01-11 竜との出会いバグってる
「戻るか……。」
てか、1人でさっきの場所に行けるかな。
なんか、選ばれし者にしか行きたい所にいけない的な感じじゃなきゃいいんだけどな。
……って。何で、こんな所に岩山があるの?
フラグかっ!!俺はフラグを立てていたのか!
「くっ、どうしよう!」
これが山で遭難するって事か!どこがどこだか分かんねぇ!
しかも、目の前にあからさまな洞窟がある。
入れってことか、入れって事なのか!?
いや、ひとまず登ってみるか。能力使えばいけるだろ。
「………。」
………?能力使えない。まさか、ここは夢なのか?でも、夢には現実味があるが、鮮明さはない。
何より、何か威圧感を感じるな。
竜の聖地って、人がうろちょろしていいとこじゃないんだな。
おい。本当にまずいぞ。自滅する時って、いつも冷静な所から焦りへと落ちてくからな。
まさにそれだぞ。
いや、考えろ。いくら幼いこの脳でも、中身まで幼いわけではない。
まずいな。分からん。「ここで様子を見よう」とか言ってたら、孤独のままで、「ここがどこか把握しよう」とか言ったら、余計に迷子になって……。
待てよ。ここは異世界だ。というか、異世界系だけじゃなくて、ファンタジーのお決まりと言えば、とにかく危険に向かって走って展開が生まれる事だ。
それに従えば、俺はこの洞窟に入る義務がある!
「入るか。」
辺りを見渡してからの、一言。自然な流れだ。
中々涼しい。地面もそれほどゴツゴツしてない。周りは……これ、爪痕?
〈………っ!〉
この響く声、相当高位の存在だな!
竜か!
「あっ、すいませーん。お邪魔するつもりは無かったんです。気づいたらここに来てて……。」
〈……何となく、理解した。〉
随分と優しい物言いだな。フィンについてる精霊なんて、仰々しい喋りだからな。
もしかして、ちょっと若い竜か?
〈こっちに来て。そこに居たら、お互い見えないだろう?〉
「はーい……。」
ん?何だこいつ。デカいぞ!めっちゃデカい。尾だけでブルやヴェールに匹敵するぞ!
〈やぁ。自己紹介しようか。〉
あまりの黒さで、奥の暗い洞窟の背面から、浮いているように見える。
ひたすらに「巨大」を体現したような体に、紫の目。ブルやヴェールとは正反対だ。全てを焼き尽くすような魔力を体に抑え込んでいるのが、ありありと分かる。
これは、
〈僕は黒竜、リュミエールだ。最も、黒竜は旧姓で、今は邪竜だなんて扱いだけどね。〉
「リュ、リュミエール様…?」
俺が8年間、魔族の感性で生きてきたから分かる。これは神々しい。恐ろしく美しく、神々しい。
そして、俺の前世と今の、人の感性で言えば、禍々しく、忌々しい。
〈嬉しいよ。僕を美しいか、穢らわしく見るかで悩んでくれるのは。全ての存在はもちろん、妻にも子にも避けられてね。傷心だったんだよ。ありがとう。〉
くっ、この言葉を聞いて、感動と嫌悪が交差する!
致し方ない!これだ!
ー特殊能力:種族変換ー
これで、心置きなくひれ伏せる。
〈ほぉ、魔族か。今、魔神はどうしてる?2人目の魔王が倒され以来、会ってないんだ。〉
どっ、どうする!
どうにか都合の良い事実を知ってほしいが、この方に、嘘はつけない!
「魔、魔帝に、魔帝を名乗る悪魔に、………倒されました。」
〈魔帝?倒された?………ハハハハハハハハハハ!彼も不幸だな!僕と関わったのが、運の尽きだったわけか!ハハハハハハハハハハ!!いやぁ、愉快だね、世界は。ありがとう。これで、後千年ぐらい、孤独死を遅らせられるよ。〉
「あっ、あの、魔神様がいらっしゃらないとなれば、魔界が消えてしまうんです!何か、ご存じないでしょうか!!」
〈多分、その魔帝が1番魔神に近いだろうから、殺せばいいよ。そしたら、いずれ君も、魔神になれる。後、もうここに来ちゃいけない。僕の妻が、今血眼になって僕等を見てる。この洞窟を出たら、適当に歩いてね。そしたらすぐに、望みの場所に着くから。さっ、返事はいらない。行って!」
「……!?」
ー下級能力:種族変換ー
人に戻ると、寒気がするなぁ。
しかし、魔帝を倒せば魔神になれる。エクシズに強力する理由が、ますます深まったな。いくら魔神に支えられていたとはいえ、魔界がそれ程脆くない事を祈ろう。
リア、俺は君を、何1つ失わせる事なく、親の元へ戻す!そして父さん、母さん、次会う時は、魔族の英雄として戻ってくるよ!
ん?あれ待てよ。あまりに複雑な感覚で忘れてたけど、確かヴェールは邪竜がお父さんだど言ってたな。
すると何か?この展開はヴェールに仕込まれたのか?俺は出会って早々、他人の親に挨拶しに行ったのか?恥ずっ!中々のやり手だぞ、あいつ。
おっと、もう着いたぞ、広場に。後ろには……もう岩山なんて見えないか。
ドサッ
「ふん!中々やるなあ、フィンっ!!」
あら。フィンさん倒れてらっしゃる。
「……!いやいやいや!!ローグの後に戦ったら霞みますよ!!今の僕の最大の能力、凄く地味なんですよ!!」
「確かに。お前は見た目もパッとしないからな。今度からは、ローグの様を見られないように、先にボコボコにしてやるから、安心しろ。」
凄い言われよう。
でも、今喋ってるって事は、対戦は終了したって事だよな。それで今こうやって会話出来てるのって、俺からすれば凄いかも。
「おっ、ローグ!目が覚めたか!!じゃあ、目が覚めなくなるまで、戦おうか!!」
おい待てよ脳k――!