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第十三話 そしてループ② -Tanis Side-


 そう、私達は魔物をベースにして魔王ザングレスの魔力で生み出された生物。

 これで三回目になるけど、何度見ても絶望しか感じなかった。

 悲しくて、辛くて、自分の中に醜い魔物の血が入ってるって考えただけで涙が出て来そう。いえ、余りにもショックな時って涙も流れないのね。

 フュリンも相当ショックを受けてるわ。私は三回全く同じ顔を見てるから、その顔を見てまたさらにショックを受けてしまった。


 フュリンは無言のまま最後の大勇者計画にページを変える。

 ファイナルステージと文字が浮かび上がった。



《全てのフェアリーとリンクして、大勇者を生み出す》



 繋がれたフェアリーはセティスを無くし消滅する。

 そう、私達は大勇者と呼ばれる者とリンクして魔力を送った後はみんな消えてなくなるって事。


 私もフュリンも、他のみんなも、犠牲になって大勇者を誕生させる。

 その大勇者の力は導師にも匹敵するらしい。



「あかん……こんなん計画実行したら、あたいらみんな消えてなくなるやん。止めなあかん!」


《ダメ。止めたらまた時間が戻ってしまうの》


「止め方が悪かってん。待って、あたいに良い考えがある!」


《あ、ちょっとフュリン!? ダメなの!》



 ダメよフュリン。勝手に行動しないで。

 研究所からまた収容所に戻って来て、仲間の所に向かうつもりなのね。

 ここから最初のパターンのルートを進んでる。



《フュリン、もしかして仲間を説得しようとしてるのね? ダメなの! 一回目にそれやってループに入ったから》


「説得? まあそれも考えとったけどちゃうねん、みんなでここから脱走するねん!」


《脱走? だけど無理だと思うわ。ここと研究所以外は何処にも行けないのよ。言ったでしょ? 星からどうやって出るの? 仮に出られたとしても行く宛なんて……》


「タニス、あんた忘れたんかいな! あたいらにはガイドって能力があるんやで! 星から出て未知の場所であっても迷う事はないんやで!」



 そう、私達フェアリーは初めて訪れる場所であっても、地名とかその土地の環境とかを把握出来る能力があるの。

 だからこの星から出られたら、何とかなるとは思う。

 だけど、ここにいるみんなを説得してみんなで脱走なんて無理なのよ。



《話したでしょう? 他のみんなはずっと同じ事しか言わないし、同じ行動しか出来ないのよ》



 って私が話してる最中でもフュリンの歩みは止まらない。

 気がついたらワープする部屋の前にいたの。

 研究所に戻る気なのかしら?



「研究所って言うぐらいやし、いくら無人言うても、外から行き来してたはずやねん。せやからここのどっかに……」


《これまでのループの中で、勿論研究所は調べ尽くしてる。だけどそれらしい部屋は見つからなかったわ》



 と、一つ一つ調べた内容を思い出していく。

 うん……やっぱり星の外に出られるような部屋なんかはないわ。



《他の部屋はほとんどが鉄の人形が置かれてる倉庫のような部屋ばかりだし…………》



 鉄の人形……。



《もしかして!》


「鉄の人形や! それ調べてみよ!」



 この研究所には鉄で出来た人間ぐらいのサイズの人形が数え切れないぐらいいっぱい置かれてあるの。

 透明なガラスのような円柱のカプセルに入って立ってる。

 今までのループは計画を止めないとって動いて、止めきれずに実行されたり、二回目は見事に止められたのに時間が戻っちゃったから、今回のループはまた違うルートを進んでる。


 でもこの鉄の人形と、星を脱出する事とどう繋がるのか想像も出来なかった。

 私達は人形が置かれてる近くの部屋へ向かった。

 人形が入ったカプセルは等間隔にキチッと並べられている。ここって無人なのに埃とかもないし、少し前までは誰かいたのかしら?


 フュリンは一つ一つカプセルの前に立ってまじまじと見る。


「何の為に作られたんやろ……見た感じ、頑丈そうやし戦闘兵器っぽい……」


《戦闘兵器……そんなものがどうしてフェアリー研究所なんかに……?》



 私達は次々と他の部屋にも入って色々と調べる。

 何処も似たような部屋で等間隔に鉄の人形が透明な円柱のカプセルに入って置かれてあるだけでこれと言って、特に何も無かったの。

 だけど、今入ったここは他の部屋とは違ってた。



「な、なんやここ……」



 いえ、もう部屋じゃないわね。広大過ぎて奥の壁が見えないぐらい。

 そこに鉄の人形がこれまでと同じで等間隔に並べられてあったんだけど、ここのはカプセルには入ってなかった。


 びっくりしたのはその数。

 この広い空間に、所狭しと並べられていたのよ。

 今まで見て来た部屋はどの部屋も六体しか置かれてなかったけど、数えるのをやめたくなるぐらい膨大な数がならべられてたの。


 そしてもう一つ、他で見て来たものとは違う点を見つけた。

 見つけたのはフュリンなんだけど、鉄の人形の置かれてる足下に銀のプレートが地面に埋め込まれてたの。

 よく見るとプレートの中に文字が書かれてある。



「なんや……なんて書いてるか分からん。もしかして魔界語?」


《もしそうなら、私達じゃ読めないわね》


「タニスも中から出て来て、手分けして調べよ」



 私達はまた一つ一つ見ていきながら、やがてこの広大な部屋の真ん中辺りまでやって来たの。

 そしたら〝模様の床〟を見つけたのよ。フュリンは躊躇いもせずにその床に乗って魔力を送る。

 すると突然、ちょうど視界辺りに光る窓が現れたんだけど、これってモニターよね? 



「進化モデル……適合率……なんやろこれ」


《フュリン! あそこを見て!》



 フュリンが光る窓を眺めてると、パッとある一体の鉄の人形にスポットライトが当たったの。

 なんで? あそこに行けと言う事?



「ちょっと行ってみよ!」



 私達はその人形の所まで走った。

 あのスポットライトも遥か上空から照らしてるんだろうけど、天井も見えないし……ほんと広すぎるわね。

 スポットライトに照らされた人形の前までやって来た。



「タ、タタニス見て!」



 と、フュリンが地面のプレートを指差した。

 そうね、プレートが青白く光ってるわ。

 でもそんなに驚くような事? 私はそれよりもどうしてこの一体にスポットライトが当たってるのかが謎……。


 そう思ってたらフュリンがどうしてそんなに驚いてたかが分かったのよ。

 

 その青白く光った文字が読めるようになってたの。


 〝フュリン〟


 プレートには確かにフュリンの名前が書かれてあったのよ。



《ここにどうしてあなたの名前が書かれてるの……》


「もしかして……この人形があたいって事?」



 フュリンからそう聞いて、改めて目の前の人形を見る。

 別に他の人形と変わらないし、見た目は一緒。

 この人形の足下にフュリンの名前が入ったプレート……。

 と言う事は私も……?



「あ、タニス! 何処行くねんな!?」



 試したい事があった。フュリンはあの床で光る窓を見てたらスポットライトが当たった。

 私も同じ事をすれば、別の人形にスポットライトが当たるはず。

 それで謎が解決した訳じゃない。どうして名前がプレートに浮かび上がるのか、その人形と何の関係があるのか、謎は深まるばかりだけど。


 と、私も模様のある床に魔力を送ってみたの。

 すると…………。



《………………何も起きないわね》



 スポットライトどころか、光る窓さえも現れない。

 どうして? そんな疑問もフュリンの一言で納得。

 そう、私は今意識体だったわ。だからフュリンと入れ替えれば……元々は私の体だしね。


 私達は入れ替わった。そしてもう一度床に魔力を送ってみたの。



「ダメ……反応がない。どうして……?」



 意識体となったフュリンが中から出て来て、身振り手振り私に教えるんだけど。



「魔力を送るだけでしょ? やってるわよ!」


《ちょっとどいて、こうするんやって》



 フュリンが床に乗って魔力を送ると光る窓が現れた。

 え? 今フュリンは意識体で肉体は持ってないのに、私が意識体でやっても、肉体を持ってる状態でも、全く反応がないのはどうしてなの……。


 なんだか凄く怖くなって来た。

 まるで自分の存在を否定されたかの様な。

 その後も、とにかく何度も何度も魔力を送って試した。

 結果は一緒だった。



《タニス? 何を考えてるんか知らんけど、まだこれが何なのか分からへんし、あたいの名前が書かれてあったからって、それがどう言う意味かも分からんねんで?》


「……それはそうだけど……。じゃあ、どうしてあなたの名前が!?」


《あたいの時、進化モデルって書いてた。多分この鉄の人形が進化モデルなんやと思うねん》



 フュリンが言うには、鉄の人形が進化モデルで、私達フェアリーがこの人形と適合出来る確率を表してるらしい。



《あたいは適合率、八十六って書いてた。だからあたいは八十六パーセントであの進化モデルと適合出来るって事なんやろ》


「……そもそも進化モデルって、何からの進化なのかしら」



 こんな感じで、あちこちの点が大きくなって来て、それを線で結べないかフュリンと色々と考えて、少しずつだけど真実が見えて来たの。


 そう思ってたら、突然なんの前触れもなく私の視界はプツっと途切れてしまったのだった。



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