卒業
スイッチをポチって押したら音楽室のスピーカーから卒業式定番のメロディーが流れ出る。
そのメロディーに合わせて「フンフンフン〜」と鼻歌を歌っている私の耳に、廊下を駆けてくる音が聞こえたと思ったら音楽室の扉がバァン! と音を立てて開けられると共に友達か飛び込んで来て、スピーカーを持っていた鉄パイプで殴りつけ破壊した。
「何するのよー!」
「それは此方のセリフだぁー!
何をやっていたんだ?」
「え? 何って卒業式だよ」
「私が言っているのは、何で? 大音響で音楽を流したのかって聞いているんだよ!」
「だって卒業式って言ったら、これでしょ」
「時と場合を考えろー!
お前が大音響で音楽を流した所為で、周辺のゾンビが学校の周りに集まって来ちまったんだぞ!
奴等を駆除するから用意を整えて校門の前に来い!
分かったかぁー!」
「分かりました……」
友達は鼻息荒く音楽室から出て行った。
去年の夏、夜になっても気温が40度を下回らなかった熱帯夜が続いていたある晩、何時も連るんでいる仲間たちと一緒に学校のプールに涼みに来る。
普段だと30分も真夜中のプールでキャアキャア騒いでいると近所の家の通報でパトカーがすっ飛んで来る筈なのに、あの日は来ないだけで無くなんか周辺が凄く騒がしかった。
その所為でパトカーが来ないんだなって思ってたんだけど違ったんだ。
存分に涼しんで帰ろうとしたら学校はゾンビに包囲されてた。
それから私たちは学校に籠城し暮らしている。
去年の春、担任のセンコーに「こんな成績だと来年学校を卒業出来ないぞ」って言われた事がホントの事になるなんて。
だから私は此の鬱憤をゾンビを駆除することで晴らそうと、黒板の前に立て掛けてあった金属バットを持って校門に向けて駆け出した。