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第十三話 心情 -Julius Side-


 そんな…………セシルが死んだ?

 それも数日前に……?

 嘘だろ……冗談はやめてくれよ婆さん。

 あんたはいつも変な嘘をついて、あとでゲラゲラ笑いながら嘘だって言うような人間だよな。

 今回もそうなんだろ? なあ、ゲラゲラ笑って嘘だって言ってくれよ……。



「処刑されたって聞いてるよ。

アストが追放された話はあんたも知っとると思うが、あの子はアストの罪を庇ったそうだよ」


「罪を庇っただと!?」



―其方はコマだ―



「うぐ!? ……ぁ」



 また……だ。頭が割れそうに痛い。



「ん? なんだい? 何処か具合が悪いのかい?」


「……いや、何でもない」



 はぁ。と深い溜め息をついて話を続ける。



「あたしにとっちゃ、アストもセシルもそしてあんたも可愛い子供だからね。罪人だろうがあたしの所で育った人間はみんなあたしの子供さ。アストはガキンチョの頃から心優しい子だったし、罪を犯したなんて未だに信じられないよ」



 俺とアスト、そしてセシルはキナ婆さんの孤児院で育った。

 俺達三人は同い年って事もあっていつも一緒にいた。

 ちょうど二年前、俺達が十二になった年、孤児院を卒院する事になる。

 

 これは婆さんが決めたルールで十二になると、自分の力で生活出来る年齢に達したとみなされて孤児院を出される。

 俺達はそれぞれの道を進む事になった。

 

 俺はセシルの事を愛していた。 だがそれはアストも同じだった。 昔から俺とアストは何かにつけて競い合い、お互いをライバルと見ていたんだ。

 武芸、学力、芸術、ありとあらゆる分野で俺はアストに勝っていた。

 そんな俺でもたった一つだけ、あいつに勝てなかったものがある。

 

 孤児院を出る最後の日、セシルに気持ちを伝えた。

 容姿も中身も完璧だった俺の事を断る理由などないと思っていたが、セシルの答えはノーだった。

 理由を聞くと他に好きな人がいるんだと言った。

 

 その相手はアストだった。


 その時から俺はアストに対して異様な執着心を持つようになっていった。

 あいつの何に惚れたのか全く理解出来なかった。

 何故なら俺は全てに於いてあいつより勝っていたからだ。


 そしてアストは勇者に選ばれた。


 俺はセシルの事で絶望の底の底まで落ちたんだと思っていた。 だがまだ底じゃなかったんだ。

 やがて執着心は憎しみに変わった。

 そこで俺はある計画を立てる。


 勇者選定の儀式をぶっ壊せばいいんだと。

 丁度その頃、巨大な魔物がラムリース北にあるサンラッカ山に出現したと話題になっていた事を耳にしたんだ。

 絶妙のタイミングとはまさにこの事、俺はギルドで忠実に従う戦士だけを五十人程集めた。

 俺の言う通りにやれば、一人五十万キャルトを出すと。

 みんな了承した。


 誤算だったのが、アストは魂の契約を終えてしまっていた事。

 魔物を誘導するのに結構手こずって間に合わなかったんだ。

 だが結果的にあいつは勇者の力を失った。



 これで俺が勇者になればきっとセシルも考え直してくれるはず。

 そう思ってたのに、アスト……てめぇがセシルを巻き込んだんだな。

 


 「クソ野郎のムシケラが!!」



 何でセシルを巻き込んだんだ!


―何故だ!? 何故セシルを!!―


 何でセシルを守らなかった?

 てめぇも愛してたんだろうが。

 俺の中でどんどんと怒りや憎しみが増幅して来る。

 婆さんの声も、タニスの声も何も聞こえない。

 

―其方は儂のコマなのだユリウスよ―



「ぐぅ……なんなんだよぉぉ!!」



 アスト、てめぇは絶対に許さん。

 楽に死ねると思うなよ。

次の第十四話は8月16日21時頃を予定しております。

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