第二十二話 砂、砂、砂。
ここからは、アストのお話です。
「う……うぅ……。ここ……は?」
砂……? 僕の体は砂に埋もれていた。砂が熱い。体を起こして辺りを見回すが、景色が一変してる。ゼーロットは? ヴェルグラやメアは?
あんな大爆発が起きたからなのか砂漠の様に辺りは砂ばかり。
幻竜神界の特徴的なクリスタルが一つも見当たらないし、
何もかもが粉々になって砂と化してしまったのだろうか?
「それにしても随分と変わったな。地形もそうだけど環境が変わるなんて」
と言うのも気温が高くて灼熱の暑さなんだ。
雲一つない空にギラギラ輝く太陽。汗が全身から滲み出てくる。
ここ……本当に砂漠なんじゃないか?
「きゃあぁぁぁぁー!」
場所の特定が出来ない中で、突然女性の悲鳴のような声が聞こえたんだけど、ここから直ぐ近くだったしどっちにしても放ってはおけなかったから、立ち上がって悲鳴が聞こえた方に向かって走った。
今聞こえたものが〝悲鳴〟だったなら、竜族の女性の悲鳴って事だよな。
にしては人間の様な声だな。と言う僕の予想は当たっていて、砂の山を二つ越えた所に魔物が人間を襲っている。
「サンドフィッシュか」
全部で十二体……戦闘経験がない彼女からしてみたら、本当に怖かっただろうな。直ぐに助け出してあげないと。
サモンシードで魔法剣士を召喚して魔物の相手を任せて、僕は女性を助け出す。
「あ、あな……たは? 光の剣士が急に……い、一体何処から……」
「大丈夫! 助けに来ました! 安心して下さい!」
「う、う、うしろ!!」
三体のサンドフィッシュが僕の背後に迫っていた。
もちろん既に気づいている。でも僕は一切何の対処もしない。
ザシュ!! ズバァァーン!!
三体のサンドフィッシュは、僕に触れる事なく魔法剣士の一振りで消滅した。
女性に肩を貸してゆっくりと立たせてあげると、また座り込んでしまって僕に向かって土下座をするんだ。
「……あぁ……そんなまさか……勇者様……勇者様……」
「勇者……確かに勇者でしたけど、今は違いますよ。何で僕が勇者だと知ってるんですか?」
女性は顔を上げる事なく答えた。
「この世界が闇に包まれ、人々の願いが神界へと届いた時〝女神ユシア〟様によって勇者が遣わされる。勇者は光輝く魔法で忽ち闇を浄化し、世界を希望へと導く存在。貴方こそまさしくその勇者」
「女神……ユシア……?」
偶然なのかな? 天国らしき場所で出会った少女を僕はユシアと呼んだ。
確かに神様だと思ったけど、あのユシア?
女性は泣きながら何度も勇者様と拝み倒す。
どうしていいか分からないよこの状況。困ったなぁ……。
「僕には特別な力がありますけど、女神様に遣わされてここに来た訳じゃないんです。なんかまるでゼクトリアース物語みたいな話ですよね。ははは」
「あぁゼクトリアース様……何卒、何卒我々をお救い下さいませ」
ん? ゼクトリアース様?
「あ、違う違う、違いますよ! 僕はゼクトリアースじゃなくて! アス」
「ルーリア!! 無事か!?」
と、この女性を呼ぶ男の声が背後から届けられる。
仲間が来てくれたんだな。彼も無事でよかった。
女性は抱きしめられながらも、震えた手で指を差し女神ユシア様から遣わされた勇者様と僕の事を紹介。
そして今度は二人一緒に土下座をして、噛み締める様に勇者様と何度も拝まれると、余りにも心が込められた祈りに言葉を詰まらせてしまった。
僕の名前はアスト、そう訂正したかったんだけど出来なかったんだ。
「ゼクトリアース様! 是非うちの長老に会って下さいませんか? 何卒……何卒……どうかお願いします!」
「分かりました! 分かりました! 分かりましたからもう立って下さい! こんな所にいつまでもいたら、体壊しますから! 長老様には会いますので」
「「ありがとうございます!」」
ふう……。と言う訳で僕はルーリアさん達の住む村まで案内される事になった。
どう見てもこの二人、竜族じゃないんだよな。やっぱり人間なんじゃないかな。
と言う事ならここは人間界? そうだよな、魔物もいたし。
うぅ……すっぽり抜けている。あの大爆発した直後の記憶が中々思い出せないんだ。
確か、爆発する瞬間が丁度ゼーロットの中の魂を全部取り込み終わったところで、僕の肉体もその時抜け殻となった瞬間でもあった。
一秒にも満たない本当に一瞬の内に、僕は肉体を取り戻した……ぐらいまでの記憶は薄っすらと残ってるぐらい。
そっか、自分の体を取り戻せたんだ。
それで気づいたら砂漠みたいな所で……幻竜神界じゃなさそうだけど人間界?
だったとしたらそれはそれで疑問が残るんだよな。
僕は以前、勇者としてゼノス達と魔王ザングレス討伐に世界を旅していた。
その中で砂漠の国にも行ったんだ。
もし人間界に戻って来ていたんだとしたら、ここはきっとデルメシアの可能性がある。
だけど疑問があってルーリアさん達の着ている衣服、民族衣装っぽい服なんだよな。いや、別にデルメシアを端から端まで知り尽くしてる訳じゃないし、こんな民族が住んでいたのかも知れないんだけど、前に広がる光景を目にしたらさらに頭の中が疑問符だらけ。
「アレミナ!? ここが!?」
ついつい大声で口から飛び出してしまった。
ルーリアさん達はこの村の人らしいんだけど、アレミナってもっと大きな街だったはず。記憶の中だけど、こんな小さな村みたいな規模じゃなかった事、それは間違いない。
そこで辿り着いた僕なりの答え。
僕は今、過去の人間界にいる。




