第七話 決断する時
オーバードライブした僕は、ゼーロットが問いかけた「貴様は何者なのか」に一切返事する事なく、無我夢中で殴り続けた。
「レインベルを……よくもぉぉぉぉ〜!!」
全力に近いぐらい魔力を放出しながら、分析士を駆使してパターンを調べ、時には次元術を使って背後や側面に瞬間移動しての打撃を繰り出す。
決して怒りに身を任せてる訳じゃなく、戦略を考えながら僕は次の一手を先読みし、冷静に対処する。
だけど正直パワーが足りない。実はオーバードライブを発動した瞬間に分かってた事がある。
オーバードライブは導師の奥義とも言える技で、所持してる全てのシードを一気に解放し、全てのシードの能力を発揮出来るんだ。
ネファーリアの霊神術士、魂を喰われる前の瀕死状態の時にレインベルから魔法剣士を回収していたんだけど、それでも半分にも満たないパワーしか出ていないんだ。
いつもの半分以下しか発揮出来ていないその理由は、ゼノス達にシードを預けたままにしていたと言う事。
もちろん離れていても回収する事は可能なんだ。でも、僕はやらなかった。
ゼノス達が何か困難な状況に陥ってるかもしれないのに、能力を引っ剥がすなんて出来る訳がない。
以前に僕はまだ導師の力に慣れてないと言う事もあって、ゼノス達に与えたシードを回収した事があったんだ。
これが僕の能力で、ゼノス達に才能を与えていたのは僕なんだけど、だからと言っていきなりシードを抜き取るような事はしたくない。
かと言って、別に余裕がある訳でもないんだけどね。
そしてもう一つ、今の僕はサモンシードによって召喚されてる身であると言う事。
召喚中はここに存在するだけでも、魔力を大量に消耗していく。
僕が今まで戦ってきた敵で、一番強敵と言える相手かも知れない。
こっちの攻撃はダメージは入ってるものの、やはりタフ過ぎて鋼鉄を殴ってるような感じ。
ズキズキと手が痛む。
「調子に乗るなよ」
「ぐぐ! な、なんて力だ……!」
タイミングを見て僕の飛んでくる両手首を、ガシッガシと掴み、無防備な顔面に強烈な頭突きを入れられて、視界が歪んだ。
「あがぁ!?」
「そうか……その能力、俺の体から無くなったのはその力だな」
「う……ぐぅ。お……おれの体だって? それは僕の体だ」
「今は俺の体だ。もう貴様はこの体には戻れんぞ」
「僕が全部元に戻す!」
「……そのオーバードライブとやら、中々面白い技だな。先程の貧弱な魔力量しかなかった貴様が信じられんパワーアップを果たしたのだからな」
「よく分かってるじゃないか」
「俺から抜き取った能力だな。返してもらうぞ」
な、何と言う馬鹿力だ……。両肩をギュゥゥゥッと締め付けられて固定されたまま身動きが取れないぞ。
「あ……ぐぅあぁぁぁぁぁ〜!!」
「どうだ? 自分に締め殺される気分は。人間の体も俺が使えば、ここまでとなる」
「さ……さ、サモンシード!!」
ブウゥン! ブウゥン!
霊神術士と魔法剣士を召喚し、僕を締め付けるのに気を取られてる背後から攻撃させて一瞬の力の緩みを利用して、次元術で後方に瞬間移動。
霊神術士にはとびっきりの霊神術を準備させて、僕と魔法剣士で連携攻撃を繰り出す。
「ほう。見た事のない術だが、それも〝あの力〟なのか。益々興味が出てきたぞ。人間」
サッサッと僕達の攻撃をかわしながら、余裕ぶって話までしてくるのが、また腹が立ってくる。
……いや、実際ゼーロットは余裕なのかも知れない。
「そうだな。そろそろ俺の技も見せるか」
そう言うと、僕と魔法剣士の攻撃をパッパッと弾くと大きく跳躍し距離を取られた。
「意識体となった俺が編み出した技だ。支配した体のスキルを引き出す事が出来る」
例えば、と続く。
「こんな風にな」
黒い霧の様なものを呼び寄せたゼーロットは、魔力をその霧に送ると、どんどんと大きく拡がって大きな巨獣に姿を変えた。
とてつもない大きさ、僕はこの巨獣を知ってる。
そう、この巨獣は……。
「魔神ビブレイス……!」
「ほう。それがこいつの名か? 貴様の中に封印されてたから封印を解いてやったぞ。魔神と言うだけあって素晴らしい力じゃないか」
僕の中に封印されてた? そんな記憶はないけど、勇者選定の儀式の時に魔神ビブレイスが現れた。フュリンが襲われて倒れたから無我夢中で救う方法を考えてたら、いつの間にかビブレイスとフュリンが消えていなくなってたんだ。
その後、フュリンは僕の中に意識体として入った。
ビブレイスもその時に一緒に取り込んでしまったんだな。
ゼーロットと魔神ビブレイス……ゼーロットだけでも大変なのに。
「このまま戦っても勝てないな……」
でもやるしかない。相手が強敵だからと言って、負ける訳にはいかないんだ。
と、ゼーロットと魔神ビブレイスどっちから仕掛けてくるのか睨んでいたら信じられない光景を目の当たりにした。
「な……なに!?」
喰らった……。
二人がかりで攻めて来るとばかり思ってたけど、ビブレイスを魂にして食べたんだ。
こいつ……本当に自分が強くなる事しか考えてないんだ。
ビブレイスを喰らったゼーロットは、ただ能力がアップしただけじゃなく悍ましい姿に変身した。
次元を超えたレベルの波動と魔力で、僕はその波に突き飛ばされ、いくつかのクリスタルの岩にぶつかって地面に落ちた。
現状のオーバードライブじゃまるで歯が立たない。
〝あれ〟を使うしかないみたいだ。
だけど使ったら……もう止まらなくなってしまう。
それでも悩む時間もないんだ。ゼーロットは導師の力を超えた。
決断しなきゃならない。
〝極大励起〟を使うかどうかを……。
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第八話も近いうちに出す予定なので、また読みに来てください!
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