第六十一話 力を合わせて -Nephalia Side-
アストは、ヴェルグラ達と共に黒い渦の中へ消えてしまいました。
エスハイムの城下町、辺りは瓦礫の山と化していましたが静けさに包まれ、皆その場に立ち尽くしておりました。
「わたくしの代わりに……アストが。わたくしの……せいで」
「あんたが責任を感じる事はないぜ」
と、わたくしの背中に向かってクウォンさんがそう言いました。
いえ、わたくしがもっと気を配っていれば……。
一時的にでもヴェルグラが味方になったものだと思い込み過ぎていたのです。
恐らくヴェルグラに読まれて、わたくしに決めたんだと思います。
「なぁ! 先生は幻竜神界へ行ったんだよな? あたしらも追いかけようぜ!」
リラティナスさんが皆に向かって喝を飛ばすかのように声を張り上げます。
彼女の言葉に、どうやって行くのかはさておいて、皆絶望的だった気持ちだけは前向きに取り戻そうとしました。
しかしその前向きな発言の矢は、すぐに地面に落ちる事になります。
レインベルさんが首を横に振りながら
「ダメなの。幻竜神界は人間界、その上の次元にある魔界の更に上に存在する世界なの。低次元の世界の存在が高次元の世界に足を踏み入れる事は出来ないよ」
「ですがレインベル、貴方は幻竜の女王と融合し竜族となったんですよね? 貴方は行けないんですか?」
と、ヴァールさん。そしてクウォンさんが続きます。
「そうじゃねぇか! おめぇなら行けんだろ!」
「女王のセレスティア様に聞いてみたんですけど、今のあたしじゃ幻竜神界へ繋ぐだけの魔力が備わってないそうです……まだまだ力が使い熟せなくて……すみません」
辺りに再び静けさが訪れます。
暫くしてゼノスさんが切り出しました。
「……ここでただ突っ立っていても何も変わらんだろう。
とりあえず民の安全確認とシャドウが他に潜伏していないか調べた方が良いのではないか」
「わたくしやリラティナスさん、レインベルさんはシャドウを見分けられます。シャドウが潜んでいないか、わたくし達に調べさせて下さい」
ゼノスさんが、コクッと頷いた瞬間に遠くの方から声が聞こえてきました。
〝そうはさせない〟と言う言葉でした。
わたくしの提案に対して待ったをかけた人物、それはユリウスさんでした。
その声はここにいる他の皆さんも当然聞こえており、一斉にユリウスさんに注目します。
「ユリウス?」
「その後ろにエスハイムの王、そして兵士が並んでますねぇ」
「……ユリウスの隣にいるのはリーベルト王子か? しかし何故捕らわれているのだ?」
「おい! ユリウス! おめぇ何やってんだよ!」
「聞け! 大罪人アストに加担した罪深き者どもよ。貴様らは全員死刑か永久禁錮だ!」
「「「え!?」」」
「な、何を言ってるのだユリウス! アストは我々を救い、力を与えてくれたのだ。大罪人などであるはずがない!」
ゼノスさんの言葉に続いて、クウォンさんも大声で言葉を飛ばします。
「おめぇまーだそんな事言ってんのかよ! ああ!? アストはなぁー! てめぇと引き換えにこの世界を救ったんだぞ!! ばーか!」
「貴方何でそこまでアストに拘るの!? アストはシャドウに憑依された貴方を救ったのよ!?」
「黙れ! 大罪人に加担しただけじゃないぞ!! そこにいる魔族と手を組みエスハイムを滅ぼそうとした!!」
と、ユリウスの話の途中で前に出てきたのは王様の様な出立ちの方でした。恐らくエスハイムの王でしょう。
「大罪人アストの仲間達、そして魔族よ。私はエスハイムの王ヨシアだ。話は全てユリウス殿から聞いた。魔族と手を組み我が兵士を手にかけ、エスハイムを壊滅寸前にまで陥れた。ここにいる全員を死刑、または永久禁錮の刑に処する」
「エスハイム王! 我々は兵士達を救ったのです! エスハイムの兵士はほとんどシャドウに憑依されていました! 我々はシャドウを兵から取り除いたのです!」
いつも冷静な声でいたヴァールさんが、憤りを声に乗せエスハイム王に伝えました。
知り合ってまだ間もないですが、この方がこんな風に熱く声を荒げるなんて……アストは本当に良い仲間を築いていたのですね。
他の方、ゼノスさん、クウォンさん、リミアさん、皆さんアストへの誤解が解け、さらに絆が固くなっているのがわたくしからも感じ取れました。
「ぬ、ぬぅ……そ、そうなのか? ユリウス殿」
「それが奴らの手なんだよ。魔族は人間の敵だ。その魔族と手を組んでこの国を滅ぼそうとしているんだぞ。王がそんなんじゃこの国は滅亡するぞエスハイム王!」
王様は再びわたくし達を睨みつけ兵士達にこう言いました
。
「皆の者! 大罪人アストの仲間達を捕えよ! 魔族もだ! 行け!!」
おぉー! と言う掛け声と共にエスハイムの兵士達がこちらへ向かって来ます。
正直、力では負けはしません。ここにいる全員そう思っているはずでしょう。
しかしわたくし達は戦う訳にはいかないのです。
何故なら、わたくし達もそしてエスハイムも悪ではないからです。
「お、おい待てって! クソ! このままじゃ本当に兵士を殺す事になっちまうぜ……!」
「皆さん! 一旦ラムリースまで引きましょう!」
レインベルさんの言葉に一同頷き、わたくし達はエスハイムから逃げ出しました。
「逃げたぞ」「追え」と言う言葉が微かに聞こえましたがあっという間に距離がついて兵士達は見失ってしまったでしょうね。
さて、わたくし達はどうすれば良いでしょうか。
リラティナスさんが言う様に、出来ることならばアストを助けに行きたい。
けれどもわたくしにはその様な力はありません。
ましてや幻竜神界へ行くだけの魔力さえも……。
と、リラティナスさん、そしてレインベルさんを何気なく見た時に急に閃いたのです。
「レインベルさん! 行ける方法を思いつきました!」
「幻竜神界へ? でもあたしの魔力じゃ……」
「わたくしとリラティナスさん、そしてレインベルさんはアストのメルトナです。わたくし達の魔力を合わせれば、可能になるかと思います!」
「同じご主人様を持つあたしらなら、魔力を合わせられる! 先生のおかげで呪いが解けて、今じゃ魔力も使えるようになったからな☆ 姉ちゃん達と力を合わせれば行けるぜ!」
それを聞いたレインベルさんも、直ぐに助けに行きましょうと言って下さいました。
ゼノスさん、クウォンさん、ヴァールさん、リミアさんは必要な魔力が備わっていない為、残念ながら幻竜神界へは行けません。
恐らく移動した瞬間に存在そのものが消えてなくなるかも知れません。
その事を伝えると、わたくし達に託すと仰って下さいました。
「俺達の事なら心配しねぇでいいぜ! まだアストから貰った才能が宿ってるからよ!」
「アストを頼んだぞ」
「はい! 必ず助け出します!」
幻竜神界へのワープは、セレスティア様が行ってくれるそうです。
アスト、待っていて下さい。
今度はわたくし達が、貴方をお救い致します。
これでエピソード1は終わります。
ブックマークいただいた方、星の評価をいただいた方、いいねをしていただいた方、そして本小説をお読みいただいた全ての皆様に感謝致します。
この物語は一人でも読みたい方がいる限り続けていきたいと思います。
遅い更新にはなると思いますが、必ず完結まで書きますので気長にお待ちいただければ幸いでございます。
それでは、エピソード2開始まで暫くお待ち下さいませ。




