01-10 魔王ノ力バグってた
「ごめんなさい、この子恥ずかしがり屋で。」
ルージュという美少年(竜)を見た俺達は固まっていた。
「こ、これは、本当に皆さんの弟何ですか!?」
「はい、そうです。」
弟と言われれば、確かに顔つきは似ている。翼の形と尾の形も似ている。
しかし、既に整いすぎた姉妹の顔に、さらに上方修正を加えたようだ。
なおかつ、赤髪と黒髪が混じっていて、瞳は赤黒くなっている。
かっこいい!
これがいわゆる、神が利き手で描いた顔、という奴か。
「さっ!ルージュ!入って入って!これからしばらく一緒に暮らすんだから!」
一緒に暮らす!?
あぁ!
「よろしくおねがいします。」
あれ?人見知りかな。もしかして、人が嫌いだったりする?いや、俺が魔族だから嫌なのか?テールズ師匠も一発で見抜いたし、俺、意外と邪悪に映ってんのかな?
「じゃあお前ら、善は急げだ。早速訓練するぞ。」
えっ?もっとこの美少女の姿を噛みしめたいのに……。
「頑張ってね!皆さん!」
「ヴェル、慣れ慣れしんじゃないの?」
「嘘!?皆さんごめんなさい!」
何この掛け合い、可愛いな。
しかし、こんな美少女に頑張れと言われたんだ!
がんばるぞ!!
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俺達はテールズ師匠に吐き出された場所に戻ってきた。
「よぉし!訓練開始の前に、お前等の実力確認だ!」
「いや、師匠の唾液で、僕らまだ凄いままなんですが……。」
「じゃっ、まずはローグからだ!確か剣を使うんだったな。」
ー固有能力:竜装・剣ー
「ほらっ!国宝級の竜剣だ。これ使え。」
無視かよ…。
だけど、物凄いオーラだ。何重にも魔法が付与されてる。それに何より、重みがない!
赤のグリップに、橙色の半透明の刀身、その刀身を斜めに半分覆うように付いているガード。
昔、エクスが魔王として人と戦争してる時に、盗もうとして、痛い目を見た剣だ!
「こっ、こんなの使っていいんですか。」
「あぁ。武器ぐらいは対等かつ、最強にしときたいからな。」
こんな武器見せたられちゃったら、黙るしかないな!なんか楽しいな!!
「じゃあ、行きますよ!!」
「あぁ!!お前の本気!見せてみろ!」
ー上級能力:超魔力ー
ー下級能力:感覚強化ー
ー下級能力:身体強化ー
ー超越能力:超越剣ー
あっ。しまった。癖で能力使っちゃった。
ー固有能力:奇跡ー
ー能力取得ー
ー究極能力:邪竜剣ー
ー究極能力:聖竜剣ー
ー能力併合ー
ー伝説能力:神竜剣ー
「あれっ?何これ?」
「そそそそそ、それ!神竜剣か!伝説の、初代竜装騎士でも得られなかった!神竜剣か!?」
「いや、それほど神々しくない……。というか。竜剣に超越剣の力流し込んだだけです。」
「これが、勇者と魔王に選ばれた人間の力……か。」
あれ?なんかがっくりしてるな?そんなにショックだったのか。もしかして、竜装騎士になったからには一度は能力、的な感じか?
「いや、いい機会だ!このまま戦うぞ!!来い!」
「了解です!!」
ー伝説級能力:神竜剣ー
どうせ勝てないんだ!
全速力、最大出力でやる!
「紳士ルールでタイマンか!いいだろう!」
剣のぶつかり合う音は聞こえない。剣に込められた大量の魔力が衝撃も音も全てを吸収し、光を吐き出す。
防御はしない。攻撃はされない。全てを吐き出す。
しかし、テールズ師匠の腕に力は込められてない。
クレンやフィンと共に魔物を狩った時も、魔王ギアレスの時も、今も、使っている能力は最高である。
俺が弱いのだ。
ガッ
ガッ
一心不乱に剣をふるっている。数秒に一度、俺は優勢になるが、その度に強い返しの一撃がくる。
俺は今試されている。
しかし、段々鈍い音がなってきた。急激に魔力を使いすぎたせいだ。
「ローグ、限界か!?」
いや、まだだ!
ー固有能力:奇跡ー
ー下級能力:身体強化ー
ー能力進化ー
ー中級能力:高身体能力ー
また能力を得たみたいだ。
絶対に、まだ終わらせない!
ー中級能力:高身体能力ー
「そうだ!!そうこなっくっちゃなぁ!!」
剣を速く、そして強く!
攻撃される事は考えるな!
ガキィィン
やばいっ!吹っ飛ばされた!バランスをとってる暇ない!ここは防御だ!
俺の魔力を相殺したとなると、きつくなるぞ。
「これに耐えれるかい!?」
ー固有能力:竜装・凸ー
え?これは無理だろ。
鎧硬すぎ。
移動早すぎ。
剣、強すぎ。
身体強化に、感覚の強化が追い付いていなかった。
何とか反射で動いていたが、既にテールズ師匠は正面にいない。
目で追うより速く、背後にまわられた。
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……。
ん?
ここはどこだ。
「てか、痛ぇ。そして……強ぇ。」
あぁ。光が眩しいな。まさか、この世界に白熱電球に代わる物があるなんてな。
「ローグさん……起きました?」
あっ、天使だ。後ろで尻尾が動いてる。可愛いな。
「何となく感じてましたけど、ホントに魔王ノ力も勇者ノ力も持ってるんですね。」
あれ?怒ってる?まぁ、魔王ノ力なんて、人間界じゃあ良いもんじゃないだろうな。
「ごめんなさい。急に変な事言って。私達のお父さん、魔王ノ力を持ってるの……。」
「というより、魔王ノ力って、元々お父さんの物だったのよ。」
?聞いた事ないぞ、そんな話。
「初代の魔王が、お父さんと契約してから、魔王ノ力って言われるようになって。」
古の歴史を軽々と語ってる!さすが竜!なのか?
「お父さん、『邪竜』って呼ばれてるのよ。それにお母さんは、瘴気が凄いから、って、会わせてくれないの。でも、そんなの嘘よ。」
既視感!!協会の紋様で、魔神の周りを竜が飛んでた!邪竜ってそれか!
「あのっ、多分ヴェールさんのお父さん、魔界だと愛されてるから、そんなに悲しまなくても……。」
「急にごめんなさいね。ローグくんに、ホントは話すつもりは無かったんだけど……。でもローグくん、見た目の割に、フィンさんより知的な様子だったから。あっ!フィンさんの悪口じゃないよ?別にフィンさんがどうとか言ってるわけじゃなくて…。」
俺褒められた??俺褒められたの!?
「ローグくん、お父さんと同じ匂いがするの。これはあんまり言いたくないんだけど………。凄く綺麗な、純潔な、魔王ノ力を感じるの。」
……?
「お父さん、ずっと独りぼっちだろうから……。もしかしたら!ローグくんなら!その瘴気も大丈夫じゃないのかな?って……。……ごめんなさい!!」
ガチャッ
あっ、出て行っちゃった。
……。
で、会いに行けって事かい?