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第一話 次元を超えた三娘 -Rainbell Side-

ここからエピソードⅡです。


 アストさんを追いかけて幻竜神界にやって来た。

 魔力を共有する事で幻竜神界まで行く事が出来るって、ネファーリアから提案された時に、そうだ、あたし達アストさんのメルトナだったんだって思い出したの。


 同じ主を持つメルトナ同士なら魔力を一つに合わせられる。

 十分な魔力さえあれば、あとはセレスティア様が幻竜神界までゲートを繋いでくれるって事で体の支配権をセレスティア様に渡して、何の問題もなくあたし達は幻竜神界までやって来た。

 リラティナスが落ち着きのない子供みたいにはしゃぎまくってて……も〜うるさいなぁ。

 人間目線で見たら魔族って凄く凶暴な生物だと思ってたのに、本当に人間みたいなんだよね。


 ここにはヴェルグラやメアもいるかも知れないんだから、もっと周りに注意しないといけないのに……って言いたいんだけど、セレスティア様に支配権を渡してるからなぁ。

 セレスティア様、ちょっとリラティナスを叱ってやって下さいよ〜。



「ここが幻竜神界かぁ⭐︎ なぁなぁ! あそこに見える宮殿すげぇーな! あたしの親父の城よりもでっけーじゃんかよ!」


「リラティナスさんの街も大きく素晴らしかったですけれど、宮殿そのものがもう……大きな街ですね」


「なんか悔しいぜ! でも魔界よりも一個上の次元の世界なんだよな? まっ、仕方ねーか⭐︎」


「そ、そんな…………。どう言う事じゃ……」


「……セレスティア様? どうかなされました?」



 セレスティア様の様子がおかしいのは、あたしもすぐにわかった。

 あたし達共生してるから、お互い心の中の声とか考えとか分かるんだけど、心の中でも、何で? とか、どうして? ばかりでただただ驚いてるって感じだった。



「え……まさかティアばあちゃん、ここが幻竜神界じゃないとか言わねーよな……?」


「…………」


「な、何か問題でもあるのですか?」


「……いや、そんなはずは……しかし」


「もぉ〜ばあちゃん! さっきからブツブツ独り言言ってどうしたんだよ! あたしらにもちゃんと話せよ」


「ちょ、ちょっとリラティナスさん! もう少し言葉に気を配って下さい! この方は」


「ネファーリアは話し方が固すぎるんだよ……」


「その方が誠実に伝わるのです!」


「ううん、冷たく感じる。アストもネファーリアの話し方が冷たいって思ってるはずだもん!」


「そ、そのような事はありません! 貴方の言葉使いは乱暴なのです!」



 あちゃぁ……喧嘩しちゃったよ……。

 この二人の事、アストさんから少しだけ聞いてたけど魔界にいた時もこんな感じだったのかな。

 も〜セレスティア様、何考えてるんですかー?

 って、さっきからあたしの声も無視して考え込んじゃって、全然応えてくれないんだから!



「ええい! 外も意識(なか)も五月蝿いぞ! 元の時代に戻れんようになって、妾に泣きついてきても助けてやらんからな! 分かったか? だから少しだけ黙っておれ!」



 二人ともピタッと止まってこっちを見てる。

 元の時代?

 あたし達みんな一斉に頭の中でそう思ったに違いない。

 え? と言う事はここは、時代が違う幻竜神界って事?



「ここは幻竜神界じゃ。一万二千年程前のな……」


「え!?」


「い、いちまん……二千年前…………!?」



 あたし達、一万二千年前の幻竜神界にいるって事!?

 なんで? どうしてそんな過去の幻竜神界にいるの?



「そこの宮殿はの、現在の幻竜神界では廃墟と化してもう瓦礫しか残っとらんのじゃよ。この景色……そう、ここは一万二千年前の……それもこの日は、妾が女王に即位した日じゃ」


「ではわたくし達は……時を超えて一万二千年前の、幻竜神界にやって来たと言う事ですか?」


「うむ。あの宮殿の上空に透明なクリスタルが浮いてるのが見えるじゃろう? あれは即位式の祭典の時に浮かべるものなんじゃよ」



 じゃあ、今あの宮殿に行けば一万二千年前のセレスティア様に会えるって事だよね?

 若かりしセレスティア様があの宮殿に……。



「むう……自分自身に会うと言うのは何とも複雑な気分じゃが……何故この時代にやって来たのか、その理由が見つかるやも知れんし」


「じゃあさ、行ってみようぜ!」


「あ、ちょ、ちょっと! リラティナスさーん! 勝手な行動は危険ですよー!」



 って言いながらグングン進むリラティナスを追いかけてネファーリアも走って行く。

 あの二人、仲が良いのか悪いのか……。

 セレスティア様が行って確かめてみたいって言った事もあって、あたし達はとりあえず宮殿に向かう事にしたんだ。

 宮殿の上に大小様々な透明なクリスタルが浮いてるんだけど、実はこの辺一体はクリスタルで出来た草? のようなものがまるで草原のように広がっているの。

 見晴らしも良いし、何より魔物が見当たらないから不安になる程、特に何のトラブルになる事もなく宮殿入り口までやって来たんだけど。



「目の前まで来るとさらにバカでけぇー宮殿だよな!」


「それに竜族ひとの数も凄いです。入り口にも入れないぐらい沢山いらっしゃるのは、女王が決まる即位式だからでしょうね」


「皆、次の長が誰に決まるのか気になっとるからと言うのもあるが……多くの者は妾を見に来とるんじゃよ。妾の美しさは幻竜神界一じゃからのう」



 自分で言うんですね……。さすが女王様です。



「ここからじゃ遠すぎて、ティアばーちゃんの姿が見えねぇーな」



 リラティナスの言う通り、宮殿の中は竜族でびっしりと埋め尽くされていて〝セレスティア〟と言う歓声が花火のように色んな所から打ち上がる。

 セレスティア様って、こんなに支持されてるんだね。

 ここまで人気があるのは美貌だけじゃなく、裁量もあるからだと改めて思った。

 うぉぉぉー! と言う熱気で全然気付かなかったけど、どうやら今から〝この時代のセレスティア様〟が国民に向けて演説するところらしいの。



「……あ! 見て下さい! 上のクリスタルにセレスティア様が!」



 上に浮かぶ大きなクリスタルを指さしてネファーリアがそう言った。

 本当だ。クリスタルの中にセレスティア様が入ってる。



「あれは映像じゃよ。クリスタルに妾の情報を三次元的に書き込んで映しているんじゃ」


「モニターの様な物のようですが、あの様なクリスタルの中に立体的に……凄い技術ですね……魔界や人間界でも拝見した事がありません」



 今度は上から見た視点に切り替わったと思ったら、その後また直ぐに切り替わったんだけど、クリスタルは民衆に向けて演説するセレスティア様の周りに見覚えのある人物を映し出したの。


 あたし達それを見て思わず〝あ!〟って声を出しちゃった。

 兎の姿をした魔族ヴェルグラ、赤鬼と化したメア、そしてその隣に、アストさんがいたんだ。



「先生!? おい先生があそこに映ってるぜ!?」


「ヴェルグラにメアが何故あそこに立っているのか気になるが、それよりアストが何故……」



 それに、とセレスティア様が続ける。



「どうしてここにいる皆は何も言わんのじゃ……? 竜族以外の者が女王の近くにおると言うのに」



 そう、あたしも同じ事思ってた。

 ヴェルグラやメア、アストさんも含めてきっとあたし達と同じように時を超えてこの時代にやって来たはずなのに

 そこにいても当たり前かのように、皆何一つその事に対して声を上げないの。


 そんな疑問にあたし達だけそわそわしながら、演説してるセレスティア様の姿がアップでクリスタルに映ると



「新しい時代、これからの竜族の発展と繁栄の為に、妾の信頼できる守護竜ガーディアを紹介するぞえ」



 地面が揺れるぐらい凄まじい〝うおぉぉぉー!〟って言う轟音がこの空間に響いた。

 凄い……声だけで地面が揺れてるよ……。



「ヴェルグラ、そしてメア、魔族ではあるがとても優秀でいて頼りになる者じゃ」



 最後に、とアストさんを呼んで紹介する。

 ヴェルグラ達もそうだけど、やっぱりアストさんもみんな時を超えてやって来たんだ。

 ネファーリアやリラティナスも、アストさんを見て無事である事をクリスタルに映ってる姿ではあるけど確認する事が出来て、ちょっぴりほっとしたのも束の間。


 紹介したセレスティア様の言葉に違和感を覚えた。

 いや、言葉と言うか……。



「な、なあ……今あっちのティアばーちゃんはなんて言ったんだ? ゼーロ?」


「そうですね……アストとは呼びませんでしたね」


「ゼーロット…………そ、そんな……」


「そう! ゼーロットって呼んでたんだな! それでばーちゃん、そのゼーロットってなんだ?」


「い、いや……こんな事が……まさか……まさか」


「まーたブツブツ言ってるよ……」


「セレスティア様、ゼーロットと言うのは一体……あそこにいるのは、アストではないのですか?」


「…………恐らく、あれはアストであってアストではない」



 アストさんであって、アストさんじゃない?

 セレスティア様、それってどう言う……?



「アストはアストなんじゃ……じゃが、意識は別の者が支配しとるんじゃよ……」



 別の者? それってシャドウに体を憑依されているように意識に憑依してる何者かがいるって事なの?



「いや、シャドウの様な憑依ではない。意識を追い出して自分のものにしとるんじゃ……アストの意識は、消滅して消えた可能性がある……」


「な!?」


「せ、先生の意識が消えた!?」


「恐らくゼーロットの仕業じゃろう……何故じゃ……何故ゼーロットが…………」


「ば、ばあちゃん! 訳わかんねーよ! 先生はどうなったんだよ! なんなんだよゼーロットって!」


「ゼーロットは…………妾の…………弟じゃ」



更新は遅めですが、この小説をお気に入りいただいた方、ブックマーク、いいね、よろしければ↓にある評価もいただければ大変嬉しいです。

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