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第三十七話 闇は水面下で動く -Julius Side-


 正直、俺の足はガタガタに震えていた。

 こいつに比べたらその辺の魔物なんて虫みたいなもんだ。

 アーキノフに連れられて、俺達は地下にある〝恵みの大地〟と呼ばれる場所へと来ていた。

 ラムリース城の真下に同じぐらい大きさの広大な施設。

 その一番大きな施設へと案内されたんだが、俺達は言葉を失ってしまう。

 俺はきっと恐怖を感じていたんだと思う。

 こいつに、そしてそれ以上にこいつを支配してるアーキノフに。


 魔王ザングレス。


 死んだはずなのに何でここにいるんだ?

 魔王ザングレスを前に並ぶ俺達四人。

 その後ろで酒を煽るアーキノフ。



「心配はいらん。此奴はもう死んでるも同然の抜け殻だ」


「ま、魔王!? 何故魔王が生きてるのです?」



 ゼノスが振り返ってアーキノフへと問う。

 それはここにいる俺達全員が思ってた事だった。

 太い鉄のようなパイプが体のありとあらゆる所に突き刺さり、緑色に光る塊がそのパイプを通って何処かへと流れて行ってる。



「其方達が倒したのはダミーだ。本物こいつの細胞から作ったただの人形だよ」


「な、なんと……そのような事が」


「あ、あんたラムリース国の国王だろ? とても人間のやる事じゃねぇよこんなの……!」


「息子にもそう言われたよ」



 だが、とアーキノフは続ける。



「ラムリース王国が、これだけの繁栄と発展を遂げられたのも、儂のこの事業の賜物なのだぞ。この国には強い魔物が侵入せんように結界が張ってある。また、魔術や魔力が魔族同様に簡単に使えるようになったのも全て儂の事業の賜物」



 アーキノフはこの五十年間、何をして来たのか俺達に説明した。

 ヴェルグラと言う魔族と手を組み、勇者と魔王の仕組みを作り、勇者のそのエネルギーを吸い取って、ヴェルグラへ送っていた事。

 人間と魔族が手を組んでいたなんて、微塵にも考えた事がなかった。

 

 魔族は悪。勇者は魔族を統べる魔王を倒す為の存在。

 そう教わって来たのに、ヴェルグラを強くする為の養分だと!?

 俺は、そんな奴の為に勇者になったんじゃない。

 隣にいるタニスも、これには驚いてる様子だった。



「私達フェアリーは……こいつの魔力で造られたっていうの……」


「いや、そうではない。フェアリーが繁殖しやすい環境を整えるのに一役買ったに過ぎん。だが、この事業を始めてから勇者の質が明らかに変わったのだ。それは大精霊級の素質を持つフェアリーが生まれやすくなったと言う事」



 軽く咳をしたアーキノフは本題を切り出した。



「ユリウスよ、自分でも分かっておるだろうが勇者としては不十分で粗末な力量であったな」



 本当に何でも知ってるんだな……。



「……よくご存じで」


「別に其方を貶している訳ではない。勇者より相応しいものがあるのではないか、儂はそう思っておる」


「勇者よりも相応しい……?」


「其方達はアストの件で散々な目に遭って来たであろう。

特にユリウス、其方はアストに対しては強い思いがあるのではないか? ん?」


「…………仰る通りでございます」


「アストは今や導師としての力に目覚めた。儂はなんとしてもあの力を我が手中に収めたい」



 導師の力をアストから奪い取るつもりなのか。

 そんな事が出来るのか……?

 チラッとザングレスの方に目をやった事から、アストも同じようにパイプに繋げて力を吸い取るのか。

 アーキノフの顔は自信に満ち溢れ、軽く笑みを浮かべやがる。

 読めて来たぞ。俺達をここへ呼んだ理由が。



「ユリウス・ザルベック!其方をラムリース国、最高司令官の位を授ける!其方の言葉は国王アーキノフの言葉となる」


「あ、有難き幸せ!!」



 す、すごいぞ……俺がラムリース国の最高司令官だと!?

 今の俺には勇者なんかよりも、遥かに大きな称号だ。

 くっくっく、待ってろよアストめ。

 俺はこのままでは終わらんぞ。



「ゼノス・ガーランド! クウォン・カミュラン!

ヴァール・ロックス! 三名は、ユリウスをサポートする司令官補佐に任命する」


「「「は!」」」


「良いか、まずはアストの信用を完全に落とし込むのだ。

相手は伝説の導師だ。様々な能力を使い熟すばかりでなく、仲間にも凄まじい恩恵が降り注ぐ。力では万に一つも勝ち目はないと思っておけ。頭を使うのだ」


「肝に銘じておきます」



 うむ、と頷いたアーキノフだったが、何かまだ言いたそうにしているな。頭の中で整理出来たのか、さっき見せていた感情的な顔は引っ込み慎重に話を切り出した。

声のトーンも、かなり抑えてあった。



「もう一つ任せたい事がある」



 何でしょうか、と俺は返事を返す。

 表情から察して俺に言い難い事なのか。



「其方達の任務に儂の息子を同行してやって欲しい。まだまだポンコツだが、世の中の厳しさ、綺麗事だけではやっていけない人生と言うものを、叩き込んでくれ」


「分かりました」


「うむ。よろしく頼んだぞ最高司令官ユリウス」



 俺達はまたアーキノフに連れられて、作戦会議室へと向かった。

 アストの信用を落とす……くくく、それなら俺の得意分野だぜ。

 見てやがれアスト! てめぇはこれから地獄へ落ちるんだ!


 くくく……くっくっくっくっ……!


 あーはっはっはっはっはっは!!!



次の第三十八話は19時頃を予定しております。


ブックマーク、評価、本作品に関するご意見などいただければ幸いです。


下の方に進んでいただくと☆☆☆☆☆と表示されていると思うので、本作品への評価、応援をいただければ嬉しいです。


大変モチベーションに繋がり、良い作品作りの励みになります。


貴重な時間を割いてお読みいただきまして、ありがとうございます。

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