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特別警邏隊活動ノート  作者: 南山由真。
10/10

1-9

 甲板では死屍累々を重ねながら、カルディはヴォルフ、カーパスとともに戦闘を繰り広げていた。船体側面のほうでは残党が未だに抵抗し、カルディらは遮蔽物に身を隠しながら応戦する。

 ヘリは五人を下ろし終えてから遠くに避難しているとはいえ、旋回音は銃声と勝るとも劣らない爆音で、局面は一進一退のままである。

 「キリがねぇなぁ」

 ヴォルフが隙を見て身を乗り出し乱射すると、前方にて頭をのぞかせていた男の頭がスイカのように吹き飛ぶ。冷徹な眼差しは、先ほどアイリーンと三人でカレーを食べていたそれとは全く異なっていて。

 緊張の連続。相手の弾丸がカルディらが隠れている遮蔽物を傷つけていく。

 「カルディ、もうちょっと身をかがませろ! 早く決着したいのはわかるけどだからと言って身を乗り出しすぎるな!」

 「はい!」

 カーパスが遮蔽物から出、一気に真横に駆け抜ける。その騒ぎでさらに一人を討ち取る。

 壁に背を預けたカーパスがリロードしているうちに、カルディも発砲を続ける。

 何にせよ短機関銃の強みは短時間で一気に弾丸を放出できること。しかしその分リロードにかかる時間が増えるわけで、このような武器に不慣れなカルディは焦燥を隠せない。

 いつもは拳銃で凌いできたため、このような攻防戦には向かないことにようやく気付く。

 それに、一年の廃人生活のブランクはかなり大きく、先ほどからどうも、腕にきているのだ。汗がにじみ、スーツが汗でずぶ濡れになっていてひどく不快になる。

 弾丸も当たらない。明後日の方向に飛んでいき、威嚇以外の作用を及ぼさない。ヴォルフとカーパスがいるから何とかカルディも生き延びているが、一人だったら間違いなく死んでいる。「しっかりしろよ、相棒!」という相棒の叱責が飛んできそうだなと自嘲する。

 パシュ、という着弾音がすぐ真横でした。

 「上だ!」

 ヴォルフが叫ぶと同時に再び弾丸が地面をへこませる。

 客船の建物の上――三階に二人の影が確認できる。

 「狙撃だ!」 

 「勘弁してほしいねぇ」

 カーパスが上を狙い、ヴォルフは尚正面にいる敵陣を突破するために弾丸を打ちまくる。

 「まずい、上から狙われたら――」

 まず防ぐすべがない。前からならうまく遮蔽物が代わりになるが、上はがら空きなのだ。

 影が弾丸を込める動作をし、再び狙いを定め、追撃しようとする――その寸前に横にいた男が血を吹き出し、そのまま下へ落下していく。

 次の瞬間にはもう一人も同じ末路をたどり、肉が思い切り地面にたたきつけられる音が響き渡る。

 「相変わらずかっこいい登場の仕方をするよね。あの金の亡者は」

 カーパスがにやりといやらしい笑みを浮かべ、再び正面の敵を標的に定める。

 エモンだ、とカルディは気づく。

 エモンが長い前髪をなびかせながらSVLK-14Sを構え、不安定にホバリングするヘリから狙撃していた。その横にはリュカが控えており、双眼鏡を片手にスポッターの役割を果たしていた。

 スポッター。別名、観測手。狙撃手の補助をし、状況や懸念事項などあらゆることを補足し把握する役割。他にも偵察や、集中している狙撃手を狙う人間がいないかなどの警戒や護衛を務めることで有名。

 リュカはカルディの視線に気づくことなく、淡々とエモンとペアで更なる攻撃を仕掛けていた。

 相手側の狙撃手がいなくなってからは、一気にこちらが優勢になる。

 極限の命のやり取りは極限なまでの集中力を必要とするのだ、そして、それはそれ相応の忍耐力が泣ければ、保てない。

 そこの集中力は、修羅場を多く潜り抜けているであろう警邏隊のほうが持続した。

 ヴォルフの銃撃に、次々と倒れていく組員たち。

 ものの数分で、敵は全滅を呈していった。

 警戒を緩めることなく、カルディらは身を潜めていたが、やがてヴォルフとアイコンタクトを取ったカーパスが身をかがめつつ向こう側を確認する。

 「クリア」

 その一言でカルディらも遮蔽物から出る。

 出てみれば、相当ひどい惨状が広がっている。血だまりができていない床の部分を探すのが難しく、相当の戦いであったことが見込まれた。

 死体を見下ろすヴォルフは、先ほどと同様冷えた眼差しで、少なくとも同情とかそういうものでは一切なく。

 一方カーパスは亡くなった人々を見下ろしたままポケットから何かを取り出す。

 ロザリオだ。

 わずかに天に祈った彼は、すぐに白いコートにそれを突っ込み、やがて胡乱気な視線をカルディらに向ける。

 「どうやら甲板の勢力は全滅したっぽいね。上からの狙撃も終わっているわけだし。はぁ、本当に体力がなくなる仕事だよね、生産性も何もない、こんな無駄な時間を過ごして睡眠時間や労力、貴重な時間を使ってしまうことは誠に遺憾だと思うし、それも実際こんな血だまりを作るだけとか本当にやり切れないよね」

 カーパスがベラベラと喋りだす中、カルディは短機関銃を片手に周囲を見渡す。

 突入したダイムとイヴ彼の連絡は相変わらず途絶えたまま。

 無事だろうか。

 カルディの胸に黒々としたものがたまっていく。

 二人との接点は薄い。けど、生きていてほしいと思うのはあながちあり得ない話ではないはずだ。

 ヘリが旋回する空は徐々に明るくなり始めている。おそらく、もう少しで太陽が顔を出すだろう。

 そんな時だった。

 『こちらダイムとイヴ。操縦桿の制御を奪った! こちらは二人とも無事だ、今からスピードを落とす! 他のテロリストたちは投降した!』

 「よし!」

 カーパスが頷く。

 ヴォルフもそうかぁ、とだけ言い残し、ようやく柔らかい笑顔を見せる。

 『現在十二名を捕縛した! 作戦終了! テロの阻止は成功した! ただいま船舶のスピードを落とす!』

 『よくやった皆!』

 セレが大きな声を上げ、耳が吹き飛びかける。

 『もう少しで掃討船が来る。それまで待機しろ。警邏隊はほかに生き残りがいないか、捕縛に専念しろ。かじ取りはダイムに任せ、イヴは傍で警戒!』

 「了解しました!」

 気が緩みそうになるところを全力で堪える。まだ敵が残っていないという訳ではないからだ。

 けど、みんな、無事だった。

 それだけで十分だ。

 「お前ら二人は大丈夫なのかぁ?」

 『無傷……だぜ! イヴは』

 『ダイムは……割と、ぼろぼろ……』

 「はぁ。どうせ君はナイフ数本で暴れまわったんだよね。全く後の処置が一番面倒くさいんだよね。基本的に応急処置とか僕がやるわけ。もう少し気を遣えないかな?」

 『いやーそれを狙ってったんだぜ、俺はな!』

 「君は一回地獄に落ちるべきだと思うよ人間やめてよ僕をこき使って時間を浪費させてさぁ」

 『あー悪かったって! な! 今度豚骨ラーメンを奢ったるから!』

 「全く、本当に僕の時間をあからさまに消費させるなんて頭がどうかしているよ。時間は有限であり、だからこそ有用に利用しなければならないのがわからないのかな」

 カーパスが青筋立てながらキレていると、するするとヘリから降りてくる影があった。

 セレだった。

 「隊長!」

 黒いコートを海風ではためかせながら、相変わらずの姿勢の良さを保った彼女が近づいてくる。

 肩までで切りそろえられた美しい黒髪がなびく姿は、まるで絶景の美少女。

 「お疲れさま、みんな」

 「おぉ、セレじゃねぇか。高みの見物は終わりかぁ」

 ヴォルフが振り返ると、彼女はトテトテと彼に近づく。

 「責任者が到着次第話をする必要があるからな。面倒だが仕方がないだろう」

 口をすぼませるしぐさを見せるセレは、次にはカーパスに向き直る。

 「お疲れ様」

 「大変だったよ、本当に。まぁでもいい拾い物をしたんじゃない? そこそこ使えるし。まあ課題は山積みだけどさ」

 「……! あ、ありがとうございます!」

 「いや褒めてないよね! どれだけおめでたい頭をしているのかなホント!」

 最初はすごく邪険に扱われただけであって、ここまで対応が軟化してくれたことは本当にうれしかったし、認められたと思った。

 「うんうん。上司と部下の信頼関係は大事だからね。カーパス、やはり僕が見込んだ通りだ」

 「別に僕は何もしていないけどね」

 カーパスが眉を顰めるが、あいにく口元がやや緩んでいるのを見逃すことはない。

 「けど君体力なさすぎ。腕なんてもう震えっぱなしじゃないか」

 指摘されてカルディは自分の両手を見やる。ガタガタと意識とは関係なく震えている状態の両腕に、きっとあのまま戦闘が続いていたら本当にまずかったかもしれないと反省した。

 「まぁ体力をつければいいじゃないか。そういうことで、頼んだぞカーパス」

 「僕に色々な責任を押し付けすぎじゃないかな? 本当に面倒なことばっかり押し付けて自分が楽をしようなんて烏滸がましいと思わない訳?」

 「さて、カルディ」

 「はっぁああああ? ねぇ僕を放置? 今さっき話してた――」

 「じゃぁ俺たちはほかに誰かいねぇか探してくるぜぇ」

 カーパスをひょいと担ぐヴォルフ。

 「は、ちょ、待てって! え、何で普通に僕を担げるのなんでそんな強いの!」

 「お前は軽すぎだ。少しは不規則不摂生を何とかしたほうがいいぜぇ」

 「待てって、今僕はセレと話してたよね、ちょっとこういう扱い酷いんじゃないのか? 労基に訴えるからなー!」

 そのまま客船に拉致されていくカーパスを見届けていると、セレはくすくすと口元に手を当てる。

 「面白いだろ? 僕の部下は。もう愛しているといっても過言ではない。全く、実力ある人間は大抵変人であるという法則は一体何だろうか」

 「さぁ、俺にはよくわからないです、隊長」

 「セレでいい。……それにしても、今回はご苦労だった」

 ポン、と彼女の細い腕がカルディの肩をたたく。力強く、温かい手だった。

 「別に。他の皆に比べたら俺は何もできませんでしたし、結局杞憂で終わりましたから」

 誰も失うことが無かった。それを心配する必要がないほどに、皆は強くて、自分は足手まといになりかけて。

 「どうだ、国を守った感想は」

 「……別に、悪くない気分です」

 「その割には、浮かない顔だな」

 「そう、ですか」

 セレは感情が読みにくい笑顔のまま、カルディを見つめてくる。まるで感情や思考を見透かされているようで、少し居心地が悪い。

 「この国というより、俺はこの国で生活している人々を守れて、よかったと思います」

 レベッカ港を潰され、莫大な経済損失を生めば大幅なインフレが発生し、国民の生活はさらに劣悪なものになっていただろうから。

 「カーパスから何か聞いたか?」

 「いえ」

 「ならいい」

 本当は、セレもカルディと同じように誰か、大切なものを失ったということを示唆されていたのだが、何かそれを言うべきではないという直観があり、伏せたままでいることにする。

 「警邏隊として君を招待させたのは間違っていなかったようだな」

 セレはコートをなびかせながら空を見上げる。

 空は、既に太陽がのぞいていた。

 全て、終わったのだ。

 「セレ」

 「なんだ?」

 特別警邏隊は滅茶苦茶だと思う。美しい女将官に、傲慢な教育係。他の隊士達も十分おかしいと思う。

 けど、ここなら。

 また、誰かを失うことなく、誰かを救うことができる。

 少なくとも、あいつなら――バステスならこの道を選ぶ。

 「俺は――」

 刹那、銃声が鳴った。


 セレの肩をかすった弾丸が、海の向こう側に飛んでいく。

 振り返った彼女は、いつまでも笑顔だった。

 そこにいたのは、まだ十代くらいだろうか、そこら辺の若者だった。

 「特別警邏隊隊長、セレ・アナキスタだな!」

 ガタガタと震えながら、足から出血している男は絶叫する。

 「貴様――」

 カルディが銃口を向けようとする。隊長が死ぬなどあってはいけないから。

 しかし、セレがそれを制止した。

 「待て、カルディ」

 「しかし!」

 瞬間、鳥肌が立つ。

 セレの殺気だと気づいた時には、既にカルディの手から短機関銃が抜き取られ、地面に置かれていた。

 「落ち着け、僕は大丈夫だから」

 そう言い残し、再び若者に目を向けるセレは、直立不動のまま、全く相手を恐れることなく、初めましてと挨拶していた。

 「エモン、撃つなよ? 他の連中も引き続き他の生き残りを捜索及び捕縛しておけ。甲板には近寄るな。いいな?」

 『了解』

 聞きなれた挨拶とともに通信が途切れる。

 何を、しているんだ。正気なのかとカルディは疑う。ガチガチと先ほどの殺戮を恐れ怯え、銃口を向ける若者を相手に何故無抵抗で笑っていられる。

 「お、お前らが、お前らが悪いんだ!」

 若者は目を怒らせセレを睨みつける。

 「お前らのせいで、俺の親父が死んだんだ!」

 「それは、ここで命を散らした者か?」

 「違う! お前らの国の圧政で、薬を買う金すら税金やらで持っていかれたんだ! せっかく集めた金が徴収されて、親父は死んだんだ! それだけじゃない、この国は何も俺たちを守ってくれなかった! 社会も、国も、俺たちを見放した! 今ここでお前らに殺された連中は、みんなその絶望を味わってたんだ!」

 思い出すのは、地下駐車場での戦闘。

 あの男だけではない、きっとこの場で死んだ人間たちは、それ相応の修羅を潜り抜けてきたのだろうと検討くらいつく。

 「何が福祉国家だ、何が弱い民を助けるだ、ふざけんじゃねえ! 上級国民の私腹を肥やし続けるだけの政策なんて、もう飽き飽きだ! せめてここで死ぬなら、せめてお前を殺して冥土の土産にしてやる!」

 途中で涙声に変化したそれは、なお憤怒と憎悪をこの美しい女官を捕らえている。

 「そんなクソみたいな国を助長し、それを正義とする! ふざけんのも甚だしい! お前らのような考えなしの政府の狗なんかいなければ! 貴様らさえ死ねばいい!」

 どうせ、と若者は言葉を続ける。

 「何か大切なものを、何か守りたかったものを失ったことのない、おめでたい集団が!」

 セレの口元がひきつったのが見えた。

 「セレ……」

 いつ撃たれるかわからない。この瞬間、彼女の胸元に風穴があくかもしれない。

 なのに、なんで、そんな平然を保っていられるのか。

 「……国がやったことについては、僕が謝罪する。すまないことをしたな」

 「謝って済む問題か!」

 「あぁ、勿論わかっているとも。……だから、撃つがいい。それで憂さ晴らしとなるのならば、僕の命を持っていけ」

 「な……」

 若者がたじろぐ。カルディも同様だった。

 きっと若者は、セレが慌てふためくことを想像していただろう。しかし、相反する彼女の態度に混乱している。

 「セレ――」

 「黙っていろ、カルディ」

 こちらを見ることなく、彼女はコートの前を開き、白いワイシャツ部分を露出させる。

 「これは僕らの問題だ」

 セレが一歩前に出る。

 若者は気を取り直し、再び銃を構える。

 「く、来るな!」

 「ならばその引き金を撃てばいい。それで君の悲願は果たされる」

 コツ、コツ、と革靴を鳴らしながら、一歩ずつ若者に近づいていくセレ。

 セレ、と呼び止めようとし、無駄であると悟る。セレは一歩ずつ踏みしめるようにして近づいてく。

 「一つ、訂正をしておこう」

 「て、訂正?」

 「僕もね、大切な人を失ったことがあるんだ。それはもう、本当に、愛している人を」

 こちらからは背中しか見えなくなる。けれど、きっとセレは笑顔なのだろう。

 「愛してた。本当に、僕の命を賭しても惜しくない人間を、僕は、目の前で失った」

 口調こそ毅然としている。思い出すのは、カーパスが話していた内容。

 「つらいよね。本当に。今でも夢に見るよ。どうしてあの時ああしなかったのかとか、そういう後悔ばっかりで。今でも覚えてる。徐々に失われていく体温。ざぁざぁ振りの雨音。そして、失った時の喪失感」

 指にしっかり残ってて離れてくれないんだよ、とセレは語り掛ける。

 若者との距離は、最早十メートルもなかった。引き金を引けば、確実にセレを殺すことができるだろう。

 「君はすごいよ。僕ができなかった選択肢を選んでる。少しだけ、羨ましい」

 「黙れ!」

 銃声とともに、彼女の足元に弾丸が撃ち込まれる。

 しかし、ひるまない。

 「確かに現在の国政は腐りきっている。誰も変えられない、止まらない。どうしようもない、最低最悪な国だ」

 カーパスと似たようなことを言う彼女は、さらに言葉を連ねる。

 「……だが、僕は、他の優しい隊士の皆とは違う」

 五メートルの距離にまで近づく。

 「君に告げよう。時期が来れば、僕は改革を断行する。いわば君たちが悲願した、国崩しを発生させる」

 すぐ目の前まで来たセレは、若者の顎に指を添える。

 「見ているがいい。僕たちが――僕が、この国を変えて見せる」

 さぁ、とおもむろにセレは奴が持つ短機関銃を手に取り、そして自分の胸に押し当てた。

 「セレ――!」

 「選択肢は二つだ。今ここで君の恨みを晴らし僕を殺すか、僕の国崩しをこの目に焼き付けるか!」

 熱を帯びているはずの銃口が、彼女の胸元に食い込んでいく。

 はらはらというレベルではない。

 「君のお父様の無念を晴らせるとは思わない。けど、この国を正しく導くための礎を形成させることくらいならできる。約束しよう」

 若者の表情が揺らぐ。

 きっと、黒いコートを身に着けたセレは、彼からすれば死神に見えただろう。

 自分の信念と彼女の夢物語の狭間で苦悩する若者。

 重苦しい静寂。

 空は明るく、晴天で、雲一つない美しいもので。

 「……あんたは」

 やがて、悲痛そうな顔を歪め、若者は尋ねる。

 「できるのか、そんなことが」

 「できる、じゃない。僕が、やるんだ」

 その言葉は、とても真っすぐで、真摯で。

 若者は、銃を下ろす。

 「……きっと、ですよ」

 「わかっている。もし、僕がそれを達成できなかった暁には、きっとお前に僕の命を摘ませてやるさ」

 だから、待っていてくれ。

 必ず、達成させるから。

 セレの言葉に、泣き崩れる若者。ガチャリと短機関銃が地面を跳ね、しゃくりあげて泣く若者に、セレも座り込み、すまなかった、と声を絞り出していた。

 カルディはそんな二人を見、複雑な心境を抱いていた。

 彼らは凶悪犯に変わりはない。けれど、それを誘発したのは、劣悪な圧政と独裁なのだ。

 俺たちは、本当に正義なのか。

 正義、なのだろう。

 罪のない国民を守るために、これはしなければいけない仕事で。

 けれど、一部の人々は、先ほどの男や今目の前で嗚咽を漏らす若者のように、全てを奪われて、だからこうする道しかなかったものがいて。勿論許されてはいけないことだと理解している。けれど、どうにもやりきれない。

 国家転覆。それは、きっと望む者も多くいて。

 「バステス……お前はどんな見解を示すんだ?」

 今は亡き相棒の名を呼ぶ。直観とノリとタイミングで生きていた、バステスは、いったいどう判断するのか。

 答えなんて期待していない。

 やがて汽笛が聞こえ、振り返ると、こちらに船が向かっているのが見えた。

 『どうやら来たみたいやな』

 迎えの船だ。

 血濡れに染まった地面を見下ろし、カルディは鬱蒼とした思いを抱く。

 このようにして、カルディの初めての特別警邏隊としての仕事は、無事終結した。

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