第二十七話 烙印 -Rainbell Side-
「ネファーリア! リラティナス!」
二人共どうしたの? 強敵だけどあたし達だけでも十分戦える相手なのに。
ガーゴイルは地面に倒れている二人をニヤニヤ笑った後、あたしの方に振り向いた。
まただ。またあいつの目が赤く光ったわ。
ストッ。
と言う着地する音が後ろから聞こえた。挟まれた状態で、どっちから仕掛けて来るのか分からない状況。前は視界で、後ろは魔力を感じてしっかりと警戒しないと。
前から歩いて来るガーゴイルが不思議そうな顔しながら、ブツブツ言ってるけど、何だろう。
「んん〜? こいつには〝烙印〟が出て来ねえな。何でだあ?」
こいつには? 烙印って何? 何の事を言ってるの?
ネファーリアとリラティナスにはあるって事?
そう言えば、印がないってさっきこいつら言ってたような気がするけど、それと関係あるのかな。
パッと見る限りじゃ、ネファーリアもリラティナスも何も変化は見当たらない。
《烙印とは、魔族を服従させる為に刻まれる悪魔にしか使えん特別な魔術じゃよ。ほれ、二人の左頬を見るんじゃ》
左頬?
「…………アザ?」
アザのようなものが見えた。二人どっちにも同じ三日月模様の真っ黒いアザ。
あれが烙印? じゃあ、今の二人はこいつらに服従させられてる状態って事?
そうだ、この事をアストさんに知らせないと。
あたしのその一瞬の気の緩みをガーゴイル達は見逃さなかった。こいつら一斉に攻撃を仕掛けて来たんだよ。
《レインベル!》
分かってますよセレスティア様。覚えたてだけど早速使ってみます。
「メエノルヴァアーディル」
自分の姿が一瞬だけ霧のように実体を持たなくさせる竜言語呪文。
「ぐへぁ!?」
「ぐぁぁ!? おいぃ!! 何処見てんだよぉ!!」
「うるせえ!! あいつは何処行った!?」
霧となって消えたあたしを狙って来たガーゴイル達はそのまま正面衝突。
ふぅ……何とか詠唱間に合った。
「奴隷の分際でクッソやろうがぁぁ…………おい! あそこだ!! あの人間の所だ!!」
あいつらが戯れてる間に、アストさんの横に到着。
烙印の事を話すと、流石アストさんだ。既に二人の異変に気づいてたみたいなんだよね。
洞察力も鋭いだなんて、凄すぎますよアストさん。
真剣に考えてるアストさんの横顔がイケメン過ぎて直視出来なくてやばいんだけど……。
《こらレインベル! 今は戦いに集中するんじゃ! 妾だって我慢しとるんじゃ! 妾だって! 妾だって!》
わ、分かりましたよ。もう、そんな子供みたいに怒んなくてもいいじゃないですか〜。
「悪魔は魔族や人間も奴隷にしてるんだな。そうか、じゃあ魔王ロズは悪魔の親玉って事か」
「人間も?」
「うん、ここに来る前に人間の女戦士がいたと思うけど、すぐに村に戻って行ったから、君は気づいていなかったかも知れないね。彼女の左頬にも三日月模様のアザがあったんだ」
「じゃあ、他の人間も奴隷にされてる可能性がありますね……」
「レインベル……ガーゴイルニ体、相手してくれるかい? あっちの二人のシードを一度君に全部渡す。あのアザを調べたいんだ」
「あ、は、はい!」
「大丈夫! 君なら負けはしないさ!」
あ、あたし……今アストさんにめちゃくちゃ期待されてる!?
セレスティア様見ました?
アストさんのあの顔……ほんと腰が砕けそうになっちゃいましたよ……。
あぁ……もうどうなってもいい……。
〝君なら、負けはしないさ!〟あぁ〜♡ 好きだぁ〜♡ 好きすぎるぅ〜♡
《ほれレインベル、さっさとガーゴイルを倒すんじゃよ! そして妾と代われ。なんなら今代わってもええんじゃぞ?》
嫌です。アストさんに期待されてるのはあたしなんです。
あの笑顔はあたしだけのもの。
セレスティア様でもこれだけは譲れません。
ネファーリアにも、リラティナスにも、誰にだって譲れない。
アストさんは〜アストさんはぁぁ〜。
「あたしだけのものだぁぁー!!!」
◆
-Ast Side-
ん? あたしだけのもの? ガーゴイル達をそんなに独り占めして戦いたかったのか?
何だかよく分からないけど、レインベル、上手くガーゴイル達を引きつけてくれてるし、良い感じ。
僕はこの間に倒れてる二人に近づく。
今レインベルには霊神術士と次元術士を渡してるんだけど、分析士だけは僕に残しといた。
竜族のみんなごめんよ、少しだけ調べさせてくれ。
直ぐにネファーリアとリラを分析。
魂の消失は感じないけど、これ以上は使わない方が良さそうだな。本当にごめん。
でもそのおかげで分かった。セレスティア様が言ってた通り二人は恐怖と言う形で支配されてたんだ。
支配者には絶対服従、そして恐怖と言う感情も見える。
ネファーリアやリラはガーゴイルに逆らう事が出来ないだけじゃなく、怖くて怯えてるんだ。
だから二人の様子がおかしかったのか。
問題はこの支配からどうやって解放するのか……だな。
短時間の分析でも何となく支配の方法は分かってる。セレスティア様は〝魔術〟と言った。
魔術と言うのは、魔力の組み合わせで出来ていて、例えば火属性魔術、【烈炎弾】なんかは、火の属性魔力と浮遊魔力の組み合わせで出来てるんだけど、この組み合わせを把握すれば魔術を解除する事が実は可能なんだ。
烙印、この魔術をなんとかもう一度見られれば……。
◆
-Rainbell Side-
「レインベル!」
遠くの方から、アストさんのあたしを呼ぶ声がした。
「こぉんのクソアマァァ!! 変な術を使いやがってぇぇ!」
「くたばれやぁぁぁ!! 大獄炎焦熱ォォォォ!!」
「わわわ!!!」
ちょっと余所見したら、そこを狙って来るのうざ過ぎ……。
最上位火属性魔術ね。よし、あれを利用しようかな。
巨大な燃え盛る火炎球があたしに向かって飛んできてる。
「竜紋吸霊刃!」
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥ。
掲げた竜紋剣に向かって燃える赤い風が吸い込まれて行く。
元々魔法剣技に属性魔力を吸収してその属性を武器に付与出来る吸霊刃と言う技があったんだけど、竜紋剣を使って進化させたバージョン。
竜紋吸霊刃は、吸収した魔術を即座に使用出来るって言う技。
このまま撃ち返してもよかったんだけど、あたしは新しい技を試してみたくて、一旦距離を置いた。
本当竜族になってから戦闘への欲求が凄いんだけど、でもこれのおかげで今回のような強敵とも恐れず戦えるんだよね。
「ハァあ!? な、何しやがったんだ!?」
「あの光る剣に吸い込まれちまったんじゃねえのか!?」
「はーいせいかーい、よく出来ましたー」
すばしっこいし、まずは一人だな。
次元術士か……魔法剣士以外の才能って今回初めてだけど、ちゃんと空間を繋げられるようになってる。
あぁアストさん……やっぱり凄い人だぁぁぁぁ。
《ええから、早よ攻めんか! 煩くて敵わん……》
膨大な魔力が要るけど、次元術で空間を繋いだまま、まず先制としてさっきの【大獄炎焦熱】を空間の中に放つ。
すると、一体のガーゴイルの目の前から大きな業火のような激しい炎の塊が現れ、すぐ命中。
「ギェヤァァァァァァァ!?」
「よし! トドメよ!!」
【大獄炎焦熱】の炎に包まれてる間に、また次元術で、今度は小さな空間をいくつも繋いでガーゴイルの周りに置いた。
「新技食らいなさい!! 竜紋追連閃!!」
目の前の空間を思い切り突いた。竜紋剣は途中で光に変わって分解され、ナイフのような光の刃と化す。
目で追う事が出来ないぐらい無数に飛び出すその刃が、四方八方、周りの空間から一斉にガーゴイルに襲いかかる。
「がは!? ぐげぇ!? おごぉ!? ぐぼぁ!? あぐぁ!?」
「はあぁぁぁ〜!!! これで終わりよ!!!」
最後の決めにあたし自身を相手の頭上にワープさせ、再び竜紋剣を両手に構え、一刀両断。
ズバァァァン!!!
ガーゴイル一体が力尽き地面に倒れた。竜眼でも生命エネルギー、魔力が無くなった事をしっかりと確認。よくやったぞレインベル。
「うんうん! まだまだやれる!」
もう一体も、このまま……って、あれ? そういやアストさんに呼び止められてた気がするんだけど……。
アストさん、何か呼んでましたっけ? そう思いながら顔を見てみる。
え、と……なんかアストさん、あたしに驚いてる? あ、もしかして成長したあたしに感動してる、とか?
だったら嬉しいんだけど、でも……あの顔は……違うような……違わないような……違う……ような。
「レ、レインベル。何だか随分と肉食になった……と言うか……あ、別にいいんだよ。凄く戦いに積極的になったよね。おかげで、リラの支配が解けたよ。レインベルのおかげだよ! ありがとう!」
ほんとに? よかった。
リラティナスのアザがすっかり無くなってる。
「そのままもう一体も頼めるかな?」
「勿論です!!」
さっきの技の件でちょっと引かれてるのかな……。でもありがとうって言って貰えたし……。
くぅぅぅぅぅぅ〜♡
「竜魂、全開だー♡」
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