第十二話 そしてループ① -Furin Side-
あたいはフュリン。アストに勇者の力を与えとった大精霊の称号をもつ妖精や。
目が覚めたらあたいは、アストから離れて違う場所におったんやけど、ここは一体どこなんやろ。
めっちゃ薄暗くて気味悪いわ……。周りは……そうやな、なんか雰囲気的にはリラティナスがおったメリュナアドみたいな部屋の作りやけど、こんなに暗いんは今、夜なんかな……。
《あぁ……やっと起きたわね》
「う、うわわ!? だ、だれや!?」
なんか声がしたで今……。何処にもおらんのに、でも何か聞いた事あるような声やったような……。
ん? てかあたい……自分の体あるんやけど。
「えぇぇ!? なんでなんでぇ!? あたいは意識体になったはずやのに、なんで体があんねんなぁ!?」
《ちょっとフュリン! 落ち着きなさい! はぁ……やっぱりこれって巻き戻ってる……》
「あんた……あんたまさかタニス?」
ユリウスと魂の契約したタニスやん。
あんたと喋った事ないけど、何でタニスがおんの?
てか、何処や?
《そうよ。何処まで覚えてる?》
「何処におんねんな?」
《あなた何も覚えてない訳? これってもしかしてループしてるのかしら……もう勘弁して欲しいわ》
勘弁して欲しいのはこっちやわ……。いきなり目が覚めたら見た事ないとこにおるんやで?
なんや、はあ〜って呆れた溜息の声が聞こえて来た思ったらタニスから驚愕の事実を発表された。
あたいらは魔界におるんやて。
《かつてはザングレスが支配してた領域で、今はアーキノフ様がこの領域を支配してるらしいわ。私達フェアリーは、アーキノフ様に回収されたのよ》
「アーキノフ!? あたいらって……じゃあフェアリー全員魔界に連れて来られたって事!?」
《そうよ……私達はね、〝大勇者〟を誕生させる為にここに閉じ込められてるの。まぁこの説明もこれで三回目なのよ》
「大勇者ってなんや? てかあんた何処におんねんな?」
《……あなたの頭の中よ》
そう言うと、フッとあたいの前に現れたんよ。
この状態って、アストとあたいの状態まんまやんか。
このタニスは意識体なんやな。
ほんでタニスが言うには、ここはアーキノフの支配領域内でフェアリーの収容所らしい。
施設の中はあまり馴染みがないけど、外に出たら森が広がってるんやて。あたいらの故郷そっくり作ってあるって言うんやから、マジで何者なんアーキノフって……。
その森も含んでの収容所らしい。
ほんでここに連れて来られた時に、人間界は汚染されてフェアリーが住まれへんくなったから、アーキノフが強制的に魔界に連れて来たって説明されたんやて。
意識体としてアストの中におったあたいも、ここへ強制的に連れて来られた。
その時、あたいはそのままやと自分が消えてしまう事を直感で感じ取って、咄嗟にタニスの体の中に入ったらしい。
らしいって言うのはあたいにその記憶がないねん。
大勇者を誕生させるとか胡散臭い話を信じてへんあたいはタニスを説得して、アーキノフの企みを暴こうと行動しとったんやけど、タニスの体を支配出来る事を知って、あたいが体を操って色々行動する事になったらしい。
タニスは中でサポートって感じでやってたんやけど、何故か〝ある場面〟を過ぎると時間が巻き戻ってしまうらしいねん。
今回で三回目やねんて。タニスの溜息と説明を面倒臭がってたんはこれやったんやって分かったわ。
「時間がある場面を過ぎるとループする……。それであたいの記憶は巻き戻って覚えてへんけど、あんたは記憶にあるんやろ?」
《そう、私だけなの。他のフェアリーも全部時間が巻き戻ってるし説明してもみんな同じ事しか話さない。フュリン、あなたは他のフェアリーと違ったのよ。会話も毎回違うし、毎回別の作戦でやってはみるんだけど、抜け出せてないって事は今回も失敗だったんだわ》
タニスだけが時間が巻き戻っても記憶が残ってるんやったら、もうタニスに頼るしかない。
だってあたいもまた忘れてまうんやから。
あたいは一回目と二回目の事をタニスから詳しく説明を聞いた。
ループの始まりは必ず決まってこの医務室から目覚めるんやて。ここ医務室やったんかいな。
ほんでこの収容所から抜け出して、研究所へ行って、そこでフェアリーがどうやって生まれたのかを知る事になるんやて。
内容は行けば分かるって。
あたいらがどうやって生まれたか? なんか知りたくない……どーせこういうのって、ショックな事が多いし……。
でもその事実を知って、大勇者計画を阻止するってあたいらは決断するらしいねん。だからめっちゃ大事。
で、前回は阻止する事が出来たのに何故か時間が巻き戻ったみたいやねん。
「なぁそれって、阻止したらあかんのんとちゃうん……」
計画を阻止して時間が巻き戻るんなら、阻止せずに計画を実行する事でループから抜け出せるんかも。
《でも、大勇者計画を実行する方向でもループしたわよ。一回目がそうだったから今度は阻止したの》
「って事は……そもそも計画自体をどうこうするって事やないんやわ」
うん、せやせや。大勇者計画そのものをどうにかするんじゃなくて、もっと別のところにループの原因があるんやわ。
「とにかく行動や! まずはこの収容所の事を調べるで!」
《だったら私が記憶してるわ! 大丈夫! 何でも聞いてちょうだい!》
タニスが言うには、ここ収容所とフェアリー研究所は星と星で離れてんねんて。
つまりあたいらがいる収容所自体が一つの星のレベルって事。
収容所って名前やから建物なんやろなって思ってたけど、フェアリーだけが住む星なんやて。
人間も魔族も魔物もおらへん、フェアリーだけの星。
せやけど考えたら凄いわ……。だってこの星はアーキノフの支配する領域の内の〝一つ〟に過ぎへんのやから。
フェアリー研究所も、丸ごと星になってんのか……。
《研究所は、そこの突き当たりに小さな建物から行けるわ。中に入ったら階段があって、上がった先の地面に模様が描かれてるんだけど、魔力を送ればワープ出来るの》
タニスが言った通り、床に変な模様が描かれてあってこれに向けて魔力を送ったら黄色くその模様が光ってんな。
ほんなら瞬きする間もなく、研究所らしき入り口におってん。
研究所って言うから魔族か誰かおるんかなって思ってたけど、タニスが言うには全くの無人なんやて。
そら三ループ目なんやもんな。ここも詳しく知ってるわな。
「よっしゃ、取り敢えず……」
フェアリーが何で誕生したんか、まずそれが知りたかったあたいは、タニスに誘導されてでっかいモニターがある部屋へやって来た。
モニターは壁に埋め込まれてる感じで、丁度部屋の真ん中にワープの時に見たあの模様の床があったから、そこに行って魔力を送ってみると……。
ヴゥゥンッ!!
〝魔界疫病 勇者システム 大勇者計画〟と言う文字が浮かんで来た。
《……私達がどうやって生まれたか、それを見れば分かるけど……私は見たくないから終わったら声かけて》
タニスはそう言ったっきり反応が無くなった。
あたいも、前回のループでここに来て見たんやろな……。そんなショックな事書かれてんの……?
大きなモニターを見上げながら魔力を床に流してページを送る。
「……ステージワン、魔界疫病。魔界中に抽出器を設置し、魔族から魔力を抽出。魔族は魔力を全て失った状態で魂が汚れてしまうと魔物化する」
確か、ネファーリアが前にこんな事言うてたっけ?
人間が魔族に魔力が失われる疫病を流行らせたって……。
「これ、アーキノフがやってたんか……!!」
魔物を作ったのはアーキノフなんやな。
この疫病はただの実験的なもんやって書いてるわ。
次の勇者システムに反映する為のもんらしい。
ステージツー、勇者システム。
魔王ザングレスの超魔力と、魔物を使って誕生させた妖精、と人間をリンクする事で新しい能力をもった戦士〝勇者〟を誕生させる事に成功する。
な……なにこれ……。そんじゃあ……あたいらって、元魔物って事……あたいは…………まもの…………?




