エピローグ:永遠に輝く二番星
それから2年後——
私は予定通り王立騎士団のサポート魔法師として採用され、騎士団本部で働いていた。担当は新人騎士たちの訓練サポートと、重要任務での後方支援だった。
「リーナ、今日もお疲れさま」
訓練場で声をかけてきたのは、同期で採用されたアリスだった。彼女は希望通り魔法戦士として騎士団に入団し、既に数々の功績を上げている。
「アリスこそ、今日の討伐任務お疲れさま」
私たちは今でも最高のパートナーだった。アリスが前線で戦い、私が後方から支援する。学院時代から変わらない、完璧な連携だ。
「来月の国境警備任務、一緒に行くのよね?」
「もちろん」私は微笑んだ。「私がいなければ、アリスは無茶をしすぎるから」
「そんなことないわよ」アリスが笑った。「でも、リーナがいてくれると安心するのは確かね」
騎士団での日々は充実していた。多くの仲間を支え、国の平和に貢献する。田中健太の記憶では決して手に入らなかった、深い満足感が毎日を満たしている。
マーカスは風系魔法師として商業ギルドで活躍し、セシルは魔法研究所で理論研究に没頭し、エリックは故郷で領主として領民を支えている。それぞれが自分の道を見つけ、それぞれに輝いている。
そして私は、時々彼らのもとを訪れ、それぞれの分野で彼らを支えている。国境を越えた友情のネットワークが、この世界をより良い場所にしている。
ある夜、自分の部屋で机に向かっていると、窓の外から静かな光が差し込んできた。相変わらず二番星が一番星の隣で輝いている。
リーナ・フォレスト——永遠の二番星として、私は今日も誰かの輝きを支えている。
田中健太で叶わなかった夢とは全く異なるが、これこそが私の本当の幸せだったのだ。
性別が変わったことで学んだ協調性と共感性、「永遠の2番手」という制約で気づいた支える喜び、そして仲間たちとの深い絆——すべてが私を完成させてくれた。
転生の意味を完全に理解した今、私は心から感謝している。田中健太として生きた25年間も、リーナ・フォレストとしての19年間も、すべてが必要な経験だったのだ。
机の引き出しから、古い図書館で見つけた文献の写しを取り出す。そこには、今の私の心境を完璧に表現した一節が記されている。
『真の支援者とは、自らの光を隠すものにあらず。一番星と調和しながら、独自の美しさを夜空に刻むものなり。その輝きは時に一番星を超え、迷える旅人の道標となる』
私は微笑みながら、その文献を静かに閉じた。
窓の外では、二番星が一番星と美しい調和を奏でている。まるで二重奏のように、それぞれの光が響き合い、夜空をより豊かにしている。
田中健太が夢見た「1番」とは違うけれど、私は今、確実に自分だけの「1番」を生きている。
それは「最高のサポート魔法師」として、「最高の仲間」として、「最高の二番星」として。
書類の最後のページに、今日の報告書を書き上げる。新人騎士たちの成長記録、任務での連携データ、改善提案——すべてが、誰かを支えるためのものだ。
ペンを置き、再び窓の外を見上げる。
永遠に輝く、私だけの光として。
そして今夜も、二番星は静かに輝き続ける。一番星を支えながら、自分だけの美しい光を夜空に放ちながら。
夜が更けても、その光は決して消えることはない。なぜなら、支える者の輝きは、支えられる者がある限り、永遠に続くものだから。
私は満足して微笑み、明日への準備を始めた。また新しい一日が、誰かを支える喜びで満ちているのだから。
【完】
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ぜひ、★で感想をフィードバックいただけると大変嬉しいです。