プロローグ
「金、もってんだろ。だせよ。」
今月はこれで何回目だろう。一生懸命貯めたお金が奪われる。中学校を卒業して、ずっとバイトをしているが、この人のせいで貯まったためしがない。
「んだよ、その目は。はやくよこせ!」
頬を殴られ、煙草を腕に押し付けられる。痛い。今まで何度もやり返そうかと思った。だけど、実の父親だ。いつかは、俺を愛してくれるかも知れないという気持ちを捨てきれずにやり返すことができなかった。
けど、もう限界だった。
だめだと思うのに体が動いてしまう。
俺は初めて父親を殴った。
父親は無言で俺のそばを離れ、しばらくすると戻ってきた。手に持っていたのは、包丁だった。俺に振り下ろされるのを他人ごとのようにみていた。
「っつ!うぁ…」
背中に激痛が走る。
それから何度も激痛が俺を襲った。
父親の笑い声が聞こえる。
狂ってる。そう思った。
俺は父親に殺されるんだろう。
俺は死ぬ?そう思ったとき、とてつもない恐怖におそわれる。
高校にいってみたかった。
勉強してみたかった。
友達がほしかった。
自由がほしかった。
もっと、あいされたかった。
もっと、もっとしたいことがあった。
嫌だ、いやだいやだイヤだ
……生きたい。
そう思ったときにおれの体が光に包まれる。そこで俺の意識は途絶えたのだった。