第十六話 急げ!!
「ふ、ふん! いくら貴方でもお仲間の魂だけを見つけて取り出すなんて事、不可能ですよ!」
ヴェルグラがお喋りなおかげで、ゼーロットの中には今まで喰らった者の魂が無傷で残ってると言う事が分かった。
そう言う意味だと、ヴェルグラに救われたと言ってもいいだろう。
だから言ってやった。
「ありがとな、ヴェルグラ。教えてくれて」
「ぐぬぬ……! 完全に救えると思ってるようですねぇ!」
当たり前だ。
「あぁ。完全に救ってみせるさ」
「そうですか! やれるものならやってみな……」
「させるかぁ!」
ゼーロットに向けて魔力を送ろうと、動作するところを見逃さなかった。もう二度とミスはしないぞ。
僕はヴェルグラに飛んでいき、闇のオーラで強化された渾身の一撃を顔面に炸裂させた。
「あごぁびゅ!?」
バシュュュンッ!!!
ヴェルグラの頭が弾け飛んだ。ピクピクと体が痙攣した後、砂の様にサラサラと地面に散らばった。
ん? こいつ……。
「まさか……」
「そう、偽物だよ。流石だね」
そう言いながらメアが攻撃を仕掛けて来る。
周りを取り囲んでいたシャドウ達が集まって、一つの大きなシャドウになった。
メアと巨大シャドウに挟まれ前後から同時に突っ込んで来たが。
お前も相当レベルが上がったと思う。ただ残念だったな。
極大励起した今の僕には涼風も同然。その攻撃に何かをしようと考えるまでもない。
メアの攻撃はまともに命中する。しかし闇のオーラを破る事は出来ず逆にメアやシャドウがダメージを負った。
「痛い……とてつもなく痛いよ。その纏ってるオーラに触れただけで、ここまでダメージを受けるなんて……。キミのようなただの人間に、どうしてそんな力が」
「相変わらず、よく喋るな」
と、メアに気を取られてる間に、ゼーロットが一回り大きく膨れ上がった。
いけない。メアなんて今はどうでもいいんだ。先にこっちをなんとかしないと。
魔力を高めて、体からゼーロットに向けて魔力で出来た線を繋いだ。
魔力の線は僕の体からいくつも伸びてその全てがゼーロットと繋がった。
「ギィィヤァァァァァァァァァァ!!!!!」
そうか、まだ痛みの感覚があるんだな。
魔力の線は悪魔の鎧を貫通し、僕の肉体に突き刺さった。
あんなに巨大な怪物でも本体は僕の体。その中に魂があるんだ。
「魂を取り出すつもりだね。無駄だよアスト。どれだけの数の魂が彼の中にあると思うんだい? その中からネファーリア達を探す前に、ドカンッ……さ」
ヴェルグラもメアも何を勘違いしてるんだよ。
「誰がネファーリア達を探すだって?」
「なに? …………まさかキミは……!?」
「彼女達だけじゃない。みんな救うのさ」
青白く光る魔力の線の中を、光った丸い塊が次々と流れて僕の体に入って来る。
そう、この光る塊一つ一つが魂。ゼーロットの中にある全ての魂を取り込むんだ。
みんな見捨てない。
だが、ゼーロットもただそこに立ってるだけじゃないのは分かってる。
その間も体はどんどんと膨れ上がり、いつ爆発してもおかしくない状態。
爆発するのが先か、魂を全て取り込むのが先か、と言ったようなそんな状況で、敵わないと分かっていても取り込ませまいと、邪魔をしてくるメアに少し苛立ちを覚えるが、相手にする時間はないんだよ。
爆発すればいくら僕でも無事では済まないし、ここにいる全てが幻竜神界ごと消し飛んでしまう。
だから急ぐんだ。そう思っていた矢先にゼーロットの魔力が大きく増大した。
なんで急に……。
「そうか! 魂が魔力に変わっていってるんだ! まずい! 早く魂を取り込まないと!!」
魔力が大きく増大したのは、魂が次々と魔力へと変わってるからなんだ。
だが、誰の魂かまでは分からない。もしかしたらネファーリア達の魂かも知れない。
くそ、ダメだもたもたしてられない。
僕はどうなってもいい。どうなってもいいから、みんなの魂を無事に救い出したい。
ネファーリア、リラ、レインベル、その中にいるセレスティア様。彼女達だけじゃない。ゼーロットに殺され魂を喰われた全ての竜族を救いたい。
誰かの命の為にこの命を捧げる。そしてその誰かの命が救われるなら、僕も救われるんだ。
心からそう思った。それは祈りだったのかも知れない。
闇のオーラに包まれた僕は、その纏ってるオーラの変化に気づいた。
憎しみや怒りは少しずつ消えた。いや、消えたんじゃなく愛や喜びに裏返った感覚がする。コインの表と裏の様に。
ある瞬間。僕は極大励起の限界レベルを超えた。
光のオーラが僕の体をキラキラと纏わりついて、さらに力が溢れて来る感覚が全身で感じる。
これが、これこそが〝光の極大励起〟だった。
この世で一番強いエネルギー、光と闇。その内の光のエネルギーを使い熟せる状態。
瞳を閉じイメージする。魔力の線を伝い、僕の体へと入って来る魂。どんどんと早く流れる。
ずっと邪魔をしてきたメアも、僕の変化と更に増した力に近寄る事さえ出来なくなってしまっただけじゃなく、言葉も出て来なくなってしまっていた。
「グワアァァァァァァァァァァァァァーーー!!!!!!!!」
な、なに……。
ゼーロットの爆発エネルギーが、急加速で大きくなっていく。
魂が魔力に変わるスピードの上昇も急に速くなった。おかしい。ゼーロットが自分で何かしたのか?
いや、ゼーロットには何も出来ない。そんな能力はないはずだ。
これは外部からのキッカケだ。それ以外に説明しようがない。
誰だ? メアがやったとは思えないし、ヴェルグラか?
あいつはダミーだったし、本体が何処かにいるのか……。
幻竜神界中の魔力を探ろうと、分析士のシードを……そうか極大励起中は導師の力を併用出来ないんだった。
「……いや、出来る。分析士の能力が使える!!」
もしかして光の極大励起状態なら導師の能力が使えるのか? この二つの大きな力を僕は使い熟せる状態に今あるんだ。
そう思うだけでさらに希望が出て来る。今の僕は何でも出来る。どんな困難な状況でも乗り越えられる。
その自信が、またさらに光のオーラを強くする。
分析士で幻竜神界全体をスキャンしてみた。
ヴェルグラの魔力は感じなかった。と、思ってたら別の魔力の反応を拾ったんだ。
とても大きな魔力。ヴェルグラやメアなんかよりも、もっと強大。……この魔力って……似てる。
「この魔力は…………」
フッとゼーロットの頭上に現れた魔族がいた。
二本のツノを持ち、背中には四枚の黒い翼。蛇の様な伸びた尻尾、そして紫色したウェーブヘア。
「セシル……」
ゼーロットに魔力を送っていたのはセシルだった。
僕とは何も喋らず、それどころか顔も合わせない。
ゼーロットを爆発させる為だけに集中してるみたいだった。
セシル、僕は君とは戦いたくはない。傷つけたくはないんだ。だけど、だからと言ってこのまま見過ごす訳にはいかない。
「セシル!! 僕は君を放っておく訳にはいかないんだ!!」
「アスト……もう貴方は私の知ってるアストじゃなくなったの。言ったでしょ? 貴方は私の敵……消えなさいアスト。あは……あはは……あはははははははははははは!」
狂気に満ちたような顔で狂った様に笑いながら、セシルはゼーロットを爆発させた。
セシルの豹変した顔をこの瞳に映し、甲高い笑い声をこの耳で聞きながら、周りの景色が真っ白になっていく。
そんなギリギリの状態で、ゼーロットの中に入っていた魂が全て僕の中に入った事を確認した。
直後、ゼーロットが眩しく光を放ちながら爆発エネルギーが、まるでスローモーションのようにゆっくりと広がっていく。
全てが消えてなくなる。
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