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第六話 魂を喰らう


「ダメだ! みんな今すぐに逃げるんだ!」



 僕は無事に一万二千年前の幻竜神界に来ていた。

 時間移動でやって来たらすぐに三人が大技を繰り出し、一斉攻撃している所で、名前を呼んで逃げろと叫んでも聞こえてないし、誰も僕の存在に気づかないんだよ。

 意識体になってるから、感知する事が出来ないみたいだ。

 それはゼーロットも同じらしい。

 でも僕はみんなの魔力、波動を感知する事が出来る。

 もしかしたらこれってユシアの祝福の恩恵か。


 そしてこの竜族がゼーロット。鏡を見てるかのように僕がそこにいる。でも、自分じゃないみたいな感覚。

 とてつもなく大きな波動だ。その波は突風に晒されたように僕に襲いかかる。ネファーリア、リラ、レインベルは人間界、魔界を含めてもかなり上位に入るぐらいの実力者だと思うんだけど、そんな三人でも油断してたらこの波動だけで吹き飛ばされてしまうだろう。


 心臓がドクドクと脈打つ。意識体だから物理的感覚はないはずなのに、心臓が締め付けられるような。嫌な予感はまだ消えてなかったんだ。


 そんな時に大爆発が起こった。

 三人の大技がまともにゼーロットに命中したのは間違いない。



「間違いないんだけど……ダメなんだよ」



 分かるんだ。確かに彼女達は超絶なパワーを持ってる。

 でもあいつだけは、ゼーロットだけは次元が違うんだ。

 僕がいれば、なんとかしてあげられるのに。



「くそ! こんなに近くにいるのに……僕は何も出来ないのか……」



 導師の力がパワーアップしたのに、みんなの盾になる事さえも出来ない。

 爆煙が辺りを覆い隠し、ネファーリア、リラ、レインベルはそれぞれ別々の方向に吹っ飛んで行くのを見た。

 ゼーロットは三人の大技を全てくらったのにもかかわらず、ダメージは一切なし。そればかりか信じられないぐらいのスピードとパワーで三人に反撃したんだ。



「ネファーリア! リラ! レインベル!」



 ダメだ反応がない。

 地面に転がったまま立ち上がれずに気を失ってるんだ。

 くそ……あのまま放っておくような奴じゃないのは分かってる。だから早く僕が何とかしなきゃならないのに。



意識体このからだじゃ干渉出来ないのなら……干渉出来るようにするまでだ」



 そうだ簡単じゃないか。

 僕がこの次元で存在できるようにすればいい。

 僕は今肉体から切り離され、意識体、つまり魂だけの存在だ。

 肉体はゼーロットが今支配してるからあいつを倒さないと元に戻る事は出来ない。だからこの手は無理だ。

 何か忘れてないか? 何か存在出来る方法が必ずあるはずなんだよ。


 と、記憶の引き出しに手をかけた時、まさに答えは近くにあった事に気づいたんだ。



「そうか! サモンシードだ!」



 サモンシードは魔力で作ったエーテルボディにシードを植えつけて実体化させるスキル。



「だから、僕自身を召喚すればいい!」



 ……とは言うもの、中々頭を使わないといけない。

 困難だがこれしか他に方法はないし、不可能じゃないんだ。

 早速僕はサモンシードの要領で僕自身を召喚する為の魔力を整える。



「ふん。雑魚過ぎる。貴様ら魔族の魂を喰らった所で大したプラスにはならんだろうが、一応喰らっといてやる」



 まずい。このままだとあいつに……。

 早く、何とか間に合ってくれ。



「だが……魔族は後回しだ。まずはセレスティア、貴様からだ」



 ゼーロットは、レインベルの方に向かってゆっくりと歩いて行く。

 そうか、ゼーロットは中のセレスティア様が狙いなのか。

 理由は分からないが、セレスティア様に何か恨みがあるんだろう。

 レインベルの片足を掴み乱暴に持ち上げると、腹目掛けて重い一撃をぶち込んだ。

 それは突き抜けるんじゃないかと言うぐらいの、全く手加減無しの強烈な一撃だった。

 レインベルは声も出ず、ただ目を大きく見開いたままその痛みを訴える。


 その後、何発も腹を殴り続け物を捨てるかの様にその辺にポイッと投げ捨てた。



「共生前の時の方がまだ強かったぞ。人間などと共生なんかするから弱くなったのだろう」


「……ぅ…………ぁ……」


「レインベル!!」



 待っててくれ。もう少し、もう少しで魔力が整うから。



「なあセレスティアよ。お前を喰らったら、この時代のお前は消えるのか? それとも二度俺はお前を喰らう事が出来るのか?」



 そう言いながら投げ捨てたレインベルをもう一度拾い上げると、首を両腕で掴んだゼーロットの口元がにんまりと緩んだ。



「な!?」



 感情が追いついて来ない程、本当に一瞬の出来事だった。

 レインベルの体が光ったかと思えば、黄金に輝く丸い塊となったんだ。

 そして、それを文字通りに喰らった。飲み込んだ。



「おぉぉぉー!! 素晴らしい力がぁぁー!」



 悪意に満ちた顔で笑い叫ぶ。



「くっそぉ……!! レインベル!!」



 目の前で何も出来なかった。レインベルとセレスティア様の魂はあいつに食べられてしまった。

 僕の大切な……大切な……許さない……。



「ふむ。思った以上のパワーを得られたな。だがまだ足りない。俺はまだまだ強くならないとダメなのだ」



 チラッとネファーリアとリラを見たかと思ったら、パッと移動して二人の首に手をかける。

 二人もレインベルみたいに、魂を喰らう気だ。



「さあ、魔族どもよ。次は貴様らの番だぞ」



 やめろ……。

 ゼーロットはまたあの悪意に満ちた笑みを浮かべた。



「今度は一気に二つだ」



 二人の体が光を放った。だが最初のやり方とは少し違う。

 それは肉体を昇華させて意識体、魂の存在にすると言うセレスティア様の秘術。

 ゼーロットは喰らった相手の能力を自分のものにしてしまうと言う能力があるらしい。



「なんだ貴様は!? ぐぁっ!?」



 ゼーロットは地を転がった。



「ぐぅ……まさか貴様!?」


「よくもレインベルを!!」



 僕は自分自身をサモンシードで召喚した。



「オォォォバァァァドライブ!!!」



 くそ……。

 魂を吸収されて、レインベルをもう二度と取り戻す事が出来ないかも知れないんだぞ。

 僕は自分がここにいながら、ゼーロットが危険であるかを分かっていた。

 もう少し早く行動する事が出来ていたら、レインベルやセレスティア様を助けられたんだ。


 自分自身を深く憎んだ。深く深く。自分への憎しみ、それがやがて恐ろしい力を目覚めさせてしまう事になろうとは、この時の僕は全く分かってなかったんだ。


 

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数ある中で本小説を手に取っていただき本当に感謝してます。


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