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バグった転生  作者: Glucose-One
エラー_01
12/65

01-06 フィンのバグり始め


ガチャッ


 虚しい音だ。

 まさか戦いに参加させて貰えないとは。情けなくて仕方ない。


「あっ。フィンさん。おかえりなさい。ローグは?クレンさんは?他の人達はどうしたの?」


「えっ?いや、まぁ。」


 戦いに行った、なんて言えるかよ。

 急に知らない場所に来て、知っているのはローグだけ、なんて状況で、余計な心配させたくねぇよ。

 8歳であの力を持ったローグ、8歳でこれだけの精神力を持ったリア。

 頭が上がらない。


「その、魔王の所に行ったの?」


「いや、……。」


 隠すのは厳しいか。ローグ程じゃねぇけど、リアちゃんもリアちゃんで、中々な早熟ぶりだからな。


「ローグ、大丈夫かな?」




「ローグ。死んじゃったらどうしよう。」


 


「もうパパともママとも会えないし。ローグがいなくなっちゃったら……。」


「あっ、ああ!泣かないで!大丈夫大丈夫!!きっと会える!ローグは凄い奴だ。きっとなんとかなるよ!!」

 

「…なんで、フィンさんは行かないの?フィンさんは心配じゃないの?」


「俺は……。」

 

 冒険者になって5年間。俺は全く成長できなかった。


 今ここで何もしなかったら、もう、本当に何もできないままじゃないのか。


 でも、一体俺に何が……。


ドオオオオォン


「きゃあああ!」


「なっ、なんだ!?」


 魔王城からか!!


「ねぇ!フィンさん、ほんとに行かなくていいの!?」


 ……。

 俺が行った所でケガ人になるだけだ。

 行かないほうが、邪魔にならないはず。


「……。フィンさん。クレンさんとローグと一緒の時、楽しそうだったけど、私みたいに、なくなっちゃったら、どうするの?」


 なくなる?

 あれが?

 いや。

 なくなるのか?

 ……。


「私はローグが帰ってくるのを待ってる。フィンさんの事も、待っててあげる。」 




「あっ、フィンさん。こんにちは。お出かけd……。」


「すいません、店主さん。急用で!!」


 くそっ!俺は何してんだ!

 行ったって何もできないのに!

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」


 そうだ。

 これまで、ずっとこんな感じだったな。


 何をするべきか、何ができるか、そんな事ばっかり考えてた。

 俺は冒険者になって、凄い奴になるんだと思ってた。

 でも、何も求められなかったし、何もできなかった。


 初めて入ったパーティでは、こき使われた挙句、追放された。

 勇者になって入ったパーティでは、何も出来なかった。

 俺以上に何も出来なかったクレンのために、俺は抜けた。あいつを1人にして、路頭に迷わせないように。

 でも、2人揃って路頭に迷った。

 数年間冒険者をやるような物騒な奴らに、職を与える奴なんていなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」


「君、止まりなさい。この先は魔王城がa……!おい!!待て!!危険だぞ!」


「……?なぁ、あいつから勇者の力感じなかったか?」


 クレンには、お前の面倒を見てやってると息を巻いていたのに、この様だ。でも、クレンは笑うだけだった。

 2年間、自分の無能を信じなかった。その後3年間、自分の無能を疑った。

 でも、今は自分が無能だって認めれた。

 クレンと出会って、ローグみたいな天才と出会って、俺はスタートに立てた。

 後は走る。走って、走って、走り続ける。


「はぁ、はぁ、はぁ。」


 クレンがいなくなるのは嫌だ!!

 

 俺には使命も義務も与えられてないし、残されてない。

 だけど、俺には出来る事が、出来るべき事と、したい事がある。


 怖い。嫌な予感がする。クレンはいつどこにいっても必ず生きて、笑って、ボロボロになって帰ってくる。


ドオオンッ

ドオオンッ

ゴオオンッ

ガアアンッ


「こらっ!君!今は魔王との戦闘中だぞ!止まりなさい!!」


 でも、今回はなぜか、戻ってくる気がしない。


「はぁぁっ、はぁぁっ、はぁぁっ。兵がっ、どこにもっ、いないっ?」


「大丈夫ですか!!返事はできますか!!おいっ!!何故傷が治らないんだ!!」


「魔剣の魔素が濃すぎるんだ!!私の治癒魔法が全て相殺されてるっ!!」


「おいっ!!そこで止まるな!!後ろに何人ケガ人がいると思ってんだ!!さっさと動け!魔王城の外に連れ出すんだ。」


 体の一部を失った勇者が、傷から血が流れ続けている勇者が、呻き続けている勇者が、血を流しながらケガ人を運ぶ勇者が。


ダッダッダッダッ

 

「クレンさん!!クレンさん!!意識をしっかり!!通してくれ!彼女は腹が裂かれてる!!重症者だ!!」


「はっ!?今この場に重傷を負ってない奴以外いねぇんだよ!!」


 クレン??


「クレン!!クレン、大丈夫か!!」


「なんだあんた!彼女は早く運ばないと……。」


「フィ……、ン?珍しいね……。あなたから私の所に…ゴホッ、ゴホッ。」


「くそっ!傷が塞がらない、血が止まらないわで、何なんだこのケガは!」


 あぁ。今にも死にそうだ。

 俺の手が冷たいのだろうか、クレンの手が冷たいのだろうか。


「フィン…。」


「こらっ!!そんな状態で魔力を使ったらダメだろ。」


「えっ…?」

ー伝説級能力:召喚使役ー


 俺は目を疑った。確かにクレンから魔力が抜けた感じはする。

 しかし、目の前の存在が、信じられなかった。


〈むっ!どこだここは!……魔王城か。……で、貴様が愚かにも、我を使役しようとする者か。〉


「えっ、いや。」


 なんて魔力量!!


〈ほう。こやつ、精霊召喚を他者に使用するとは!器用な奴だ。〉


 そして、このオーラ!!


〈が、不服だ。戻る。……なぜ戻れん?私は確かに拒否したはず……。なっ!!この召喚陣、精霊に対して服従以外の権利が認められていない!!これは『掟』破りだ!!おい女!死ぬな!!頼む!!死なないでくれ!!早く解除するんだ!!〉


 その時、その精霊は、やけにデカい体で跪き、クレンに懇願する姿勢となった。


〈待て、なぜ我が跪いている。……!!いかん!!これは……!!〉


ー能力取得ー

ー上級能力:超魔力ー

ー究極級能力:万象凍結ー

ー究極級能力:万物凍結ー

「なっ、なんだこの力。これが精霊の力なのか!……あっ!」


 力を噛みしめていると、あの精霊と同じオーラを持ったものが体が出てきた。


〈ばっ……馬鹿な!!この我が、一方的に使役された……!?〉


 今なら何か、出来そうな気がする。とにかくやってみよう。


「……おっ、おりゃああああ!!」

ー上級能力:超魔力ー

ー究極級能力:万物凍結ー


「すごい!!魔剣の魔素が相殺された!それに、怪我の進行が止まってる!!何とかなるかもしれない!!」


 多くの勇者の目に光が灯っていく姿を横目に、俺は精霊を凝視した。

がたいのいい体からは至る所から白色と水色の毛が絡まるように生えており、関節以外の所では青色の鱗が付いていた。何より、顔はいかにもな犬であり、手や足は鋭い爪を伸ばした肉球になっている。


〈くっ!我の力を好き放題持って行きおって!お前が死んだあと、お前の周囲の人間を殺してやる。ズタズタにな!!〉


 姿は人型である。しかし、獣が人型化したような見た目にこの威圧感、更には氷の精霊であるというのだ。

 これは間違いなく、上位精霊フェンリルである。


〈何だ。何故我を見る。お前にはやるべき事があるんじゃないか?ついさっきまで頭の中はそれで一杯だったろう。〉


「そうだ!!行かないと!!勇王様を、ローグを助けるんだ!!」


 俺は、また走り出した。いつもより体が軽く、早く走れているのには、気付かなかった。

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