出会い2
仕事も恋愛も両方大事だ。
それは私自身が1番分かっていること。
確かに両方大事だけど、自分の努力が報われるのは仕事の方だ。
努力をすればするほど自分に返ってくるし、
利益だって入ってくる。
恋愛は違う。一方通行だ。
「うーん・・・どっちも大事だけど、やっぱり仕事かな」
マスターが出してきたお酒を手に取り、
再び独り言のようにぶつぶつと言葉を並べていく。
「それにしても、周りはカップルばっかりだなあ・・・」
周りを見渡せばカップルばかりだな。
確かにこのバーの雰囲気は最高だし、小さいから人もあまり来ない。
「嫌がらせかよ・・・」
そんな事ないって分かっているけど。
「カップルに対して嫌がらせって、あんた、大分失礼だよね」
「・・・は?」
右隣から声がしたから振り向いた。
知らない男が私の右隣に座っている。
「あんたの心の声、全部漏れてるんだけど」
「あの、どちら様でしょうか?」
「そんな事より、俺、金ないから貸してくんない?」
「は!?」
こいつ、何なの!?
っていうか、金ないのに酒なんか飲んでんじゃないよ!
「いや、あの・・・だから、どちら様ですか?」
「え、俺?水野翔太」
「水野さん、ですか」
「だからそう言ってるじゃん。はい、金、貸して」
はいじゃない、はいじゃないから。
そこですんなり金を貸す人間なんて日本中探してもいないでしょ。
海外だったらいるかもしれない、アメリカら辺とか。
「無理です」
「は?」
「いや、は?じゃなくて。見ず知らずの人にお金なんか貸せません」
「・・・お願い、貸して」
そんな子猫みたいな目で見つめてこないでよ!
っていうかよく見ると顔立ち綺麗だな、こいつ。
「いや、そんな顔されても無理なものは無理です」
「ちっ、俺のこの顔の良さが分かんないのかよ」
嘘でしょ!?
こいつ自分でイケメンって認めたぞ!?
「俺、今625円しか持ってないんだよ・・・」
「じゃあ1杯ぐらいなら払えると思いますけど」
「俺、5杯飲んだ」
「合計いくらですか?」
「2625円」
私が2000円も貸さなきゃいけないの?
こんな見ず知らずの男に?
「それは私に2000円貸して欲しいってことですか?」
「違う、全額貸してほしい」
「何で!?」
あっ、思わず本音が出ちゃった。
「625円、今の俺の財産」
「は?あなた、お仕事は?」
「してない」
嘘でしょ・・・ニートってやつですか。
えー、こんなタイプの人と関わりたくない。
「あ、今、『うわーこいつニートかよ。あたしぃ、こんな人と関わりたくないぃ~』っていう顔してる」
こういう無駄なところは勘が鋭いんかい。
とにかく、この人には早く帰ってもらわないとなあ。