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三題噺もどき4

ケーキとチキン

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくきゅうじゅうに。

 




 ガタガタと窓が揺れるような音がする。

 今日も風はかなり強いらしく、外はそれなりの荒れ模様だ。

 おかげで暖房がなければ、室内はとてもじゃないが寒くて仕方がない。

「……」

 仕事を一通り終え、リビングで休憩をしていた。

 床に敷かれた、水彩画のような美しいマットの上に裸足の足を置き、ソファに座っている。目の間に置かれているローテーブルの上には、湯気の立ったコーヒーがある。

「……」

 その少し離れた所には、桜の様な形をした小さなマシュマロの浮いたココアが置かれている。時季外れもいいところだが、どこで見つけてきたんだか。

 これを飲んでいた張本人は、何かを探しにキッチンへと戻っていった。

 さらにマシュマロを追加するつもりなんだろうか……さすがにそんなことをはしないよな。甘党ではあるだろうが、程度は知っているはずだろう。

「……」

 さらに少し離れた所には、小さめのテレビが置かれている。

 これが小さいかどうかは分からないが……まぁ、見る分には困らない程度の大きさだ。さすがにパソコンよりは大きい。どれくらいのサイズが平均なのか分からないからな。

「……」

 そのテレビには、赤い背景の中で、キラキラと彩られたショートケーキが映っていた。

 真っ白なクリームでおおわれたホールケーキの上には、形の整った苺が規則正しく並んでいる。半分に切られているが。

 その中心には、小さなサンタクロースの砂糖菓子が乗せられている。

 背中に大きな白い袋を背負い、陽気に片手をあげてニコニコとそこに居座っている。

「……」

 煌びやかな演出と共に、そのショートケーキを初めとした数種類のケーキが次々と写し出されていく。

 艶やかな見ために、それを損なわない程度に装飾されている、大人向けを意識したらしい、チョコレートケーキ。

 切り株の形をしたロールケーキに、軽く粉砂糖をかけ、その上にこれまたサンタクロースを乗せた、ブッシュドノエル。

 ベージュの線上のクリームが、ドーム型の形を作り出し、その中にはこんなにもたくさんの栗が入っているのだと宣伝されている、モンブラン。

「……」

 最後には、子供向けの物だろう。

 キャラクターものがいくつか。どれも、セットの玩具がついてくるらしい。ケーキの上にはサンタクロースではなく、サンタクロースの格好をしたキャラクターが乗っていたり、描かれたりしている。

「……」

 次に、フライドチキンが赤い箱に入って写し出される。

 様々な時代、様々な家族が、その箱を中心に、暖かな食事の風景を繰り広げていく。

 キラキラとした演出と共に、お得なセットとして紹介されている。

「……クリスマスですか」

「……あぁ、なるほど」

 探し物が見つかったらしい、キッチンに居た私の従者が、手に小さなマシュマロの入った袋を持ちながらそうつぶやいた。……まだこれに足すのか。

「……」

 なぜこんなにも、赤いイメージカラーでキラキラとしたCМが連続するのかと思ったら。そうか、今世間はクリスマスの話で持ち切りなのか。

 クリスマスケーキや、その夜に食べるチキンの予約を促すCМだったらしい。

 そういえば、もうそんな時期なのか……。

「何か気になるものでもありましたか」

「いや……」

 つい先ほどまで、コイツの作ったスイーツを食べていたので、そんな気にはならない。それに、そんなものを毎日目にしているし食べているから、尚更。

 あぁ、でもチキンは少々気にはなるな。だが、結局コイツが作るのが美味いだろうと思ってしまう。

「今年はクリスマス何かしましょうか」

「あぁ、それもいいかもな」

 なんだかんだと、クリスマスというイベントを意識したことがない。

 その日特別に食事を豪華にしたり、ああしてケーキを食べたりというのが……そういえばなかったな。まぁ、生まれた場所が場所だったから、幼い頃はもちろんなかったし、その後も逃げながらの日々が長かったものだから。

「……うん、いいかもな」

「そうですね」

 そう応えながら、私のコーヒーの上にまでマシュマロを乗せようとしたので、マグカップを引き寄せる。

 ……らしくもなく、ほんの少しだけ、クリスマスが楽しみになってきた。





「コーヒーにマシュマロは合わないだろう」

「いや、微妙に余ったので……」

「ココアに入れろ」

「これ以上は……」

「それか食べてしまえ」

「……食べますか?」

「いらん」









 お題:桜・水彩画・ショートケーキ

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