習作2
人生とは暇なものだ。あの時、あの光景に出合うまで私はずっとそう思っていた。
特に何事もなく入った学校を卒業し、まぁまぁ苦労した就活も終わり、特に何事もなく一般的なペースで出世していき、生活に張り合いがなくなってきた頃、日常に刺激を求めていたころ、私はそれに出会った。
やっと終わった残業からの帰り道、ふと耳についた異音に気が付いて、吸い込まれるようにビル同士の間の細い路地裏へと迷い込んでいった。段々と音は大きく、耳障りになってくる、しかし路地裏へと自分を運ぶこの足は進むべき道がすでに決まっているかのように進路を変えることはない。
―音、音、音―
打撲音、衝突音、破砕音、悲鳴。そして思いつく限りの暴力的な音が路地裏から聞こえてくる。これはなんだ、決して日常の生活で聞こえてくる類の音ではない。そして私はその曲がり角を曲がってしまった、見てしまった。これからの私の人生を変えてしまう光景を。
そこで見たのは圧倒的な暴力。がたいが良く、それぞれが角材やバット、ナイフを持っている一目見ただけでそれとわかるような不良達が5,6名、そしてそれに相対するのは一人の線の細い男。しかしその暴力の奔流を生み出し、場を支配していたのは線の細い男の方だった。
そして、薄暗い路地裏に慣れてきた私の目が捉えたのは、後ろの方の暗闇の中でひしゃげた人形のようになり、その目に二度と風景を写すことのなくなったかつて人だった"モノ"がいくつか転がっている光景だった。
それを認識した瞬間、自分の中の血液が一滴残らず沸騰し、脳内がアドレナリンで満たされたかのような甘美な衝撃がこの身を襲った。これはただのケンカではない、不良達はそう思い始めたのかも知れないが、男が行使しているのは純粋な暴力、そこには加減や慈悲はこれっぽっちも見当たらない。そこには非日常という甘い響きが存在していた。
既に不良達は男に恐怖し、男を脅して金をむしり取るためではなく、男の恐怖と暴力の支配下から逃れるか、ということにその小さな頭の中身を使っている。
不良のうち一人が男に向かって駆け出す。その手に握っているのは武骨な刃渡り20cm程のナイフ、それを男に向かって突くように右腕を伸ばす。しかし男は動じない、流れような動作で自分の左手を不良のナイフを掴む右手に添え、ナイフを男の腕に対して垂直に立たせる、そしてそのまま右手で手刀をつくり、不良の肘窩を打った。突然の横からの力になすすべなく不良の右腕は肘を曲げ、男の左添えられた手によってナイフは不良の肩へと吸い込まれていく。肩にナイフが刺さった痛みで、叫びながら下を向いた不良の顔の前に迫ってくるのは男の膝蹴り。
鈍い音を立てながら不良が後ろへ飛んでいく。次に男に襲いかかった不良はバットと角材を持った二人、二人は左右から薙ぐようにしてそれぞれの持つ物で男に向かって殴りかかる。
――書 き 終 わ っ て な い よ――




