表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/103

第二十一話 苦痛の先へ


「アノ・アルース・マティレム・ダミレウス。霊神ミレイネスの名の下に、穢れた御霊を還るべき黄泉へと誘い給え。昇天閃光柱ダージエルド!!」



 昇天閃光柱ダージエルドか。

 魂や霧の存在に効果的ダメージを与える術だから、シャドウにも大ダメージが期待できる。

 ネファーリアには手加減せずに思いっきり撃つように頼んでおいた。

 シャドウは複数体、一体でも生き残ったらやっかいだから、僕を殺すつもりでやらないと意味がなくなる。

 最初は戸惑っていた彼女だけど、最終的には分かってくれた。


 あとはこの術を受けて生き残っていられるかだな。

 戦闘系のシードは……フュリンは聖騎士、ネファーリアには戦巫女と霊神術士をそれぞれ与えてる。

 だから今僕の中にあるのは、拳聖と賢者の二つ。



「いや……シードは使わない」



 僕の予測よみ通り、シャドウがこの体に憑依してるんだったら、シードを宿す事で得られるステータス強化は、かえって逆効果だ。

 僕が強化される事でシャドウにも同じ恩恵を与えてしまうからな。

 なら、シードは使わず耐えるしかない訳だけど

霊神術と言う神の力を使う術であろうが、根本的には魔術にカテゴライズされるものであるはず。


 だったら……ついさっき目覚めた導師の特性を活かして


〝毒を食らって毒を制す〟のみ!

 植物の根が水を得てすくすくと育ち、やがて実を結ぶように、導師にとってもこれは〝水〟なんだ。

 新たなシードを育てる栄養なんだ。


 乗り越えた先には新しい閃きと力に出会える。



「耐えるしかないっ!!」



 ネファーリアが術を撃ってから約一秒経過した。

 もうそろそろ地面からとてつもなく眩い光が空に向かって流れてくる。

 と、考えてるところに光の柱が容赦なく僕の全身を包んで空に走っていく。

 聖なる炎に焼かれ、とてつもなく熱い。

 普通の人間だったら触れた瞬間に蒸発してる。

 いや、熱さは最初の数秒で既に感覚が麻痺したから、正直痛みは無かった。


 外側の痛みよりも中、精神体、つまり魂へのダメージ、苦痛の方が辛かった。

 僕の中でシャドウが暴れ回ってるせいだ。

 だからシャドウは間違いなく僕に取り憑いてる!



「あがぁぁぁぁぁ!!!!!」


「アスト!?」



 大丈夫だネファーリア。僕はこのくらいじゃ死なない。

 とは言え、僕の魂に張り付いて中々離れないシャドウ達も手強い。

 相当ダメージを食らってるはずなのに、必死に耐えてる。

 長期戦になると不利になるな……。


 フュリン、近くにいるんだろ?

 今、君に賢者のシードを与えた。だから魔術が使えるはずだ。



《アスト!? うん、宿ってるよ賢者!》



 一度経験済みだから、賢者の特性、分かってるよな?



《特性は……マナを使って術の効果を高める!》



 そうだ。賢者は術を発動すると体にマナが溜まる。

 マナは術の効果を倍増してくれるエネルギーだ。

 だから君はネファーリアに魔力強化と術力強化を行ってマナが溜まったら、発動した術に放って効果を上乗せして欲しいんだ。


 ネファーリアはきっと僕へのダメージの心配をして、魔力を抑えてしまってるから、彼女の基本魔力を底上げする術、そして術そのものの破壊力、術力を増大させる術を使えばシャドウも耐え切れなくなると思うんだ。



《アスト、あんた大丈夫なん!?》



 大丈夫。僕を信じろ。



《うん……よ、よっしゃぁ〜! やったるでー!》



 フュリンが術の詠唱に入った。



「うぐぅ…………ぁぁあああ!!!」



 魂が持っていかれそうだ。

 この感覚は……さっき僕が味わった感覚だ。

 そうか……シャドウ達は僕に取り憑き、魂そのものを攻撃していたのか。

 だとしたら普通の人間には手に負えない相手だ。

 僕達がやるしかない。



魔力増強アヴィリム!! ほんで……術力増強シキオン!! ネファーリア! アストを信じて思っきりやるんやで!」


「凄い……力が漲ってきます」


「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



 意識が……保てなくなる。これ以上は……。

 でもこの苦痛は、シャドウが必死で僕の魂にしがみついてる証拠、効いてる証拠だ。もう少し、あとほんのもう少しなんだ。



「ね……ネファーリア!!」


「アスト…………はぁぁぁー!!!!」



 ネファーリアの掛け声を最後に、目の前が白くなった。

 感覚がない。音も聞こえない。

 遠退いていく。ここまでか……。



「アスト!!」



 小さな体に四枚の薄い羽……。

 フュリンの背中が見える。

 まだ視界はボヤけてるし、意識が朦朧もうろうとしてるけど、地面に仰向けになって倒れてる……僕は生きてる。



大癒再生光ポアレムス



 耳元で静かに囁いたこの声は、ネファーリア。

 彼女の治癒術、癒しの光が体内の細胞に再び活力の火を灯し、それは一瞬とも言える時の流れで再生していく。



「ネファーリア……僕を信じてくれてありがとう」


「こんな無茶は、今回で最後にして下さいね」



 額にポツポツと雫が落ちてくる。

 魔族ネファーリアの表情は、僕達人間と何も変わらず、悲しい時、嬉しい時、悔しい時、涙を流す。

 こんな時に何考えてるんだと自分でも思ったんだけど、相変わらず綺麗だ。

 

 状況を把握しなければ、と立ち上がり周りを見ると、僕とネファーリアを守るフュリン、その先に五体の黒い塊が見える。



「シャドウ!」


「アスト、残り五体! それ以外はネファーリアの術で消滅したで!」


「よし! フュリン! ネファーリア!


反撃開始だ!!」

 



 

第二十二話は本日20時頃を予定しております。


ブックマーク、評価、本作品に関するご意見などいただければ幸いです。


また、本作品を手に取った方の中でここで執筆されている方がいましたら、紹介いただければ時間がある時に是非読ませていただきたいと思っているのでよろしくお願いします。


下の方に進んでいただくと☆☆☆☆☆と表示されていると思うので、1〜5で率直な評価をいただければ嬉しいです。


お手数をおかけしますが、こちらの応援の方もよろしくお願いします。


大変モチベーションに繋がり、良い作品作りの励みになります。


貴重な時間を割いてお読みいただきまして、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ