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37.はじめの一姫 一姫の癒し編

36話の続きです!

土曜日。すなわち拘束1日目。早速、ピンチが訪れる。


「今日は天気がええどすな。このまま外にでも出かけまひょか?」


「やめて下さい。お願いします。」


何とお互いの手首が手錠で繋がれている状態で、この町を歩き回ろうと一姫が提案してきたのである。勿論、それは断固拒否だ。


やめて下さい。周囲の人から変な目で見られるから。主に僕とか!僕とか!!僕とかが!!!


「ほな、一緒に日向ぼっこでもしまひょか。後、桂馬はんは狐とのじゃれ合いで疲れてるやろうさかいうちが膝枕でもしたるさかい、ゆっくり休んどぉくれやす。」


今の疲れの原因の大半はあなたなんだけどね。一姫に連れて行かれて僕達は廊下の縁側へとやって来た。ここで鉈を持った澪五姫殿と初顔合わせしたんだよなぁ。


『すべての不埒者に...☆潮☆。』


...陽射しがいい感じに射して温かい。今の僕を労り癒してくれるのはお前だけだ。太陽、愛してる。


...庭で泣いている小鳥もいい雰囲気づくりを醸し出して、会話を起こさせない空間へと創り上げている。良いぞ、小鳥。


このまま夜になってしまえーッ!


「なぁ、桂馬はん。」


世の中は甘くなかったな。空が黒になるまで無会話なんてありえなかったよ。


「何でしょう?」


「先月にここへと初めて桂馬はんを招待した時、うちは少し強引になり過ぎてもうた思うんどす。去年は一緒の学校に入学し、勉強部をつくってわいわい騒ぐ。それだけでうちは幸せどした。」


...そうだね。去年は僕と西村と一姫、そして京宮先生といろいろな場所にいって仕事の手伝いをしたな。大体は知らずの内に西宮家の後始末を手助けしていたことが先月くらいに分かったけれど。


いい意味で言えばボランティア活動、悪い意味で言えば自作自演だったが...。


「そやけど早乙女はんが転校してきてから、あんさんの周りをその転校生が彷徨くようになって焦りが生まれたんどす。2年10ヶ月前の拉致の時には感じてへんかった筈の感情。それをどうしたらええか考えて分からへんくなって...。モヤモヤを消しとうて...。」


おや、一姫の様子が...。やんわりと黒いなにかが漏れる感じが...。


「そやさかいこうやって離れへんようにしたら、もううちから大事なものがいーひんようにならへんよなあ?実際、桂馬はんが遠うへと行かへんちゅう確証が湧くと、えらい落ち着くんや。ああ、桂馬はん。桂馬はんがここにおる。エへへへへ。中学の頃は耐えられたけど、入学式で再会して以来、耐えられへんくなったで。」


ボスッ!


「うおう!?」


思いっきりヘビーな心情を述べると同時に一姫は僕の右腕にもたれかかってその甘美な体を押し付ける。野梅系の香りが鼻をくすぐり、それが陽光と相まって微睡へと誘っていく。瞼がゆっくりとだが下がっていくように感じる。


駄目だ...。この匂いを嗅ぐと心の中の雨が止んで陽光が射し、そのぬくむりという安心感で眠ってしまう。僕が寝たら何をするのか分からないくらいに今の一姫が不安定な状態だというのに...。


「ええで。今日明日は休日や。ゆっくり眠って休養を取ってもええんどすえ?こうして手と手ぇ繋がれてるだけで、あんさんは十分にうちを護衛してるんどすさかい。」


手錠を見せつけてくる一姫。彼女に導かれるままに、僕はその瞼を閉じてしまう。ああ、そのゆるく落ち着かせるようなトーンのしゃべりは応えるん...だって...。


◇◇◇


とうとう桂馬はんは眠ってまいました。そらそうどす。後処理に追われた6月はまともに休まんと、7月に入ったら毎日欠かさず勉強。そこに早乙女はんとの放課後デートをぶっ込まれたら、体の疲労はピークに達する筈どす。その証拠に、ここに北時には桂馬はんの目の下にはクマ出来とったさかいな。


桂馬はんがうちの八番隊隊長になって早1ヶ月。ようやく西宮家も安泰への基盤を整えたばっかりなのに、その新しい一柱が倒壊してもうたらおじゃんになるやろう。


「あんさんはもう少し自分の体を大事にしてほしいんどす。そやけどこうでもせな、あんさんは休まへんどっしゃろ?」


うちは桂馬はんを膝枕し、その眠った眼に手ぇ添える。ああ、こないな寝顔されたらすぐに寝室にお持ち帰りして、たべ...コホン。より好きになってまうやろう。


「おやおや、旦那を寝かしつけるとは、早速良妻でもかましてるんか?一姫~。」


「お母様!もうせかすのんはやめとぉくれやす。後、まだうち達は結婚してまへん。」


うちが桂馬はんを寝かしつけてる時、廊下の曲がり角からニュッとお母様が現れた。あの様子は一部始終を覗いとったように思う。


「いやぁ~ほんまはもう少し見守ろかなやら思うとったんやけどな。」


「...水差すのんはあきまへんよ?」


「分かってんで。ああ、それともし東坊が奴の息子やったら、眠ってるあいさに気ぃ付けなあかんことある思てな。」


「え~。こないに安らかな顔で静かに眠ってるお人に対してそないな忠告することなんて!?きゃっ!?」


お母様がなんかを言おうとした時、桂馬はんが両腕をうちの腰に回して抱き着いてきた。ちょっ!?うちからならいけるけど、あんさんから抱き着くのんはまだあきまへんよ!?


「寝ぼけ癖があるかもしれへん言おうとしたけど、遅かったか...。まあ、旦那に抱き着かれて喜ばへん嫁がいーひん思うし、そのままでええか。ほな、ごゆっくり。」


ちょ、お母様引きはがすのを手伝うて!!ああ、もうええや。こうなったらうちも十分に抱き着いたるさかい覚悟したらええのに、桂馬はん。


うちは自由な右腕で抱き返し、手錠で繋がれてる左側は桂馬はんの右手とうちの左手で恋人繋ぎをしたった。


「えへへ。温かいなあ。」

お読みいただいてありがとうございます。


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どうぞ、よろしくお願いします!

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