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朝起きて見知らぬ女がいた場合

私は乾いた地面に水が染み渡っていく様子を眺めているのが非常に好きだ。

鉢植えの土すべてに水分が行きわたるように水を多めに注いだとき、

底から水がじんわりとこぼれてくるところなど一日眺めていても飽きないほどだ。


さて、なぜ私がわざわざ一見無意味と思える描写をしたのか。

それは、現在進行形で主人公である彼が渇いた口腔から

酒と呼ばれる炎の一種に焼き尽くされた胃に水を注ぎこんでいるからである。

喉からはわざとらしげにゴクゴクゴクという擬音が響いているからである。


彼は水道の蛇口を締め、苦しそうに腹を押さえながら後ろへ振り返った。

そこにはありきたりな生活風景が整っていて、

いちいち説明すると原稿用紙換算で1枚ほど無意味に消費する程度の家具が置かれていた。

なので読者諸君は、昭和の雰囲気漂う部屋の真ん中にちゃぶ台が置かれている光景を思い浮かべてほしい。

彼の部屋は全くその通りであるのだ。ひとつ違うところを言えば

けばけばしい化粧をし、どこかの風俗店から抜け出してきたばかりのような恰好をした

推定年齢25歳程度の女が西洋のお菓子を食べながら煙草をふかしている所くらいだった。


「……で、誰なんだあんたは」

彼は女と関わるのが非常に面倒くさそうに、一語一句に反感の思いを込めて言った。


「あなたが知らないんだから私に聞かれても困るわよ」

女は女で彼の質問等など無意味だと言わんばかりの答えを彼の方をちらと一瞥しながら返した。

言い終わると、何事も無かったかのようにまた煙草をふかし始めた。


「吸うなら吸うで窓を開けてくれよ、煙草の煙は嫌いなんだ」

部屋に女が吸っている口紅跡付きの煙草の煙が充満していることに彼は気づき

女の横を嫌そうに通り抜け窓に手をかけながら、眉間をしかめ煙たそうに言った。

女はお菓子を飲み込むために俯いたのか、それとも彼の言葉に頷いたのか

どっちつかずの返答を彼に向かって返し、無言で彼の方を見た。


「昨日俺はあんたと何かしたと、それであんたがここに居るわけか?」

自分の言葉が無意味だとわかっていても、彼は聞かずにはいられなかった。

朝起きると、見知らぬ女が自分の部屋で煙草をふかしているなどという不可解な事が起きれば

誰だってそうするはずだと言わんばかりの態度を彼は女に示した。


「あなたが覚えていないんだから私が覚えているとでも思うの?」

今度はまるで小さな子供あやすように、一語一句丁寧に女は彼に向かって言った。

それはまるで彼に対する挑戦のようでもあった。


「いい加減にしてくれ!黙って聞いてたらなんだその口は!俺が何か悪いことでもしたのか、えぇ?」

彼もまた、大声を出せば女は吃驚して口答え出来ないだろうというなんとも昭和風の考えを持っている男だった。

突然発せられた大声は、女に対して何の効果も示さないどころか

彼の惨めさをより深くえぐるようなまなざしでため息をつきながら彼を見つめたのだった。


「あなたが……好きだって言ったんじゃない!本当にあなたって人は……ひとでなし、ろくでなし!」

ところが、女は突然立ち上がったかと思うとヒステリックに叫びつけたのだった。

女もまた、大声でヒステリック気味に叫べば男など口答えできずに

ただおろおろするばかりであろうというなんともどこかの昼ドラマで蓄えた知識のような考えを持つ女であった。




男と女のエゴイズムが喧嘩を始めると、いつまで経っても治まることはありません。

そこでどちらかが優しくこう言ってあげればいいのです。

「おまえ(あなた)、昔はこうじゃなかったのにな」

過去を褒めるということは、絶対的に美化された本人の過去を

思い出させ褒めるということになりますから

まずこれで治まらない夫婦喧嘩というものはないでしょう。


外出時、男は女を引き立たせる。

家でいるときは、女が男の独占欲を満たす。

男と女は持ちつ持たれつの関係なのです。

エッセイのような小説を書いてみました。

駄文ですが、評価して下さるとこれからの励みになります。

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