第十七話 レベルゼロ、再び -Zenos Party Side-
Zenos Party Sideは三人称視点で書いてます。
砂漠の国デルメシア、とあるオアシスにて。
ゼノス達は小さな村から大きな街まで回り、人々に訴えかけてきた。
〝ユリウスは世界を騙している〟〝みんなに隠してる事がある〟と声を上げる。
しかし誰一人として耳を傾けてくれる者はいなかった。
今はまだ信じられないかもしれない。
この活動を続けていれば、真実に気づく者が必ず現れる。
「私はそう信じてる」
ゼノスが励ます様に皆に伝えた。
「だがよ、流石にそろそろ一人ぐらいは俺達の事、信じて欲しいよな」
「地道に行きましょう。さあ、次の国はいよいよ浮遊大陸にあるハイグランドよ」
「空の国と言われている世界七大国の一つ、ハイグランドは、他の国と違って閉ざされた国。ユリウスの息がまだ届いていない可能性がありますねぇ」
「うむ。しかしどうやって見つけるかだ」
ハイグランド国は空中浮遊大陸にある空の国。
同じ所に留まらず、空を移動していて地上の国と交流もなく、閉ざされた国である為、入国手段もよく分かっていないところがある。
ただ、世界七大国であるラムリース、エスハイム、イヴァーク、ヒョナイカン、デルメシア、ハイグランド、ウォルの国王達は七大国家サミットで一堂に会するその場所が、ハイグランドである為、王に聞けば分かるだろう。
と、ゼノスが皆に話す。
「無理じゃねぇか? 地上の国の王はもう英雄王ユリウス様だしよ」
「まず王様に話を聞く以前に、謁見の手続きさえまともに出来ないでしょうね。周りの兵達に取り押さえられそう」
「……となると、先にウォル国に行くべきか」
「海の国ウォル。ハイグランドを除けばこの国が七大国の 最後の国ね」
「丁度この暑さにも飽きたところですし、ねぇ? クウォン」
「へへへ! だな! ウォルへ行こうぜ!」
次の目的地が決まり、ゼノス達は海の国ウォルを目指す為デルメシアから移動しようとした時、ゼノス達に忍び寄る影が。
そんな事は露知らず、皆暑さを忘れて歩きながら他愛無い話で盛り上がる。
その話題はリミアはアストの事をどう思ってるかだった。
キッカケは〝最近のリミアはよく話してくれますよねぇ〟と言うヴァールの一言だ。
「やっと俺達にも心を開いてくれたんだよな?」
「べ、べつに改まって言う事じゃないでしょ……!」
「おめぇはアストの事になると、よく喋るんだよな〜」
ニヤニヤとした顔でリミアの視界に入るクウォン。
その顔を手のひらで押しのけたリミアは〝うるさい〟と一言。
「まあでもおめぇが惚れるのもしゃーねーか! アストは男から見ても良い男だしな!」
「一度裏切った我々を受け入れるだけの器の広さ、皆をまとめるだけの技量。私が今リーダーをやってはいるが、アスト程人の上に立つ人間はいまい」
「的確に指示するだけじゃなく、その人のレベルに合わせて指導する力にも長けてますし、アストの優しさは魔族をも魅了してしまうのでしょうねぇ」
「それって、ネファーリア達の事を言ってるの?」
「さあ……どうでしょうかねぇ」
「な、なによ! もうヴァールまで!」
「そういやネファーリアがアストを見る時の目って、俺らを見る時とはちょっと違うよな? 女の目っつうか」
「え……?」
「確かに! あれはきっと恋をしてる目……ですねぇ」
「…………恋」
リミアが俯きながらボソッと言葉を落とす。
「魔族って言っても人型タイプと姿を変えられるし、アストがネファーリアに惚れても、全然不思議じゃねーよな。ネファーリアの人型って人間界でも結構な美人だぜ? 確かセシルって元カノと似てるんだよな」
「そ、そ……んな」
リミアの瞳に薄らと涙が滲み出て来るところを、クウォンとヴァールは見逃さなかった。
「ずっと一緒に旅を続けて来たみたいですし。ほら、今も幻竜神界でアストと一緒ですから……ねぇ」
「だがよリミア、まだ諦めんじゃねーぞ? まだチャンスはあんだからよ」
そのクウォンの言葉に、今まで絶望して萎れていたリミアが、まるで水を得た魚のように感情が昂って〝本当に?〟〝私にチャンスはあるの?〟と言う言葉を何度も何度も繰り返しクウォンに問いかけた。いや今のリミアの行為は問い詰めだ。
クウォンの首を両手でギュッと絞めて、揺らす。
「ねぇ! 答えてよ!? ほんとにまだチャンスはあるの? ねぇってば! クウォン!」
「ぐ、ぐびが! じじじまっで……」
「……あ!? ご、ごごめんなさいっ!!」
パッと両手を離して、何度も頭を下げるリミア。
「げほっ……げほげほ……。お……めぇ、わざと……やっただろ……」
「ふふふ。そりゃあ、首が絞まってたら答えられないですからねぇ。クウォン、もうリミアをからかうのはこのぐらいにしておきましょう」
「……だな。変な事言ったら殺されそうだしよ」
一頻りのやり取りが終わった頃、先頭を歩くゼノスの歩みが止まる。
その後、三人も足が止まった。
彼らの目の前には、十数名の騎士達とユリウスの姿が映っていたのだった。
騎士達は直ぐ様、ゼノス達を取り囲った。
「くっくっく。こんな砂漠のど真ん中で、世界で指名手配されてる身であると言うのに、まったく……恋の話でよく盛り上がれるな」
「へ! 久しぶりだなユリウス! おめぇの噂は耳にタコができるぐれぇ聞いてんぜ! えらく出世したもんだよなー!」
「貴様らとはデキが違うんだよ。そんな事より自分の心配をした方がいいんじゃないか?」
「ユリウス、貴方忘れたんですか? 我々にはアストから与えられたシードがあると言う事を……ねぇ」
ヴァールが放ったその言葉を聞いて大声で笑うユリウスに、ヴァールはもちろん、他の仲間も何故そんなに笑っているのかその意味が分からなかった。
「そうかそうか。アストから力をもらっていたんだな。分かった。じゃあ遠慮なく使ってくれ。その力を……くっくっくっくっ!」
「な、なんだこいつ……」
違和感を感じずにはいられなかった。しかし自分達にはアストから与えられたシードがある。その自信は揺らがなかった。
「よーくその目で見とけよ!」
クウォンが魔力を放出し、拳聖のシードをその身に宿す。
「あ……あれ?」
「くっくっく。どうした? 早く見せてみろよ」
「くそ……なんだ、魔力が発揮出来ねぇ……」
そしてその現象はゼノス、ヴァール、リミアも同じだった。皆、シードを宿す以前に魔力を扱う事が出来ないでいた。
全員、一気に焦りの色が顔から表れる。
「おいおい、さっきまでの威勢の良さは何処へ行ったんだぁ? くっくっくっく! あーっはっはっは!」
「なるほど……ユリウス、お前が何かしたのだな?」
「私達に何をしたの!?」
「まあそう焦るな。ちゃんと説明してやる」
そう言いながらユリウスは周りにいる騎士、王宮守護部隊に指示を出す。
すると、皆腰に下げていた剣を抜いた。
「俺が世界中の国から優秀な者だけを集めた世界最強の騎士達だ。こいつらの剣には、ある特殊な術式がかけられていてな、貴様らの能力を無力化出来る力があるんだよ」
「な、なんですって!? 力を無力化!?」
「だから今の貴様らには、アストの力は使えないんだよ。聞き覚えある言葉で言ってやろうか?」
ユリウスは一旦目を閉じて、この時を待っていたと言わんばかりに口元を大きく歪めながらベタついた笑みをゼノス達に見せてこう言ったのだった。
「貴様らは、戦闘能力皆無だ」
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