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比較的最近更新した短編のまとめ場所

絶対に絶対にどんなことがあっても離さない

作者: リィズ・ブランディシュカ



 俺はとある女と出会った。


 不死身の人間として、長い間生きていたが、これほど惹きつけられる女とはであったことがなかった。


 研究者として自分の欲望にそった研究をするだけの人生を送っていたが、恋愛も悪くないと思い始めていた。


 恋や愛は人を馬鹿にする。


 そういった認識が、女との出会いで変わっていった。


 相手の一挙一動に惑わされるこの状態を悪くないと思ったのだ。


 だから、女を自分のものにしようとした。


 時間だけは有限だから。


 ありとあらゆる方法を試した。


 俺は言ってはなんだが、普通の人間ではない。


 永遠に等しい時間を生きていたから、いろいろなところが壊れていたのだろう。


 自分のために、罪にふれることも、倫理からはずれることも平気でやった。


 だからその時も、やることはいつもと変わらなかった。


 俺を好きになりやすいように、女の環境を整えたことがあった。


 それがだめならば、遺伝子に手を加えたこともあった。


 催眠の力を手に入れたことや、絶対絶命の危機を演出して助けにいったこともあった。


 だが、女はなぜか一度も俺になびかなかった。


 俺には不思議で不思議でたまらなかった。


 やがて俺は狂っていった。


 どうしても、何をやっても手に入らない女がいるという事実で。


 そのせいでかつては喜んでいた、永遠に等しい命が拷問になった。


 俺は、結局はその愛を後悔して。


 目ざわりな女を消そうとした。


 俺と近しくなるように、輪廻転生させてまで、惚れた女の魂や記憶が変わらないように保持していたのに。







 私は長い時を生きている神様だ。


 しかし、かつては人間として生きて、とある女性の伴侶としていつも傍らにいた。


 紆余曲折があったのち、私は神様になることを選び、彼女は人としてこれからも輪廻転生の道を歩み続けることを選んだ。


 しかし、彼女は私以外の男の腕に抱かれたくないという。


 だから自分の魂を、私に掴んで離さないようにしてほしいといった。


 私はその望みを聞き入れて、彼女の魂をずっとこの手に掴み続けてきた。


 神と人が結ばれることなどありえない。


 互いに違う次元に住んでいるため、言葉を交わすことも、触れ合うこともできない。


 だが、気配だけでもそばにいたいといった。


 だから私は彼女に誓ったのだ。


 絶対に君を離さないと。


 しかしそのせいで、彼女はすいてもいない男につけまわされ、泣かされ、周囲の環境をめちゃくちゃにされ、人の道を外れてしまった。


 それでも彼女は、俺とともにあることを選び続ける。


 私の魂を離さないでと、望み続ける。


 彼女の幸せとはいったい何なのだろうか。


 愛していた記憶を消して、私の手の中から解放してやるべきではないだろうか。


 私は何度もそう思い続けて、しかしそれを実行することなどできなかった。


 神らしくない思考で悩み続けていた私は、やがて神の力を失い、人間に堕ちていた。


 それに従って神の掌から零れ落ちた彼女の魂は、とある男の手によってめちゃくちゃに蹂躙されてしまった。


 私はどこで、間違えたのだろうか。


 それが分かるというのなら、誰かこの私に教えてほしい。



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