07 師匠
俺に魔法の師匠はいない。
しっかりとした師匠をつけて学べば、一般的な魔術のレベルはもっと上がっていただろう。
だが俺が上げたい特に上げたい技術は、ユニークスキル【想像物】の能力だ。
このチートスキルの扱いは人から学べるものではない。
それに普通の魔法に関しては生前の知識と感覚、それと金で集めた高価で貴重な魔法の本の知識でかなりレベルも上げられた。
体術の方は師匠が必要だろう。
生前は格闘技をかじっていたので、ある程度の理のある動きはできる。
エネルギーの扱いがうまくなれば身体能力は上がる。
しかし、当然だがもっと先を行く人間は山ほどいる。
彼らに習うことができれば非常に効率よく強くなれる。
師匠が必要なのだ。
銃の入手とは違う。
相手から直接指導を受けなければならない。
身近なクラス6であるテレサに習えればこの上ないだろう。
幸運なことに最近の魔獣討伐の出動は少なくて済んでいる。
教会の孤児も現在はあまり手のかからない年代の割合が大きくなっている。
結果的にテレサの手が空く時間がある程度できて、彼女は庭で修業をしていることが多い。
普通に頼んでもいけるかもだが、ここは一度本気でいってみるか。
早朝に一人で剣を振っていたテレサに話かけた。
「テレサ、僕と勝負しない?」
「あら、早いわねりアム。勝負?」
「そう。負けた方は何でも言うことを聞く」
「いいけど、何の勝負?」
「もちろん殺し合いだよ」
「ええっ?」
「いや、殺しはしないけど。とにかく戦い」
「うーん、別にいいんだけど」
「ありがと。じゃあ、距離はこのくらいかな」
距離は20メートルくらい。
俺に有利な間合いだが、テレサは気にいない。
そもそも、彼女は勝敗もきにしていない。
子どもの戯れだと思っているだろう。
男が何でもなんてお願いをしてきたら、少しは警戒してもらいたいものだ。
流石に今の俺の歳では変な展開にはならないか。
「じゃあ、始めるね」
「うん、好きにかかってきなさい」
当たり前だがテレサは一切警戒してないな。
これでは困る。
魔弾を使おう。
「っ!?」
魔弾がテレサの頬かすめる。
違う、かわされた。
「拳銃?、、、、、、魔弾?」
驚いている間に足元に泥沼を設置する、
隙をつかれたテレサの足がひざ下までつかる。
そのタイミングで急所を外しながら数発打ち込む。
そんな状況でもテレサは剣を使って弾丸をはじく。
俺が作る魔弾の中で最強というわけではないが、これだけ隙をついてもはじかれるとはショックだな。
彼女の目がろうばいから真剣に変わる。
次の瞬間には沼を抜け出し、左右に展開しながら目にもとまらぬ速さで近づいてきた。
俺はやすやすと後ろを取られて、銃を持っていた右手を押さえつけられ組み伏せられる。
「どこでそんな危ないものを」
俺は負けたことを悔しがるようなそぶりをする。
さりげなく左手の袖から銃を取り出してテレサの太ももを打ち抜く。
「いたっ」
「ぎゃああああ」
テレサは反射的にリアムの左手をへし折った。
「負けを認めないと、両手両足をへし折おる」
「参りました勘弁して」
「手を放すけどこれ以上なんかしたら容赦しないよ」
テレサは俺から手を放すと、剣を持ち直し経過しながら少し距離を取った。
鵜ではずきずきと痛いが文句はない。
むしろ子どもとはいえ容赦なく銃を撃ってきた奴に対して優しすぎるくらいだ。
「腕は大丈夫?」
「うん、治癒魔法が使えるから」
「そうなんだ」
俺は腕をしっかりと伸ばしてから治癒魔法をかけた。
「テレサのも直すよ」
「うん、よろしく」
テレサの足に触れせて頂き治癒魔法をかける。
足に空いた穴はみるみる修復した。
テレサが高位の体術使いでなければもっと大穴が空いていただろう。
「前から不気味な子供だとは思っていたけど、いったいどうしたの?」
「僕はテレサの弟子になりたかっただけだよ」
「普通に言えばいいじゃない」
「真剣さを伝えたかったんだよ」
「なるほどねー」
テレサは落ち着いた様子で俺を見ている。
凄い度量だ。
俺が逆の立場だったら真似できそうにない。
「いいだろう弟子にしてやる」
「ありがとテレサ」
「そういえば、何でも言うことを聞くんだったか?」
「えっ、そうだったね」
「それはいつかにとっておくとしよう。さてさっそくやるぞ。とりあえず武器を全部はずせ。
体術の基本を教えてやろう」
こうして俺はテレサの弟子になった。