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第三十二話 作戦遂行に向けて


「…………?」


「恐らく、アストの力を調べる為ではないでしょうか?」


「うむ。妾も悪魔に詳しい訳じゃないが、烙印が消え、支配が解消されている事、そしてアストと共にこの牢獄に入れられた事を考えると、ネファーリアの言う通り、導師の力を見極める為かも知らんのう」


「先生が烙印を魔術解除ディスペル出来るって、あのロズって奴分かってたって事だよな? あいつやばくない?」


「何故アストの事にそんなに詳しいのでしょう? 我々の様に未来からやって来たのでしょうか?」


「先生、先生はどう思う?」


「…………アスト?」


「今……微かに……何処からだ……?」


「アスト、どうしたんじゃ? ロズの事で何か分かったかいの?」


「え? あ、いや……」


「も〜先生、まさか違う事考えてたのかよ」


「…………」



 話を無視してた訳じゃないんだ。ちゃんとみんなの会話の内容も頭に入ってる。

 でも、僕は同時に別の何かを感じ取ったんだ。

 本当に微かに……でも気のせいって事もあるしな。

 多分九割ぐらい僕の勘違いだと思う。



《………ァ…………ォ…………》


「いや違う、勘違いなんかじゃない! やっぱり誰かの声がする!」


「誰かの声?」


「ここはロズの城の地下奥深い牢獄じゃぞ? 捕えられておるのは我々だけじゃ」


「そうですね。他に人間や魔族の気配はしませんし……」



 そうなんだ。確かにこの辺りは誰もいない。

 それは分かってるんだ。僕が感じ取ってるのはもっと遠くの……いや遠いような近いような……。自分でも何を言ってるのか分からないけど、霧の様にか細い声で集中しないと見失ってしまいそうな小さい声だった。


 でもその声はそれっきり全く聞こえなくなったんだ。



「幻聴かも知れんぞ? 竜眼で見てるが特別何かトラップが仕掛けられてもないし、妾には全く分からん」


「うん、そうかも知れない。とりあえず今は流印の壺とここからの脱出を考えないとね」



 壺に竜族の魂を移す事が出来れば、力を使う事が出来るし、そうなるとなんとか出来ると思うんだ。



「ネファーリア、この城に見覚えはあるかい?」



 そう、ここは未来じゃネファーリアの居城。流石に城自体は造りが違うと思うけど、壺の保管場所ぐらいの見当はつくはず。



「わたくしの時代では、流印の壺はとても神聖な物で厳重に管理してました。壺には古の時代より神々の力が封印されていると教わりました。ですのでこの時代でも厳重に管理されている可能性があると思います」


「そうか、その封印されている神々の力って言うのが竜族の魂の事なのかも知れない」


「た、確かに! 先生がこれからその壺に魂を移してそれが伝説になったんだよ! すげー!!」


「セレスティア様、竜眼でそれらしい部屋は見当たりませんか?」


「それなら既に見つけておるが、まずはどうやってここから抜け出すかじゃ」


「牢獄は魔力が発揮出来ない様に造られてます。遥か昔からそうだったのですね」


「あ〜も〜! なんとかならねぇのかよ! このクソ鉄格子!!」



 ガンッと乱暴に蹴るリラ。もう一度ガンッガンッと蹴り続ける。

 あれ? 今のもしかして……。



「リラ、全力で思いっきりやってみてくれないか?」


「え? 全力で? いいけど」



 そう言いながら目を閉じて深く呼吸をする。



「……よっしゃあ! いくぜぇぇぇぇ!!!!」



 ドゴォォォォォォン!!



「せ、せん……せい」


「うん、やっぱり」


「扉をぶち破りおった……」


「リラティナスさんの物理的破壊力がありましたね」


「魔力の類は使えないけど、物理攻撃ならなんとなく壊せるような気がしたんだ。じゃあリラならと思ってね」


「さっすがせんせー♡ ハグしようぜ♡」


「こらリラティナス! こんな所でハグなんてしてる場合じゃないじゃろうが! 壺を探しに行くんじゃ!」


「ちぇー。先生からご褒美もらおうとしたのにぃ」


「何がご褒美じゃ……ほれ、ここからまず地上を目指すからの。皆、妾について来い」


「あ、ちょっと待って」



 僕はセレスティア様に待ったをかける。

 みんなで行くのは得策じゃないと思う。ここはネファーリア一人で壺を取ってきてもらった方がいい。



「悪魔達がどんな警備体制を整えているのかは分からないけど、こんな牢獄を造るぐらいだからそこそこの体制はあると見て間違いない」



 なら、ネファーリア一人でまず行動して壺を入手して、その間僕達は別の所で悪魔達の注意を引く、ネファーリアの方に目が行かないようにしておいて、壺の入手後、合流して脱出がスムーズだと思う。


 僕の策をみんなに伝えた。



「素晴らしい……素晴らしいですアスト!!」


「敢えてネファーリア単身で、向かわせて妾達が注意を引く。悪魔どもは派手に暴れ回る我々の方に目が行くと言う訳なんじゃな。あぁ……見事なまでに完璧じゃ! 流石は妾の旦那様じゃ♡」


「先生は強いし、頭もいいし、料理は上手いし、優しいし、イケメンだし、本当に完璧じゃねーかよ♡ ギューってしてもいいか?♡」


「だからダメじゃと言っておるじゃろうが! 小娘が!」


「いいじゃねーかよ! だってあたしの先生なんだもん♡」


「聞き捨てならんのう! いつからお前のものになったんじゃ! 旦那様は妾の事を一番大事にしてくれてるのじゃ。旦那様の唇に触れたのはこの中で妾だけじゃからの♡」


「それは記憶を共有する為だろ! 別にやんなくても出来たはずなのに! ズルいんだよばあちゃんは!!」


「ちょっ、ちょっと二人ともこんな所で喧嘩はやめてくれ!」


「記憶の共有……あの時にセレスティア様は……。で、では……わたくしも……き、記憶のきょ、きょ、有を……。い、いえ!! いけません!! その様な背徳な気持ちでアストと……」



 僕と目が合い、真っ赤になった伸びて落ちそうな頬を両手で抱えながら、何かに照れて目を逸らす。

 何してるんだネファーリア……。



「みんな! とにかく今は作戦を遂行する事に注力してくれ! ネファーリア、いけるかい?」


「は、はい! ただ、万が一悪魔に見つかってしまった場合、烙印で支配されてしまいます。それだけが心配です……」


「大丈夫、必ず上手くいく! 君が悪魔と遭遇する事は絶対にないよ」


「はい! アストを信じます!」



 と、まあ……こんな僕達だけど、いざとなった時の団結力は無敵だからな。

 よし、それじゃあ作戦開始だ!



お読みいただきありがとうございます。

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