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第十一話 導師について


 ん……なんだ? なんの音だ?

 サーッと言う音に目を覚ました。

 閉まってるカーテンの隙間から少し日差しが漏れてる。

 もう朝か……いい天気だなって、あれ? 雨の音じゃなかったんだな。

 ならこの音は何なんだろうと、僕は寝室のドアを開けて広間へとやって来る。誰もいない。

 ネファーリアはまだ眠ってるんだな。


 音は広間の奥から聞こえてくる。

 

 風呂場か……。



「……もしかしたら蛇口閉め忘れて」



 昨日は半分眠りながらシャワーを浴びてたから、ちゃんと閉めてなかったのかも知れない。

 と、僕は急いで風呂場に向かい扉を開けるとフワッと湯気と共に石鹸の良い匂いが漂った。

 僕の瞳の中には、目を閉じて気持ちよさそうにシャワーを胸に当てながら浴びるネファーリアの姿が入っていた。



「ね、ネファ!!!?」


「え!?」



 すぐに扉を閉める。この間二秒もかかってなかったはず。

 気がついてすぐに行動したから被害は少なくしたつもりだ。

 そして僕は何度も何度も念仏を唱え続けながら広間の椅子に座る。



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


《ふわぁ〜。な、なんや朝っぱらから……。何がごめんなさいやねんな》


「し、知らないなら知らないでいい! 寧ろ知る必要はない!」


《はぁ〜? あんた変な夢でもみたんかー?》


「見てない! あ、いや……見てない事はないけど、すぐに閉めたから!」


《閉めたって? 何を?》


「ごめん! まさか入ってるって思ってなかったんだ!」


《も〜アスト、何を言うてんねん。誰に対して謝ってんねんな》


「ごめん! 本当にわざとじゃないんだ」


「もういいですよアスト」



 振り向くと、風呂場からバスローブを着たネファーリアが立っていた。

 のぼせているのか、恥ずかしいのか、顔がほのかに赤く

 バスタオルで口元を隠しながら僕の方をチラッと見る。



「ね、ネファーリア……その……ごめん! さっきも言ったけど、入ってるの知らなくて……」


「わたくしの体……見たのです…か?」


「いや……………………はい」


「恥ずかしい……」


《え、えぇぇ〜!? アスト、あんたまさか……ネファーリアの裸見てもーたんかいな!?》


「ごめん! で、でも誤解はしないでほしいんだ! 決して邪な気持ちで見た訳じゃ……」


「今日修行ですよね……時間になったら向かいますね」


「あ……うん……」



 ネファーリアは恥ずかしそうに部屋に戻って行った。

 僕は心のどこかで〝魔族だから〟と言う気持ちがあったのかも知れない。

 人間と変わらないとは言っても、まさかお風呂に入る習慣なんてないだろうと思い込んでたんだ。

 さっきのネファーリアの恥ずかしそうにしてた顔、ずっと冷静な彼女を見てきたから、あんな表情を見た時に本当に女性なんだなって思い知らされたよ。

 今度からは魔族だからって言うのは考えないようにする。

 ネファーリアは間違いなく女性だ……色んな意味で。







 今日を入れて三日間、僕は導師としてのレベルを上げる為、修行に入る。

 その前に導師とは何なのか、よく分かってない事が多い。

 力が覚醒した時、僕はこの力が何なのかも分かってなかった。

 教えてくれたのはフュリン。

 彼女はフェアリーであり中でも大精霊の称号を持つフュリンの知識の量は世界最大の図書館にも匹敵するだろう。

 腰を据えて導師について聞く事は重要だし、僕は知る必要がある。

 座禅を組んで心を空っぽにしながら、フュリンから導師についての話を聞く。


 まず初めに、僕は二代目の導師になる。

 初代は遥か古の時代の人らしい。

 僕はそれ以来という事になるから、フュリンも凄く驚いてた。


 余りにも昔だから、導師の記録と言うのも残ってなくて数万年に一度現れるかどうかの伝説の救世主と言う存在らしい。

 勇者を含めた戦士達に力と希望を与え、平和へと導くのが導師だ。



《導師は戦士達に力と希望を与えた。力って言うのが、あんたが言う〝シード〟やね》


「そのシードも僕の中から生まれるもの。つまり才能の種は、僕が生み出す」


《せやせや!》


「でも、これに関して分からない事があるんだよ。シードを生み出した記憶が全くないんだ。感覚だけど、元々あったものを与えたような気がする」



《その感覚は正しいかもな! あんたが与えた聖騎士、拳聖、賢者、戦巫女は遥か古の時代に既に誕生してたシードなんかも知らへん》



 そうか。

 なら初代の記憶も僕は引き継いでるって事なのか。



《導師の力に目覚めて、まだ間もないし少しずつ馴染んでいくんやろね。ほら、ネファーリアと戦った時の事思い出してみ! あんた、咄嗟に力の使い方分かったやんか》


「そう、そうなんだよ。元々答えがあって、何かのキッカケで鍵が外れたら解放されるような気がする」



 ただ、僕は【シード】そのものを自分で育てる事は出来ないみたいで、育てるのは「誰か」なんだよな。

 だから例えば聖騎士を今以上にもっと強くするには、もう一度誰かに与えないとダメなんだ。

 この理屈でいくと普段はネファーリアの中に入れてもらった方がいいな。



《そこまで分かってたんやな!》


「まあ……〝鍵が外れた〟のかもな!」



 よし、瞑想はこの辺でいいだろう。

 次はネファーリアとの戦闘訓練だ。

 今朝あんな事があってから一言も話してないんだよな。

 気まずいけど……ネファーリアの方はどうなんだろう。

 一応時間になったら、トリークから北にある「緑風の森」で待ち合わせするようにしてあるんだ。

 来てくれてるかな……と思って来てみたけど、ネファーリアの姿はないな。


 まだ来てないのか。



《乙女心をぐしゃぐしゃにされたからな〜! 傷ついて部屋で泣きまくってるできっと〜!》


「そ、それはまずい!! 行ってもう一度謝らないと!!」


《ぷ……ぷぷ……ぷはぁ! あっはっはっは! あーおっかしぃ〜! うそうそ〜大丈夫大丈夫〜!》


「…………お前な〜!!!」


「何してるのですか?」



 先に来ていて一部始終を見てたのか、到着して今目に入ったのか、その答え次第で恥ずかしさの度合いと説明の量が変わってくるんだけど、そんな事言える事もなく。

 今朝の事がなければ聞いてたかも知れない。

 フュリンの事は前に話してはいたんだけど、それでもこんな誰もいない森の中で、一人でわちゃわちゃしてれば、聞きたくもなるよな。

 明らかに不審者だからな。

 僕はさらっと軽く説明だけすると、ネファーリアと戦闘訓練に入った。

次の第十二話は8月16日朝19時頃を予定しております。


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