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第四十一話 隣人 -Rainbell Side-

ブックマークをいただいた方、いいねをいただいた方、評価をしていただいた方、そして本作品を楽しみにして読んでいただいてる方、本当にありがとうございます。


 あたしはレインベル・クルセウム。

 遥か北の雪国からラムリースへとやって来た魔法剣士。

 あたしをここまで育ててくれた師であり、恩人でもあるアストさんに恩返しをしようと、ラムリースへやって来たのに、ユリウスにハメられてラムリースの地下牢。



「しかも、厳重に特殊結界が張られてる……」



 でもそりゃそうだよね。

 アーキノフ様からしてみれば、あたしはとんでもない大罪人だもん。

 それもこれもあのユリウスよ!

 オーディションの時にアストさんが見当たらないから、あれ? って思ったけど、やっぱりあたしの悪い予感は当たっちゃったな。

 あとでアストさんが追放されたって知ったけど、それでもユリウス達のところにいたのは、アストさんの教えを守りたかったから。


 〝関わった人は誰であろうと絶対に見捨てない〟


 世界にいる全ての人を救う事は出来ない、でも自分が関わった人は何とか救ってあげたいと思った。

 本当に素敵な言葉。あたしもアストさんに関わった事で救われたしね。魔法剣士にもなれた。

 恩返しがしたいと思った。それがまさかこんな事になるなんて……。



 重い鉄の扉が開く音がする。誰かが入ってきたんだ。



「やあ、金髪の美少女さん」



 このムカツク声はユリウスね。貴方の顔を見ると反吐が出る。

 見てなさい、ここから出て絶対にこの借りは返すから。



「あたしなんかに用があるんですか、大嘘つきのユリウスさん」


「信用してる人間から裏切られて、心のどん底を味わってると思ってたら、まだまだ元気そうじゃないか」


「貴方を信用した事なんて一度もないんだけど

言ったでしょ? あたしはアストさんの教えを守りたいだけなの。だって貴方、勇者に選ばれたのに実力も何もアストさんには遠く及ばなかった。素質なんて皆無だった」



 ユリウスは何も言わずに、鉄格子の隙間からお皿を差し出した。

 パンと牛乳と何かの野菜が乗ったお皿だった。

 何も食べてないけど、全然食欲はない。



「ほら飯だよ。腹減ってるんだろ?」



 本当に嫌な奴。こいつに近づくのも身の毛がよだつ……。

 でも何か食べておかないとまともな考えも浮かばないし。

 あたしはお皿を受け取ろうと、両手を差し出す。

 するとユリウスは、受け取る手前でパッとお皿をひっくり返した。

 パンや野菜は床に落ち、牛乳も床に飛び散った。

 お皿を雑に捨てながら



「すまん、手が滑った。拾って食え」


「貴方って本当に最低ね」



 落ちたパンを拾おうとした時、鉄格子の隙間からユリウスが腕をガッと掴んできた。

 普通なら魔力で吹き飛ばしてるところだけど、特殊な結界で魔力が封じられてるからそれは出来ない。



「く……は、はなして!」


「わめくな。なあ…………俺の女になれよ」


「はぁ? 頭おかしいんじゃないの」


「くっくっく。お前はもうすぐある魔族の養分になる。

お前の刑は、〝死刑〟なんだとよ。くくく。俺に縋らんと、マジで死ぬぞ?」



 くっ! 何て力なの……もう片方の腕も掴まれ鉄格子に引き寄せられた。

 いや……こんな最低な人間の女になんかなりたくない。

 吐き気がする。こんな最悪の悪魔に近寄りたくない。

 触れたくない。触れられたくない。

 ユリウスは、耳元で息を吹きかけてくる。



「さあ…………言えよ。俺の女になると」


「ぺっ!」



 唾を吹きかけてやった。



「あたしが誰かの女になる事があるとしたら、アスト・ローランよ。色男さん」


「こぉん…………のアマぁぁぁぁ!!!」


「い……つぅ……」



 痛ったぁ〜。ユリウスに突き飛ばされた。

 貴方みたいな男を惚れるなんて事、死んでもないわ。

 死んだ方がマシって事なのよ、分かった? カス野郎さん。



「おい! ここの扉を開けろ!!」



 近くの看守に声を飛ばす。



「ユリウス様、ここの特殊結界の牢は入れたばかりの扉は最低二十四時間経たないと開きません! 脱走しない為でありまして……」


「だそうよ。残念。あたしをメチャクチャに出来る機会を失ったね。色男さん」


「くそ! ふ、ふん! せっかく助けてやろうと手を伸ばしてやったのに、まさか自ら死を選ぶとはな! まあせいぜい、楽しみに待ってろよ」



 乱暴にドカドカと帰って行った。



「はぁ……」



 この結界さえ解ければ、まだ脱走出来る可能性があるのにな。

 魔族の養分になるだって……?

 あまり考えてなかったけど、あいつはある魔族って言ってた。

 どっちにしても、ここから出ないと本当に養分にされちゃう……。

 考えるの!



「久々の新入り……か」


「!? 誰かいるの!?」



 隣り? 左側の壁に近づいて耳を澄ましてみると



「お主も、〝ヴェルグラ〟の養分となるか。なら妾は仲間じゃな」


「貴方は一体?」



 凄く掠れた小さな声で、あたしに返してくる。

 誰か分からないけど何かで捕まったのね。

 でも気になったのは、この壁の向こうにいる人、「ヴェルグラ」の養分って言ってた。

 確かユリウスも〝あの魔族の養分〟って言ってたし、同じと見て間違いなさそうね。



「貴方はいつから捕まってるんですか?」


「いつからなど、数えておらんかったが……まあ五十年ぐらいかのう」


「ご、五十年ん!?」



 そんなに長い間、ここでずっとそのヴェルグラの養分として力を吸い取られていたって事なんだ。

 気になるのは、これがアーキノフ様の命令なんだったら魔族と関係があるって事?


 アーキノフ様が魔族と通じてたとしたら一大事よ!

 他の国にも伝えないと、その為にはここから出ないといけない!



「くそ……魔力さえ使えたら……」


「お主は死を受け入れておらんのか?」


「その何とかって魔族の餌になんてなりたくないですから!」



 壁や鉄格子を探りながら隣人と話を続ける。



「無駄じゃよ。妾も色々試してみたが魔力が封じられとる以上、結界を切らねば脱走は不可能じゃ」


「それじゃあ、結界を解除する方法を一緒に探して下さい」


「妾はもう運命を受け入れとるよ。ここから出て行く気は、もうないんじゃ」



 どこの誰なのか分かんないけど、今の一言がムカついた。

 出て行く気がないなんて嘘、そんな事分かってる。



「一人なら無理でも二人なら出来るかも知れないでしょ? あたしは最後の最後まで諦めませんよ! それに、貴方の事も助け出します! 貴方が何と言おうと、餌になって喜ぶ人なんていませんから!」



 そう、アストさんの教え。

 関わった人が誰であろうと見捨てたりはしない。

 自分の力で救えるなら救うの。

 あたしが信じてる人の言葉。師であり恩人。

 この人に話してあげた。



「そうか……ふっふっふ」


「何笑ってるんですか……」


「いや、ふっふっふ。ちと興味が湧いてきた。そのアストとやらに会いとうなったわ」


「えぇ! あたしもですよ!」



 ダメだ……結界を解除するに魔力の源を調べないといけないのに、その源を調べるのに魔力が必要なんだよな〜。

 違う方法を考えるしかないか。

 魔力に頼らずに……。



「娘よ。お主名はなんと申す?」


「レインベルです。レインベル・クルセウム」


「そうか、レインベル。妾と契約をせんか?」



 まさかそんな言葉をここで聞くとは思ってなかったから、一瞬なんの事を言ってるのかわからなかった。

 だって、隣りの人は人間だと思ってたから。



「契約?」 


「レインベルよ。お主、〝竜騎士〟になる気はないかえ?」


第四十ニ話は、8月24日朝8時を予定しております。


本作品をお気に入りいただけたなら、ブックマークをよろしくお願い致します。


これより下に星のマークで評価できるところがあるので、恐れ入りますが評価をいただければ幸いです。


数ある作品の中から、本作品を手に取っていただき、本当にありがとうございます。

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