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第十五話 そしてループ④ -Tanis Side-



 突然私の前に現れたのは兎を思わせる様な容姿を持つ魔族ヴェルグラだった。

 アーキノフと勇者システムを使って勇者の能力を吸い取るみたいな事を言ってた魔族よね。



「くっふっふ。実は私、今幻竜神界にいるんですよ」


「幻竜神界……」



 って言ったら人間界、魔界の更に上の次元にある竜族が住む世界、確かそれが幻竜神界だったはず。

 こいつ、何を言ってるの……。

 幻竜神界にいるって今ここにいるじゃない。

 そもそも私達なんかが存在出来る世界じゃないのよ。

 色々矛盾だらけでそれを訂正つっこむ気にもなれないわ。



「まっ、フェアリーごときに理解出来る話ではありませんから、簡単に話しておきましょうか。この私、そして今幻竜神界にいる私は……偽物ダミーなのですよ。くっふっふ」


「ダミー?」


「コピーを創造する能力に長けていましてね。ザングレスのダミーを作ったのも、実はこの私なのですよ」


「本当にそのダミーの貴方が幻竜神界に存在出来たとして、そこで一体何をしてる訳? 貴方の目的は魔王になって魔界の支配者になる事でしょ?」



 また変な笑い方をしながら、チッチッチと口を鳴らし、指を振る。



「もうその夢叶っちゃったんです。ザングレスの領域を奪い取り、アーキノフ殿が魔界の支配者となられましたが、それは表上の話で領域を持ってるのは私なんです」



 領域の力を得る事が出来るのは魔族のみ。

 つまり、表上支配者として君臨してるのはアーキノフで、実際に領域の力の恩恵を受けてるのはヴェルグラって訳。



「ここで貴方に質問があります。敵である貴方に情報を話す時って、どう言う時だと思いますか?」


「……何が言いたいのよ」


「つまり貴方は……この部屋から生きて出られないって事です!」



 そうヴェルグラが話し終えるまでに、私は地面に倒れていた。

 全身の骨が砕けてるのが分かるぐらい、手も足も、顔も動かせなくなってた。

 痛い。でもその痛みよりも強烈な眠気に襲われ、勝手に瞼が下りてくる。


 話し声が聞こえる。ちゃんとは聞き取れない。

 でもその声はフュリンだった。助けに来てくれたのね。


 ダメ……もう限界。私の意識はそこで閉じた。






 そして五ループ目。再び医務室から目覚める。

 私は記憶を失って時間が巻き戻ってしまった。

 これまでの事をフュリンに説明を受ける。フュリンが最後に見たのは、時間が戻る直前、大きなモニターがある部屋でヴェルグラが私を殺してたらしい。



《ヴェルグラが何であんたんとこに現れて、殺したんかやな……》


「あの部屋に何かあるのかも知れないわね」



 時間が限られてる事もあって、私達は直ぐに大きなモニターのある部屋へと急いだ。

 色々調べてると、魔界疫病、勇者システム、大勇者計画の項目の下に空白が選択できる箇所を発見した。



《なんやこれ……種族認証?》



 ページを進めて行くと〝進化モデル【エルフ】〟と言うページが出て来たの。

 二人で考えた結果、いろんな事実が分かったんだけど、フェアリーには複数の進化の道があってエルフはその内の一つなんだって。

 一番安全に、そして能力上昇も大きいのがエルフだって書いてあった。



「適合者のみが進化出来るって……事は、全てのフェアリーが進化出来るとは限らないのね」


《せやな。適合率が六十五を下回ったら進化せん方がええかもな》



 と、その時。光の柱が現れたと思ったらそこからヴェルグラが姿を見せた。

 フュリンの言った通りにこの部屋に現れたわね。



「おやおや、貴方達こんなところで何をしてるのかと思えば、まさかその情報にアクセス出来る者がまだいたんですね。くっふっふ」



 ですが、と言った瞬間ヴェルグラは目の前だった。

 魔力の衝撃波で私達は部屋の壁へと吹き飛んで、叩きつけられる。



「あ……ぁ」


《く……そ……アストのシードが……あったら……》


「あ、そうそう貴方達にお伝えしておかなければいけない事があります。くっふっふ」


《……なんやねん》


「貴方達はもう、アストさんやユリウスさんのパートナーじゃなくなりました。ここに来た時点で魂の契約が解除となったんですよ」


「そんなはずは……」



 魂の契約は死ぬまで解除するなんて出来ない……はず。

 あぁ……そうよね。このシステムってこいつらが考えたんだった。

 それじゃ……今ユリウスは勇者から解放されたって事ね。

 私と無理やり契約して、能力が低下しちゃってたから、元の力を取り戻したなら良かったわ。



「残念ですがね、一匹も進化はさせませんよ。貴方達は大勇者を誕生させる為に必要なんですからね。大勇者、余り好きじゃないネーミングなんですが……大勇者の為の犠牲になってもらいますよ」


《タニス! こっちや! 逃げるで!!》


「くっふっふ。逃げられる訳ないでしょう?」



 私達は全力でその場から去ったんだけど、ヴェルグラのスピードは尋常じゃなかった。

 軽く飛び越えて回り込まれてしまった。そして青白く光る剣で私達は真っ二つ。

 フュリンの苦しい表情を目にしながら、そこで時間が巻き戻る。


 その後、六ループ目、七ループ目とループを重ねる。

 どのループでもヴェルグラが私達の前に必ず現れて、殺される。

 抵抗する術なんてない。元々フェアリーに戦闘能力なんてないし、魔力を振り絞って逃げるしか手段はなかった。

 だから私達が出した答えは、ヴェルグラが現れる時間までにエルフに進化する事。


 エルフに進化する為に何度も何度もループを重ねる。

 適合率が八十六パーセントのフュリンなら進化出来るはず。

 だけど、簡単にはいかなかった。進化モデルがズラーっと並べられてた大きな部屋で、実際の進化が行えるんだけど八十六パーセントのフュリンでも進化プロセスの途中で上手くいかなくて中断されたり、上手くいってる時に限ってヴェルグラが邪魔をしてくるの。


 大勇者を誕生させるにはここにいる全てのフェアリーのセティスが必要。

 出来るだけ一人でも多くのフェアリーを犠牲にしたいはず。

 なのにヴェルグラは私達を躊躇いなく殺した。

 と言う事は私達フェアリーが死んでも、大勇者を誕生させられるって思うべきね。


 大勇者の誕生に、フェアリーの生死は関係ないのよ。


 丁度三十ループしたぐらいの時、この進化モデルを作ったのは〝ビネル様〟だと言う事が分かった。

 私達フェアリーの初代長老で、フュリンの祖父に当たる妖精ヒト

 ある時、ビネル様が忽然と姿を消す事件があったんだけど、アーキノフが研究所ここへ連れて来たってヴェルグラが漏らした。


 進化モデルがどうして、あんな鉄の人形みたいなのかと言うとフェアリーの進化を研究する為のカムフラージュだったらしい。

 まあそれもバレちゃったみたいだけど、バレたのは資料だけで肝心な何処で、どうやってその進化をするのかはヴェルグラは勿論、アーキノフも分かってなかったの。


 そんなこんなで、私達はもう一生ループから抜け出せないんじゃないかってぐらいループを重ねて、ついに五百三十七回目に突入した時だった。

 今回のループで、なんとヴェルグラがやって来る前にエルフへの進化処理を終えられる事が出来たの。

 〝進化プロセス完了〟と、光る窓にメッセージが浮かび上がった。



《よ、よっしゃ!! タニス見て! 進化プロセス完了やって!! あたいの姿変わった?》


「……いえ、姿どころか何も変わったところはないわね」



 今のところ、これまでのフュリンと何一つ変わったところは見当たらなかった。

 そしてヴェルグラのご登場。だけど今回は今までとは違うんだから。



「今回は負けないわよ! さあフュリン!」


《せやで!! 今回のあたいはちゃうんやで!!》


「今回? 何を訳の分からない事を。くっふっふ」



 徐ろにフュリンがヴェルグラの懐目掛けて攻撃しに行ったけど、ダメ……全くダメージを受けてない。

 虫の様に弾かれて、フュリン……起き上がれなくなっちゃった。



《な、なんでなんやぁ〜!? 》



エピソードⅡ支配誕生編では、アストのストーリー、ユリウスとゼノス達のストーリー、フュリンのストーリーの三本柱でやっていこうと思ってます。


面白い、気になると思っていただけた方、ブックマーク、いいね、よろしければ評価の方もいただければ大変嬉しいです。


お読みいただきましてありがとうございました!

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