01-09 この可愛さバグぐってね?
「「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。」」
俺等はテールズ師匠もとい、竜の口から吐き出された。
「グッ。ローグ、見たか?口の中mっ……おえぇぇぇぇっ!!」
フィン。愚かな奴だ。俺は怖くて一度も目を開けてない。それに口呼吸したんだ。考えうる限り最大限の五感を断絶を図った。
やはり、俺のほうが一枚上手だな。
〈着いたぜ。竜の聖地だ。〉
「なっ!何で食う必要があったんですか!!」
<えっ?そりゃあ竜が絶滅危惧種だからだろ。竜の住処の場所を、そう易々と言えないんだ。>
なるほど。言われてみれば確かにそうだが、納得できん、この運び方は!
人から竜になれるぐらい器用な事なら、もっと他のやり方を検討してほしい!!
「さて諸君、ここは土から雑草までの全てに、『竜の加護』が染みついてる。生半可な攻撃じゃあ、衝撃波さえ消されちまう。」
そう言って、テールズは人の姿に戻っていった。
素人でも分かる程に太く、長く、歪に曲がりくねった長寿の木が円を成すように俺達を取り囲んでる。
この場所は、長い歴史を持っているのだろう。
「よし、じゃあこっち来い。会わせたい奴がいる。」
会わせたい奴?ここに人がいんのか?
「ブル!ヴェール!!こっち来ていいぞ!!」
ドシンッ
ドシンッ
ドシンッ
木々の隙間から大きな桃色の目が輝いた。
言うまでもなく、人間のものではない。
すると、恐ろしい轟音と振動と共に、1匹の竜が、俺等の目に前に現れた。
テールズ師匠は相変わらず普通の顔をしている。
「う、うわわわわわ!竜だ!青竜だ!!」
本日2度目の語彙力喪失!
「し、師匠、俺たちを餌にするために、ここに連れてきたんすか!!」
すると、小さな足音が聞こえた。
フィンは恐らく気付いていない。しかし、俺は気づいた。お俺は感動した。
「お姉ちゃん!!意地悪しないでよ!!困ってるじゃない!!」
美少女だ!!
竜とは思えない程にオシャレな格好をした、かわいい少女が、そこにいた!
黄色の瞳に緑の髪。
目元には緑を帯びた鱗!
腰周りのベルトには、後ろにいくに連れてゴツゴツし始め、竜の尾が生えている!!
さらには背中から巨大な翼があり、獣人の耳の如く、感情に合わせて動いている!!
獣人なんて目じゃないぞ、これ!!!
「眩しい、なんて眩しいんだ!!」
そうだ。ここは異世界だ!!美少女1人見ずに死ぬなんてあり得ない!!
死ぬとしても美少女に殺されるんだ!!
「あの、どうもすいません。驚かせるつもりはなかったんです。これ、タオルです。どうぞ拭いてください。」
あぁ。翼が、太陽が、この少女を天使へと昇格させている!
「おいローグ!!お前この状況でなんで土下座なんてするんだよ!!死にてぇのか!?」
「黙れクソガキ!美少女、人外、、性格普通、露出少なめ、俺の求める全てを満たした存在が目の前にいるんだぞ!!敬意を払え!!」
「クソガキィ!?テメェ自分の年齢を思い出してみろ!どっちがクソガキだ!」
くっ!人、馬鹿、露出多め、俺の欲の真逆を行く、クレンを好きになった奴には分からん!!
「すいませんだなんて、こ、こっ、こちらこそ!その口ですいませんだなんて言わせてすいません!」
「えっ??」
〈ちょっとヴェール!折角驚かせたのに、全部無駄になっちゃったじゃない!〉
そして、欧米人の、素で既に見開いたような目が、さらに大きくなるかのようのに、俺の感情は限界を超えた。
先程、俺達を驚かせた青龍が、人へと変化したのだ。
テールズ師匠の変身とは違い、尾や翼は変わらないのだ。
これはあれだ。あの某アイドルアニメの変身シーンに酷似している!言葉にすれば、著作権侵害にでもなるほどに!
桃色の瞳に青の髪。”ヴェール“と呼ばれた少女とは近いようで遠いのだ。美しい!
「チェッ!つまんないの!」
そして、このツンツンした感じ。
揃った!揃ったぞ!俺の求める美少女デッキが!!
「お前等、自己紹介しろ。」
「あっ、僕はローグ、ローグ・セルスフィアです!」
「フィンです!」
「よし!じゃあ今度は…。」
「こんにちは!!緑竜のヴェールと言います!宜しくお願いします!!」
「……ブルよ。」
あぁ。なんて美しい。これから魔王に殺されるかもしれないからな、彼女達に殺ってもらうのもいいかもな…。
「あの、ちょっといいですか?『宜しくお願いします』って、どういう事ですか?」
「竜の聖地は頑丈で、安全だからな。それに、男2人じゃむさ苦しいだろ?そういう事だ。」
「そういう事ですか……。」
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その後、俺達は木々の奥へと進んだ。
首が痛くなるほど高い木々が密集していて、そこら中で苔が繁殖していた。
しかし不思議な事に、触れようとすると、その部分が何やら白く発光し、直に触る事が出来なかった。これが「竜の加護」なんだろうか。
「はいはい、着きました!ここが我が家です!」
そこには別荘のような家があった。
というか、窓枠が金属だったり、明かりから光属性を感じたり、しっかり人類の叡智が詰まってる。
テールズ師匠がつくったのか?
「ローグくんとフィンさんは、ここでしばらく待ってて下さい。すぐに戻りますから!あっ、中にある椅子には座ってていいですからね!」
「「……はい。」」
ギー バタンッ
ドッ
フィン。
「なぁ、 大事なもの、忘れてたな。」
ローグ。
「俺はもうリアに恋してるんだった!!」
「俺等、クレンの事忘れてたぞ!!」
「クレン……。そうだな。で?」
「『で?』、じゃねぇぇよ!!仲間だろ!!なんで恋愛事情持ち出してんだ!!」
「んだとテメェ!!お前だって恋愛対象を仲間と称して心配しやがって!!こっちが気ぃ使って、知らないふりしてるのを知りもせず!!」
「ぐっ……!」
正直、クレンとかいう露出狂は知らん。どうだっていい。
俺はリアに、ある種の間違いとはいえ、告ったんだ!!
なのに、新しい少女と会って、急に想いを馳せる相手を変えて良いわけない!!
…ん?待てよ?許されないのか?
いや……。自分の体を見ろ。俺は8歳だ。8歳なんていう未熟な歳なら、何でも許されるんじゃ……。エクシズとかが対等に接しすぎてたせいで忘れてた!
それに、この歳で真面目な恋愛なんてできるわけがない。
許される、許されるぞ、これは!!
『ちょっ!ちょっと止めてよ!!いやだ、会いたくないよ!!もうあんな風に見られたくないよ!!』
『安心しなさい、あの連中からはそんな度胸感じられなかったわ。』
『ちょっとお姉ちゃん!!失礼よ!まだ小さい子だっているのに!!』
ブル、開始早々、お前のトゲが俺等に刺さってるぞ。
ガチャツ
ギィー
「もう一人、紹介しますね。この子はルージュ。弟です!!さっ、挨拶して。」
「……。」
「あら、ここにも情けないのが居たのね。」
「もう!やめてよ!!……こんな可愛い子に、なんでそんな事言えるのかしら……!」
俺達は、そのルージュという弟を凝視した。
俺やフィンの顔は、決してかっこいいわけではない。しかし、不満はない程度ではあった。
しかし、そんな普通な俺等でも嫉妬しそうだ。いや、普通だからこそ嫉妬するのか?
いや、違う。そうじゃないな。
何?乙女ゲームの少年は美少年?
何?漫画の公爵家の息子は美少年?
何?悪女の側近にいる少年は美少年?
いやいや。
こいつ、比になんねぇぞ。