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マイナス100Lvの最強国王  作者: 青浜ぷりん
一章 最強国王の悲劇
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三話 慰労会

異世界でも未成年飲酒はダメです。


 俺がディエゴの魔法能力を継承した日の夜、城の中では盛大なパーティーが開かれていた。

 俺が魔法能力を無事継承出来て王の座を継いだことと、国王ディエゴの慰労会の意味も込めてである。


 ディエゴの能力を継承した後、俺はベラという女の魔法使いのレクチャーの下、魔法が使えるのかを軽く試してみた。


 感想は、まさに俺TUEEE――といったような感じだ。

 火の魔法ヒーラは煌々と輝く爆炎。

 水のアクオーラは全てを無慈悲に飲み込んでしまいそうな勢いの激流。

 風のエーラはまさに疾風迅雷で、何もかも攫って無に還してしまいそうな爆風。

 本来魔法能力は自力で磨かなければいけないが、ディエゴの魔法は凄まじく、継承時点で俺の能力はほぼ100Lvらしい。


 そして、俺がディエゴから継承した魔法は最上位魔法という種類らしい。

 この世界では魔法の種類は、最上位魔法、上位魔法、通常魔法に分けられている。


 そして使用する魔法のグレードにより発動した時の魔法陣の色も異なる。

 最上位魔法→金固定 上位魔法→銀固定 通常魔法→使用する魔法の種類のイメージカラー(例:ヒーラ→赤 アクオーラ→青)といった具合にだ。


 また、最上位魔法はハイ、上位魔法はミドという言葉が頭文字に付けられる。

 (例:最上位魔法のヒーラ→ハイ・ヒーラ 上位魔法のヒーラ→ミド・ヒーラ)という感じ。


 ちなみに名前をわざわざ詠唱したりしなくても魔法は使えるようだ。

 そして魔法には本当に多くの種類があり、様々な魔法を扱う人間がこの世界にはいるらしい。


 ここまでがベラから聞いた魔法についての情報である。

 まだまだ学ぶことはあると思うので、ベラがくれた魔術本という本を使って少しずつ学んでいこうと思う。


 それより今俺がやらなければいけないことは――


「トウゴ様!さぁこちらへ! 私と一緒にディナーを楽しみましょう?」

「あ、ズルいわよ! トウゴ様、私の方がトウゴ様に相応しいですよね?」

「おいお前ら、トウゴ様に色目使ってんじゃねーよ! トウゴ様は俺達と飲むんだよ!」


「あはは……皆元気だなぁ。まぁ皆で楽しもうよ……」


 国王になれば女の子はいくらでも君に寄ってくるだろう、とディエゴは言っていたがそれはどうやら本当らしい。

 パーティーでは皆が俺をひっきりなしに呼び止めてはディナーやら飲みやらに勧誘してくる。

 ――いやいや、俺まだ十九歳なんだが。未成年飲酒――は異世界だから別にいいのか?

 うん、セーフって解釈しておこう。


 何より今は本当に気分が良かった。

 世界最強の王になった優越感や、皆が俺を認めてくれることで承認欲求が満たされていく。


「悪い、俺ちょっとベラの所行ってくるわ。魔法教えてもらったし、これからも世話になるだろうから。戻ってきたら皆でまた飲もう」


 えーー、と少しブーイングが起こったが俺はベラの所へ向かった。

 後で俺を異世界に連れてきてくれたイーナさんと継承を手伝ってくれたロッシュ、タナーの所にも行くつもりだ。


「よぉ、ベラ。隣いいか?」


「ト、トウゴ様! はい、大丈夫です……」


 頬を赤らめてベラは言った。――可愛い。

 肩ぐらいある紫色の髪は艶があり、妖艶な雰囲気を醸し出している。

 そして巨乳。巨乳の魔法使いとか最高の組み合わせだろ。


「悪いな、色々魔法とか教えてもらって。これから学ぶことも色々あるけどよろしく頼む」


「はい! 私に出来ることなら何でもお手伝いします。最強魔術師のトウゴ様の足手まといになるかもしれないですが……」


「いやいや、頼りにしてるよベラ。まだこの世界のこととか全然分からないからさ、色々教えてくれると助かる」


「はい! 一緒にこの世界のこともたくさん学んでいきましょう!」


 そんな会話を数分してベラに別れを告げると、パーティー会場にいる人達が俺を見るなりディナーに誘ってくる。

 バイキング形式のディナーなので席を移動して色々な人と会話を楽しめるのはありがたい。


 ――だが、皆が俺を認めて好きでいてくれるのは嬉しいんだが、俺はほんの少しだけ気になることがある。

 まだ皆と出会って一日も経ってないから皆は俺の内面や経歴はあまり知らないはずだ。

 なのにここまで俺を崇め奉るのは何故だろう。俺が王だからか?

 何はともあれ、自分を認めてくれる人達を疑うなんてやはりどうかしている。

 変に邪推しても得られるものは何もない。


 俺はイーナ、ロッシュ、タナーの所に向かうことにした。


 ~◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇~


 パーティーが終わった夜、俺は天蓋付きのプリンセスベッドがある自室に戻ってきた。

 改めて見ると本当に異世界ファンタジー感満載の部屋だ。

 高級な白の壁、フローリング、高い天井には金のシャンデリア。机も上質な木材が使用された高級机。

 アニメのフィギュアやゲーミングPCが主なインテリアだった俺の部屋とは大違いだな。

 本当に人生は何が起こるか分からないな。あんなに気怠かった生活が、一瞬で俺TUEEEのハーレム生活に変わるんだから。

 今まで惨めな思いをしてきたのだから、異世界では順風満帆な日々を送らせてやろうという神様の粋な計らいだろうか。


  ――今日はいろんなことがあった。リアルでの生活が全部嫌になって東京まで行って、異世界に転生して王子になって……そうだ、俺はこれから全てが上手くいく人生を歩んでいくんだ。

 もうあの日々には戻らなくていい。

 これから俺はバン王国の王として煩わしいことを全て忘れて第二の人生を歩んでいく。

 大丈夫、今の俺なら出来る。俺は100LVの最強国王なんだ。


 そう強く誓って俺は眠りについた。


 ~◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇~


「おはようございます、国王様」


 俺が一通り身支度を終えて王室に入ると数十人の部下が俺を出迎えた。

 今日から国王になるということで、服装も昨日来ていた黄土色のダサいパーカーから国王らしい服装に着替えさせられた。

 青を基調とした服に金の刺繍が施されていて、現代っ子の俺にはどうしてもコスプレの衣装に見えてしまう。

 だが部下である彼らからしたらこれが正装なのだから、そんな失礼なことは口に出来ない。


「おう、おはよう皆。改めてこれからよろしくな。俺も国王として精一杯頑張るから。それで早速なんだが、一つやりたいことがあるんだ」


「なんでしょう?」


「この世界をある程度知っておきたいんだ。だからそこまで遠くない場所でいいからバン王国と周辺の村や街なんかに連れて行ってほしいんだ」


「そういうことなら、この私ベラが案内します。バン王国と、近くの村をいくつか見て回りましょう。仕事は暫く他の者に手伝ってもらいながら進めますから心配はご無用です」


 真っ先にベラが名乗り出ると他の皆も口々に俺を案内したいと言い出す。


 ――数分間話し合いが行われたが、結局魔法使いのベラと、国一番の腕らしい青髪の剣士のソワンの二人に案内してもらうことに決まった。


「トウゴ様、この世界には危険な魔物が存在します。ここらは発達していますが村などは整備があまり整っていない場所もあります。トウゴ様の力で討伐できない魔物は少ないでしょうが万が一の場合は俺とベラでお守りいたしますので」


「魔物もいるのか。あぁ、多分倒せるとは思うがよろしく頼む」


「では行きましょうか、トウゴ様」


 ~◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇~


「スゲェ……」


 俺達は馬車に乗って城から道に出た。

 バン王国の街並みは世界最強の王であるディエゴが統治していただけあってかなり発展している。

 高級そうな造りの三階建ての家。入口が豪華な装飾で彩られて店内もオシャレなレストラン。綺麗な噴水や緑豊かな公園。

 こんな良い所に住んでいる人間は、皆順風満帆な生活を送っているだろう。

 しかし、バン王国以外の国もこれだけ発展しているのだろうか。

 ここまで街を発達させるのにどれほどお金がかかっているか想像もつかない。


「トウゴ様だ! トウゴ様が街に見学に来られた!」


 一人の男がそう叫ぶと、次々と人が集まってきて口々に俺の即位を祝ってくれた。

 確か明日の夜に正式にスピーチを行わなければいけないとベラに聞いていたが、既に俺はおおよその住人には歓迎されているみたいだ。


「皆、わざわざありがとう。俺がこの国の新国王、六宮冬悟だ。よろしく頼む」


 ――ん?血は繋がってないとはいえディエゴの後を継いで国王になったってことは、俺はトウゴ・エベールってことになるのか?

 いや、やっぱり六宮が一番しっくりくるな。


「トウゴ様! 俺達は国民という立場ではありますがあなたをサポートできるよう尽力しますので、何かあれば遠慮なくおっしゃって下さい!」


「おう、皆ありがとう。皆に迷惑かけたり頼ることもあると思うけどよろしく頼む。皆で良い国を作っていこう!」


 ワアァッ、と民衆から歓声が上がる。


 うむ、我ながら神対応だ。

 正直言うと俺にリーダーの資質なんて無い。

 では何故こんな良い感じにリーダーシップをとれているかというと、ここが異世界だからである。

「おいトウゴ、お前またエロい本読んでんのか? 表紙の奴胸でかすぎだろー(笑)」

 と大学で同級生に絡まれていた人間とは思えない。


 ――やめだやめだ、もう思い出すな。俺は最強国王なんだ。


「さぁトウゴ様、バンを出ますよ。ここから少し走ってレザンス村まで行きましょう」


 馬鹿なことを考えているとベラがそう言った。


「あぁ、分かった。そこへ向かおう」


 俺達はバンの門を出て、レザンス村という場所に向かい駆けていった。

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