。
その人の思いが、届く瞬間は絶対にやって来ないという絶対の証明。
人の思いが、世界線を越えられなかったという事実。
それでも、少女に悲壮な感じは微塵もない。
口づけを交わしたあの日、自分が消えてしまうことには、もう折り合いは済ませてしまったから。