18.穏やかな心を持ちながら激しい正義感によって目覚めた伝説の騎士
即発性才覚埜神病。その症状は任意的な筋肉質中の水分質の過剰減少である。
ある条件を満たすと脳から特殊なシグナルが発生し、それが体中の筋肉質に作用、筋肉質中の水分質が過剰に減少するとともに、筋肉密度が極限にまで上がる。その結果、常人ではありえない程のパワーとスピードを発揮でき、身体能力がありえないくらいに上がるのである。
それだけならよいことづくしかもしれないが、『病』と称されることもあって弊害も存在する。
1つは水分質が突如変化することによる過剰なストレス。これが髪や目の色を決めるメラニンに作用してユーメラニンのみが一時的にSTOP。フェオメラニンのみが生産し続けることになって髪の色が黒から金へと変化するのである。
そしてもう1つは、これが沈静化した際の過剰な水分不足。水分質の減少した分の水分は常時体外へ排出されるのだが、体内の水分が減少すれば察しの通り生命の危機になる。一応、『黄金の黒騎士』時代にそのコントロールは掴んでいるので、ご臨終までは回避できるけど。後、その排出される水分に光が反射するのか異様に目の前が眩しく見えるのだ。
そしてこの病気による変化はとにかく中二くさいし、無知な小学生の時にクラスメイトの前で発症したおかげであだ名が『サ〇ヤ人』呼ばわりされ弄られまくった。当然クラスから孤立するしその時の教訓から、人前では黒髪から金髪に変化するところは見せないようにしてきた。
総括、チートバグです。なのに現在、初めて会った大人の前で披露してしまったのである。自業自得なのかタイミングの問題なのか、とにかくバレてしまった。
とにかく行くとこまで行ってしまったみたいなので、もうヤケを起こすことにしよう(自暴自棄)。今の僕はそう、
闇の黒騎士である。
「ウフフフフ。木っ端みじんにしたる。あんさんの親友のようになぁ。」
あれ?意外とこの一姫を大人にしたような女性、ノリがいい御方なのか?じゃあそれに乗っかろうかな。というより西村率いる『乙女に落とされ隊』は敗北してしまったのか。ご愁傷様...。
「あんさんの親友のようにだと?...。西村のことか...。西村のことかっーー!!!」
ノリに従っておなじみのセリフを発する。
「心地ええ闘気や。そうや、西宮家の当主を相手するさかいには、それ相応の戦闘力を発揮してもらわなね。さぁ、この珠のようなうちの体の中に燻る焼けつくような悦びの全てを、もっと熱う、もっと楽しましてみぃ!それでさっきの不埒ごとはチャラにしたるさかい!」
鉈がボロボロになっため、相手の女性は今度は腰にさしていた名状しがたい模造刀のようなもの(本物の刀)を取り出した。そしてなにかのスイッチが入ったのか、段々と会話内容が荒れているものへと変化していった。そしてお互いに納得するまで戦闘という名のDBごっこを繰り広げられていった。
◇◇◇
は、はーい。どうも最近影が薄くなっている気がする皆の女神、早乙女愛莉です。今私は車の中に乗っています。
「ハァァ。西村め。あれほど一姫には逆らうなと念を押していたのになぁ...。」
運転席に座っているのは私のクラスの担任、京宮先生ことめぐみん先生。彼女は今回の騒動を聞き、急遽家庭訪問という形で車を走らせている。そこに『乙女に落とされ隊』の隊員に連れられている私を拾い上げ、こうして西宮家へと向かっているわけである。
なお隊員はその場に残したまま急発進したため、車の中には私と先生の2人しかいない。隊員、哀れ...。
「それでどうして私を乗せてくれたんですか?」
「一応お前も今回の騒動の重要関係者だからな。このまま逃がすわけにはいかん。」
「はい。この度は申し訳ありません。」(西村が暴走しただけなのに...。)
「西村の方は私の協力者が騒動の鎮圧にかかってくれている。後は西宮家に連れていかれた東山桂馬、及び西村と同じ主格犯の疑いのある西宮一姫の2人だけだが...。」
あの陽葵という女は先生の協力者だったんだ。先生って実は顔の広い有名人だったりして。
ってそんなことはいいのよ!元々はエネミー桂馬を落とそうと昨日今日で学校案内(それを建前とした誘惑作戦)をしてもらおうと思っていたんだけど、邪魔に邪魔が入ってそれどころではないじゃない!ただでさえ難易度が高い相手だと言うのに、その周りを囲んでいる者も必要以上に介入していくから更に跳ね上がっているんじゃないのよ!!
『恋愛に障害がつきもの!』とはよく言うが、障害があまりにも多すぎる。うん、障害を設置した神様は今すぐ私の所に来て。一度ボコボコにしてあげるからさ!
はぁ~。一向に騎士様にもあえないし、唯一知っていることはその騎士様が南海高校にいることだけなんだよねぇ~。
もしかしたら意外と近くにいたりしてね!
ズドォッーン!!!
「な、なに。この轟音!?10キロくらい先から響いたような気がするんですけど!?」
「ああ。やっぱりおっぱじめ始めたか...。だからこうして高速道路を制限速度ギリギリで飛ばしているというのに...。」
「え!?先生はあの轟音のことをご存じで!?」
なんか驚いているというより、呆れているような感じで京宮先生は天を仰いで溜息をついているが、それ以上に先生の額から冷や汗が湧き出ている。
「...西宮澪五姫。西宮家の現当主で、『剣姫』、『霊姫』、『戦姫』、『地獄妃』、『大王妻』と呼ばれる生粋の戦闘狂。彼女が忽ち剣を振れば、文、時、霊、陽、山村を零へと帰す...。まぁ、ある意味で神だったり修羅だったりする...。今の音は彼女の剣撃が大地を抉った音だ!!」
「ほへぇ~。」(現実味が湧いてこないんですけど...。)
ん?待てよ?じゃあそんな化け物と戦っている人って誰なんだろう?いや、まさかね。いくらなんでもこればかりは有り得ない...よね?
愛莉はある意味で信じがたくも有り得なくはない想像をしながらも、西宮家の到着を待った。
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