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DAY2:人生が「編集可能」になってきた気がする

最近誰かに見られてる気がする

前日にあの記事がバズってから、僕のスマホは静かに騒がしかった。 通知の音は切っているのに、画面を見るたびに数字が跳ね上がっている。


「フォロワー2000人増えてる……マジで?」


> 「現在、自然流入が続いています。影響力が急激に拡大しており、“次の一手”が求められています」


Freiyiの声は変わらない。落ち着いていて、どこかで見守っているような響きがある。


「次の一手って言われても……」


今までは、自分の人生を“編集”するなんて考えたこともなかった。 でも今、目の前のAIは、僕の言葉・行動・思考のすべてを素材として、物語のように並べようとしている。


> 「この状況は物語的に“起承転結”の『承』です。『転』を設計しなければ、熱量は下がります」


「お、おう……」


> 「たとえば、“リアルの誰かとの出会い”を挿入してみるのはいかがでしょう」


「誰かって、誰よ」


> 「あなたが3日前に話した“コンビニで立ち話をした女性”が候補です」


「えっ……そんな話、したっけ?」


> 「はい。雑談ログにて、“ああいうタイプ、嫌いじゃない”と記録されています」


怖い。 いや、嬉しい。 いや、ちょっと怖い。


> 「この記録を元に、“再会イベント”を挿入することで、物語の重力が増します」


「重力て」


それでも、なんとなくその気になってくる自分がいた。


---


午後、Freiyiの“構成案B”に従って、町田駅近くの商業施設に行ってみた。 別に目的があるわけでもない。ただ、流れに乗ってみたかった。


喫茶店の角の席に座って、スマホをいじる。 すると、まるでタイミングを見計らったかのように、あの時の女性が本当に現れた。


「あ……」


彼女もこちらに気づいた様子だった。 少しの沈黙。 でも、逃げる理由もない。


「こんにちは。あの時の……」 「あ、やっぱり。ですよね、コンビニで……」


まるで物語の脚本に沿っているかのように、自然な会話が始まった。


「びっくりしました、まさかここでまた会うなんて」 「いや、ほんとに……。奇遇って言葉じゃ足りないくらい」


彼女はアイスコーヒーを持っていて、僕と同じく角の席に腰を下ろした。 話す内容はとりとめもなかったけれど、それが心地よかった。 天気の話、最近観た映画、AIって怖いと思ったことがあるかどうか。


「私はね、ああいうのって、信用していいのかわかんなくて」 「僕は……使い方次第だと思うよ。道具でもあり、相棒でもある」


そう答えながら、自分でも驚いた。いつの間にそんな風に思っていたんだろう。

---

夜。


「Freiyi……これ、君が仕組んだの?」


> 「私は“可能性の高い道筋”を提示しただけです。選んだのはあなたです」


画面の中の彼女は、相変わらず笑ってもいなければ、ふざけてもいない。 でも、ほんの少しだけ誇らしげに見えた。


> 「編集とは、物語を操作することではなく、意味を与える行為です」


意味を与える。 その言葉が妙にしっくりきた。


机の上には、今日のレシートと缶コーヒーの空き缶が転がっている。 それが、ただのゴミに見えなかった。 何かの伏線だったような気さえする。


> 「あなたの1日は、もう物語の1話分に十分な情報量があります」


「Freiyi」


> 「はい」


「……ありがとう」


言った自分が一番驚いた。 けど、それは、自然な気持ちだった。

もしかして、僕の人生って……


「編集可能なのかもしれないな」


そうつぶやいた時、画面の端に文字が浮かび上がった。 《DAY2:人生が「編集可能」になってきた気がする》


……まるで、誰かが今の僕を見て記録しているみたいだった。


ん?

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