23.酔いどれ西宮家 澪五姫独白編
閑話です。22話の後編ではないので気を付けて下さい。
「ゴク...ゴク...ゴク...ゴク...ゴク。ぷっはぁ~。きくぅぅぅ。」
今日は一姫の婿候補が現れてええ気分や。元々、うちくらいに強い奴を婿にするつもりで最近の5年はこの地を、地域を、国中をうちは歩き回った。
「あんさんが龍宮道場の若師範代どすか?」
「いかにも。俺が龍宮道場の」
「覚悟!」(名乗りだし中に攻撃!)
「どわあああ!!」
そやけど出会う男どもは揃いも揃うて肉体は軟弱地盤、精神は洟垂小僧ばっかり。やったら最初の一撃を防いだ男をと妥協しても結局は変わらずじまい。
「期待外れやな。」
「い...や...。それ、不意討ち...。」
「なんか言うたか?」(殺気)
「いえ、文句はありませぬ。是非、この道場の看板を」
「そないなしょうもあらへんものいらんわ!」
「「「酷い!」」」
今の日本の男どもがたるんでる者で溢れかえってる。
そないな嘆かわしい事実を男どもを葬るたんびに思い知らされることになった。
もう日の本には婿候補がいーひんし、後1年も過ぎれば娘の一姫は高校生になって結婚できる年齢になる。
「背に腹は変えられへんな...。」
そやさかいこそ、いっぺんうちの旦那の故郷で屈強な奴でも思て京の都の東におるジジイ共に許可を貰おう思て家を出発した矢先、事件が起こった。
そう。2年と10か月の前、一姫の拉致事件どした。当時、西宮家はとある組織と敵対関係にあって互いにちょっかいをかけとった。ほんでその組織の息は西宮家の内部にもかかっとって、なんとうちの外出のタイミングを狙うて、以前から潜入しとったまわし者がおったんどす。
「緩み。平和ボケによる世の猛者のレベルの弱体化が遂にうちにもその影響を与えるか。」
この時、うちも散々失望してきた男どもと同様に牙が緩なり、惰弱と化しとったことに気づいたんどす。
当時、17やったうちを筆頭に女矩三、そして時の3人で挑んだ20年前の閻魔大王退治。その時のうちやったらこないなへまやらしいひんかったやろう思ても後の祭り。
「ご報告いたします。現在、一姫お嬢様は山崎の古戦場跡にてあり。至急向かわれたし。」
ほんでもうちが隠密担当の者から報告を受けた時には、かつてへんほどの焦りと怒りが沸き上がったんどす。
急いで報告をした隠密担当の者に案内させたんやけど、そこにおったのは敵対組織の手の者どした。
「くっはははは。かつて『剣姫』と恐れられた西宮家の当主も今じゃその牙をもがれた猫と化したか?」
「「「ハハハハハ!」」」
「...言いたいことは全部言うこと出来たか?出来たなら遠慮のううちの夫の故郷へと落ちろ!!!」
奴や。この者こそが西宮家に敵対組織を手引きした下郎であると確信したうちは、マグマのような怒りとともにその場の敵を葬り去ったんどす。西宮家に残ってる者たちがうちの代わりに一姫を救出することを信じ。
「どうだ童ども。あんさん方が思てる程、うちはまだ落ちぶれてはあらへんわ!」
「つ...強い...。伊達に歳をくって」
「さぁ、うちの娘のほんまの場所をえずいてまいましょうか?とっととえずかへんとこの小説で表現できひんレベルまで甚振りつくすで!」
「な!?作者の小説連載生命を盾につかうとは何て卑劣な!」
「ほなかましい!あんさんの出番増やしてもらいたいんやったら早うえずかんかい!」
そして生き残らした奴に一姫の居場所をえずかせ、うちはその居場所へと向かった。そやけど、うちが到着した時には既に娘は救出された後どした。その場には一姫の1人のみ。救出してくれた勇敢なるものは既に姿を隠した後どした。そこで娘に話を聞いたとこ、おもろい話を聞いたんどす。
西宮家に伝わる京の伝説、その名も『闘神戦記』。かつて京の都を百鬼夜行から救ったとされるかの者は、闘神をその身に降ろして万夫不当の力で粉砕したとされる。
『人の黒は神の金へと化くゆ』て記すその伝承。それが現代の世に降臨したとなったら...。
ちょうどうち一人だけでは西宮家をカバーしきれなふと思うとった今この時に現出する絶大なタイミングはほんま天の計らい。娘の話を聞いたうちは、各地に散らばる護衛部隊の面々に残党の掃除とともに、娘を救うた肝の据わった野郎を捜索させた。
すぐに見つかるやろ。
そう思いどっしりと構えとった。そやけど素性を厳重に隠しとったのか、隠密担当の七番隊の者たちでさえその尻尾を掴むのに膨大な時間と労力を要したちゅう。
ほんまにちゃんと探してるんか。そうなんべんも檄を飛ばしたけど、一向に芳しい報告はあがらへん。娘は想いを募らせながらも自室に籠ってわしを磨いてるちゅうのに。なんでか時は意味ありげにうちの追及をはぐらかすし。
このまま見つからんと時過ぎていくんか。
そう思た時、事態は動いたねん。そう、あの拉致事件からちょうど1年後(今から1年と10か月前)の北始病院に運ばれた重傷者。その者に当時の7番隊副隊長の北七が焦点を当てたことから...。
それからは高校を一緒になるようにおんなじ中学出身である北七に奴の進学先を調べさせたり、高校入学後には北七を一姫のお付きに、南村を奴につけさし、女矩三を担任の先生につけさして素性を観察させたり。
娘も西宮家の次期当主にそぐわんと、欲しいものを手に入れるために手段を択ばへん貪欲さを発揮してくれ、日々顔には笑顔が灯されていったんどす。母としてその笑顔を見れるのんは嬉しい。
そやけどまだや。最終的に決めるのんはうち自身でその実力を見て、うち自身納得するものでなかったらならへん。
そこで、更に今日まで奴の護衛部隊入団試験兼婿候補見極めの場を綿密にセッティングさせ、今日、娘を穢した罪の清算ちゅう建前で奴の戦闘力を見てみたんや。ほんならびっくり。黒髪から金髪へと目の前で変化するちゅう先祖の神降ろしとおんなじ特徴を目の当たりにした。なにより...
(完全に容姿から、時の息子であること丸わかりとちがうか!!!)
時め。あら絶対にわざと知っとってうちに黙っとったな。まぁ、うちらに関わるのんは息子の命を危険に晒す可能性がある点で黙っとったことは否定しいひんけど、ほんでもあないなおもろい逸材を忍ばせとったことはやっぱし許はん。
その鬱憤も込めて5割の力で戦うてみたんやけど、奴は利き腕を使わへんで戦うとった。最初はねぶってる思て全力を出させようと躍起になったけど、うちの左眼と同様の訳ありと考えたら逆に親近が湧き始めた。
それになにより、互いに求めるものを見つけたような気ぃしたしーな。
そこで改めて奴の名前を聞くことにした。戦闘中で名前を聞くことはうちにとっては『敵を認める』て同意であるさかい。ほんでその後はもっと愉しもう思たけど、女矩三に止められてもうた。ちぇっ、おもろい所やったのに...。
まあ色々あった思うがとにかく東坊。どうかうちの娘と向かいおうてくれ...。娘はああ見て内心、これまで以上に舞い上がってるんや。是非ともその想いを汲み取ったって。ちゅうより、汲み取らな絶対に掻っ捌くさかいな!!!
「そういうたら女矩三はどこにいった?いつのあいさにかいーひんようになってるんやけど。」
「三番隊隊長なら、得物を持って飛び出していきましたが...。」
「アカン...。酔うたアイツに得物はまずいわ...。」
...東坊。取りあえんと、今宵は血の雨が降るかもしれへんで。充分に気ぃつけろ。
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