第三十六話 戦獣王の娘
「なぁなぁ! 早くやろうぜ! 先生!」
瞳を輝かせながら、尻尾を左右にブンブンブンブン高速に振って……犬みたいな娘だな。
「あ、う、うん……じゃあ一度君の実力を見せてもらうよ」
「そらぁ!」
は、早い! リラティナスの蹴りを紙一重で避けたんだけど、まさかのスピードで一気に間合いを詰めて攻めて来た。
魔力を感じなかったから、あれは〝スキル〟じゃない。
恐るべき身体能力だ。
魔力に長けているネファーリアとは正反対のタイプ。
リラティナスは接近戦が得意なんだな。
《アスト、リラティナスってメチャクチャ格闘センスあるな〜!》
「だな。今の攻撃、スキルじゃなかった」
「わぁお⭐︎ やるじゃんかよ〜先生♡」
「いいから続けて」
「んじゃ、どんどんいくぜぇ〜!」
リラティナスの行動力がさらに上がってる。
消えたと思ったらササッと背後に回られた。スキルじゃないから魔力やオーラで攻撃を予測する事は出来ない。
とりあえず、このまま拳聖で様子を見るか。
「もらったぁぁ!」
「くっ!」
ガンッ!
腕と腕がぶつかり合い、衝撃が辺りに拡散する。
ふぅ……凄い破壊力。拳聖から直ぐに聖騎士に切り替えてガードを固めた。
その後、嵐のようなラッシュで僕に攻め込んでくる。
聖騎士のスキルで受け止めつつ、戦巫女の回避特性を利用してスッスッスッと完全回避。
「やっぱ先生スゲェな! あたしのパンチをこんなに受けてまだ立ってられるヤツ、初めて見た!」
「へぇ、それは根性がない人ばかりだったんだな」
「なぁなぁなぁ⭐︎ 本気でやってもいい? 先生とやりたい♡ なぁいいか?」
せ、先生とやりたいって……。
この娘の純粋な瞳を見てると本当に戦いが好きなんだなって思うよ。
本気か……。
「分かった。いつでも来ていいよ」
離れて見てるネファーリアに、分析士で一部始終を分析してもらって
リラティナスの弱点を見てもらってるんだけど、僕だけでももう既に一つ、弱点を見つけたな。
素早くパンチを打って来た。僕はバーサーカーの【リベンジチャージ】で攻撃を受け止めて、直ぐに【リベンジバースト】で反撃した。
今回初めて、反撃してみたんだけど思った通り。
彼女、防御面が全くなってなかった。
「うぁぁー!?」
あ、ちょっとやり過ぎたかな……。
信じられないぐらいぶっ飛んでいったんだけど……。
「いちちち……」
「だ、大丈夫か?」
「先生マジやばい♡ マジで凄いよ! あたしと普通にやり合った上に、反撃してあたしを吹き飛ばすなんて⭐︎」
「はっきり言うけど、君には弱点がある。それを大会までに克服する必要があるな」
「おお! あたしの弱点まで見抜いてたのかよ!」
こんな風に僕達は、朝から晩まで特訓を続けた。
戦獣族って言うのは、好戦的であるしスタミナがあるから、ずっと百パーセントで戦ってられる。
そう言う意味だと、僕が戦獣族と本気で戦うとしたら間違いなく短期決戦で決着をつけるかな。
さあ、そろそろ僕も疲れて来たよ。
流石に十三時間も何も食べずだったらお腹が空くよ……。
今日はここまで、と僕が言うとリラティナスが家に招待すると言ってくれたんだ。
「君の家へ? いいの? 僕達宿に泊まるけど」
「いいのいいの、家広いし! なんたって、あたしの先生なんだもん! えーいいんじゃんかぁ。んぎゅ〜⭐︎」
「な、な、な……!?」
リラティナスが僕にしがみついてきた。
それを目の当たりにしたネファーリアは両手で口を隠しながら、僕になんとも言えない表情を浮かべている。
何かよく分からないけど、物凄くネファーリアを裏切ってしまったと罪悪感に苛まれてすぐに引き剥がす。
「ちょっ、ちょっと……離れてくれよ!! わ、分かった! 行くから行くから!」
という訳で、僕達は訓練施設を出てリラティナスの家へと向かう事になった。
ごほん、と咳払いしたネファーリアが僕を呼ぶ。
「リラティナスさん、驚異的な身体能力ですね。分析してみると、アストが指摘した通り防御面が壊滅的なのと、彼女は魔力の使い方を知りません」
「え? そうなの?」
「意図的に使っていないのではなく、魔力の存在を無視してると言いますか……魔族なので存在を知らないという事はないと思いますが気になりますね」
「なら、使い方を教えれば」
「はい、とてつもないレベルアップを果たすでしょう」
リラティナスの家に着くや否や、その家の大きさに僕は思わず「うわあ」と口から溢れてしまった。
人間界で言うなら、貴族が住む屋敷三つ分の大きさ、しかもそんな所に彼女一人で住んでるって言うから驚きだ。
広いとは聞いてたけど、本当に想像を裏切る事ばっかりだよ。
食事も凄いんだ。食べた事ない料理が、ビュッフェ形式で大きなテーブルに置かれてあって、これがどれを食べても美味しいんだよ。
フュリンも出せ出せうるさいから、召喚して食べさせたら
泣きだしたんだよ美味しすぎて。
確かにカルチャーショックだった。
そんなこんなで夜も更ける。でも外を見ると夕焼け空で明るかった。夜と言う概念がない街だってリラティナスは言った。
魔界は不思議なところだな。
「あー! その小指ぃ!」
いきなり僕の手を掴んだリラティナス。
「先生ってメルトナで結ばれた人がいるの!?」
魔族はどの種族でも〝これ〟は共通認識なんだな。
ネファーリアの種族だけのものじゃない事がわかった。
「あ、うん……そこにいるネファーリアだよ」
「えぇぇぇーーー!?」
「分かる! リラティナス……あんたの気持ちは、ようーーーー分かるで」
そ、そんなに驚く事? フュリンも前に驚いてたけど、戦力アップの契約だろ?
「もうあたいからは、よう言われへんわ……。本当の事を知ってしまった時、死ぬほどびっくりするんやろな……あんたは」
「あの……あの、わたくしは……」
ん? ネファーリア?
そんな顔を赤らめてどうしたと言うんだよ。
「ズルい……! あたしもメルトナで先生と結ばれたいぃ〜」
「え?」
「先生♡ あたしを支配していいよ♡」
「だ、だ、だめ! ダメです!!」
第三十七話は本日12時、間に合わなければ18時までに投稿いたします。
これより下に星マークで評価が出来るのですが
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