第十六話 たった今支配されました -Nephalia Side-
ついに……ついに言ってしまいました……。
わたくしの名はネファーリア。
魔界を統べる魔王ザングレスの娘です。
お父様が人間に倒されたとお聞きし、悲しみと憎しみに取り憑かれたわたくしは、お父様を手にかけた勇者の名前だけを頼りに人間界までやって参りました。
「え……っと、支配って?」
お父様の仇……アストを見つけ、復讐を果たそうと思っていたのです。
しかしアストはわたくしが想像しているような人間ではありませんでした。
アストは今でも父の仇だと、まだわたくしが復讐を諦めていないものだと思っているのでしょうね。
「ネファーリア? また何か考え込んでる?」
正直、アストに命を救われてからわたくしの心は一転しました。
仇や、人間はどんな生き物なのかと言う事、そして真実を知る事、これらは勿論一緒にいる理由なのですが、そんな事どうでも良くなりました。
わたくしは……わたくしは、アストの事が知りたくて知りたくてたまらないのです。
魂の契約をフェアリーのフュリンと交わされている事は知ってはいます……が。
胸がすり減り潰される思いでした。
そして、今朝のお風呂場でのあのハプニング……。
あの時は心の準備が出来てなかったので恥ずかしかったですが、あの事件から急加速にアストの事が気になって我慢出来なかったのです。
ですから……わたくしも……。
「ね、ネファーリア……そんなに思い詰めて何かあったのかい? 本当に大丈夫?」
「だ……大丈夫ではありません」
「え?」
「わたくしの事……し、支配して下さい!」
「さっきも言ってたけどその支配って、なに?」
「支配とは……わたくしを……あの……つまり支配とは……」
人間的ニュアンスで言うなら結婚に近いものなのです。
なんて言えません。言える訳がありません……。
わたくしにはそのような勇気はない。
けれども、仲良く連携なんて決めてるところを見せつけられると、もう黙ってはいられないのです。
わたくしも、パートナーとしてあのように信頼されたい。
わたくしも、アストの役に立ちたいのです。
「人間のニュアンスだと…………に近い……かと思いま」
「ん?」
「あ……あの、ま、まま魔族の場合は、戦闘もご主人様に一生を捧げると言う意味も含まれており、命を持って支え戦う事を意味します!」
「……そ、そうなんだ」
そうですよね。引かれてますよね……。
貴方からすれば憎っくき魔王の娘ですもの。
重々承知しております。
けれども……わたくしはもう決めました。
後には引けないのです。
「ち、因みに……」
一旦呼吸を整えまして。
「それと支配される事により、わたくしの魔力がさらに向上するので戦力アップと考えていただければ……なのですが」
「うん、何だかよく分からないけど、魔族の仕来りを学んでおく良い機会かも知れないし、君の魔力が上がるんだったら協力するよ。だけど僕はお父さんの仇だ。本当に僕なんかに支配されてもいいのかい?」
勿論良いのです。良いに決まってます。
あぁ…………わたくしは、アストに支配されるのですね……うふふ。
「ネファーリア?」
「……………………え、あ? は、はいっ!! ででは、契約を結んでいただけるのですね!?」
「うん、僕なんかでよければ!」
「あぁ…………」
まさかお父様の仇であるアストに支配されるなんて思ってもみなかったですけれど、この数日間一緒にいて人間に対する考え方が変わりました。
それもこれもアストのおかげなのです。
「正式な契約名称は〝メルトナ〟と言います。小指を繋ぎ結印術を用いて契約を結びます」
魔族の女性は生涯に一度だけメルトナを結ぶ事が出来るのです。
しかしこの事は、アストには内緒にしておきましょう。
なるべく負担に思われたくありませんからね。
わたくし達は小指を繋ぎ、メルトナを結びました。
あぁ……わたくしはアストのメルトナ……うふふふ。
たった今、支配されました。
「僕の小指に、魔族の言葉が刻まれた!?」
「わたくしの左小指にも、あります! これでわたくしはアストのメルトナです……!」
「ネファーリア、その……なんだか急に積極的になった気がするんだけど」
「本当のわたくしは、こうなのです!」
「ま、まあ元気でいてくれるのは僕も嬉しいけどね」
「アスト、そろそろ二回戦始めませんか?」
「え!? これからは流石に……お腹も空いて来たしね……へへへ」
六時間ぶっ通しでしたものね。
アストがそのように仰るのでしたら、お食事を済ませてからにしましょう。
魔族を繁栄に導く偉大なる父、魔導神様……わたくしはこの時よりお誓い致します
ここに結んだメルトナの名の下に、何時如何なる場合にもご主人様をお守りすると。そして、永遠の忠誠をアストに。
ルーミラ。
次の第十七話は本日19時頃を予定しております。
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