42.5-8.午後11:50-12:00 桂馬リサイタル!
42.5-7の続きです!
僕は初めてのカラオケを満喫している。歌い出すと、心の中をグルグルと巡っていたモヤモヤ感が喉へと昇り、それが歌として口から吐き出される。
成程、ストレス発散の方法としてカラオケが挙げられていたことは知っていたが、これはいい。見聞と実体験では大違いだ。百聞は一見にしかずという諺を最初に唱えた奴を誉めてやりたい。
歌い出しは順調かな?西村が若干泡を吹いて上を見上げているみたいだけど、もしかして眠ってしまったのか!?いくら今の僕が上手い下手そっちのけでカラオケを歌っているからって批判はすれど寝るだなんて...。
他の皆はなんで頭を抱えるようにして耳を押さえているんだ?それくらいには下手なのか?
いや、初カラオケだ。こんなこともあるじゃないか!ここで挫けては駄目だ。最後まで歌い切るんだ!
僕は息を吸って今1番の大声を出していった。
◇◇◇
俺は西村だ。親友が遂にもう少しで大人の階段を昇りそうで、ドキドキしているぜ。
いやぁ〜、本当は俺独自にゲームを設定して親友と愛ちゃんをくっつけさせようとしたんだがなぁ〜...。どこからか嗅ぎつけた陽葵が介入してきてルールをだいぶ変えてきたんだよ。
まぁ、罰ゲーム執行者に西宮様も加えることで話は決まったが、今回は少しやり過ぎてしまったかもしれないと心の底で思っているのは内緒だぜ。
でも親友も親友だ。アイツはこうでもしないと恋愛関係のイベントに着手しないし、ぶっちゃけ荒療治でしか打つ手ないのが現状なんだよ。
俺としては、是非とも親友の高校生活をただ勉強だけに費やすだけのものにはさせたくないし、就職とからなんやらでゴタゴタとなる卒業後よりも前に恋をしてほしいのだよ。
お節介かもしれないし余計なことかもしれないけど、俺はこの意見は曲げるつもりはないからな。一つくらい親友でさえ譲れないものがあってもいいかなと思うんだ。
ま、それだけ宜しく!さぁ、親友の初カラオケを聞こうじゃないか。
「ボエボエボエヴァオォオエエア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
俺は親友がマイクをとって歌い始めた瞬間を最後に意識を途絶えさせた。
◇◇◇
あ、頭が痛い。聞くだけでSAN値が削れる。桂馬くんがマイクを持って歌い始めた瞬間、死霊の叫び声がこの部屋中を、いや、西宮家を包み込んだ。
西村は開始から1秒で泡を吹いて気絶し、西宮さんや陽葵さんは私と同じように頭を抱えて耐えている。
「な、何なの!?これ!?」
「こ、こらヤバイどす。お母様と同等、いやそれ以上の壊滅的な音痴や。まさか、ここに来て桂馬はんの苦手な分野がうちらに牙を剥くなんて!!陽葵はん、いけるか?」
「申し訳ありません、お嬢。私でも耳を手で塞ぐだけで精一杯です。もし当主様の時を例にするならば...。不味いです。今すぐに私達の隊へと様子を。」
陽葵に縋るしかないわ。このゲームでの作戦の命運は彼女とその隊に命運がかかっているんだから!!
「な、七番隊隊長より隊員全てに。大広間にて悪鬼修羅が出現し、原因不明の怪音波攻撃を受けて...!?何ですって!?七番隊全員が全滅!?1分前に謎の奇怪音を聞いた瞬間に泡を吹いて倒れたですって!?」
陽葵は自分の部下に信号を送ったが、誰1人とも正気を保つことはなかったみたいだ。この時点で味方の大半が全滅してしまった。
作戦が瓦解した瞬間を私達は認識した。そんな私達に蛇威侒は追い討ちをかける。
「ヴヴヴァイオ゛レッドノ゛オオオ、ア゛ガギギィィィヲム゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ネ゛エ゛二゛ィ゛ィ゛ィ゛!」
嫌ぁ、やめてぇぇええ。不安定になる。不安定になるからぁあああ。
「ちょい。あのマイク、違法マイクちゃいますか?桂馬はんがこないな死霊じみた声なんか出すわけあらへんで。」
こればかりは西宮さんと同じ意見よ!!
あんな普段はカッコよくていつでも聞いていられるトーンをしているのに、今はこんな1秒でも聞いていられない呻き声を出しているという現実だ。勘違い、幻聴だったらどれだけよかったことか!
「も、申し訳、ありません。私はもう限界でござい...ま...す。」
こうしている間にも、陽葵さんが倒れてしまった。残りはもはや私と西宮さんの2人だけだった。
でも私は負けない。めげないわ。ここで気絶したら、桂馬くんに嫌われる可能性があるかもしれない。修羅場云々よりも今はこっちの方を気にかけないといけないわ。
「こうなったら最後まで桂馬くんの歌を聴き終わった方がファーストキスするってことでどう?」
「そらええ提案どすなぁ。真に桂馬はんのこと想うんやったら、こないな痛い弱点すら体で正面から受け止めるだけの度量を見せな。」
どうやら、西宮さんも同じ結論に至ったようね。勝負よ。この対決、勝つのは私よ!
「@#ふJいAME&@?!GLMBEGOUR2467591☆$¥€、ア゛ナ゛ダニ゛二゛イ゛イ゛イ゛、ドドゲェ゛ェ゛ェ゛ウ゛ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
あ...、アカン。私はそれを最後に、意識を...。
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