01-05 魔王バグってる
ー三日後ー
「フィン、クレン。お前らはここに残ってリアを守ってやれ。」
「えっ?」
「例の魔物の件や、訓練の様子を見た限り、お前らは魔王どころではない。」
「「……。」」
「あっ、あの!私、瞬間移動が使えます!細々した移動は出来ませんが、この町のどこかに戻ってくる事なら出来ます!!
「役に立つのだな?ならば後方にでもいろ。」
こいつ!!急に重大発言しやがった!
でも、悪いなフィン。この三日間、お前が必死に訓練についていったのは知ってるが、序列最下位の魔王とはいえ、命を懸けて戦うわけだ。そんな所に、戦えない奴を連れて行くわけにはいかない。
「そうだローグ。一応小さい奴が来るとは言ったが、お前の存在はややこしい。オーラを絞る事を忘れるな。」
「了解。」
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「お前ら!!勇王様の討伐隊が来たぞ!集まれ!」
「すまない。旅路で少し問題が起きてな。遅れた。戦況は?」
「はっ!私、第38魔王討伐隊隊長、ネルノス・ティレットと申します。今回、第30対魔王討伐戦線司令官を務めております。現状、15人を各地に配備し、自然発生、及び突然変異の魔物駆除を行っております。魔王城に関しましては、全23階の内、魔王直属の上部5階を除き、踏破しました。」
白髪に白色の瞳。更には純白の鎧。高濃度の聖属性だな。
いや、これは鎧というよりこいつ自身のものだな。
もしや、元々聖属性を帯びた人間が勇者になった事によって、純粋な聖属性になったのか。
一般人も聖属性になれるなんて、案外夢のある時代だな。
それにこいつ、中々強い勇者のオーラを放ってる。
周りにいる数十人全員が勇者と考えると、少々目劣りするが。
「しかし、一つ問題が……。」
「それが、我々を呼んだ理由か?」
「はい。魔王の序列上昇の可能性があります。数日前、序列11、17、18、27、29位の計5体の魔王が自決したとの報告がありました。以前にも序列上昇による強大化が確認されていますので……。」
「しかし、奴は序列最下位だ。倒さないわけにはいかない。」
エクシズ、かっけぇ~。
「よし!我ら勇王直属魔王討伐隊に続けっ!!」
「「「「はっ!!!!」」」」
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魔王城は予想通り、紫色と黒色が中心で、内部には低レベルの『認識阻害』がかかっていて、常に霧がかっている様子だ。
とはいえ、上部5階以外は踏破されているというのは本当で、本来巨大な魔物が居るはずの空間には十数人の中級勇者が、道の脇には一定間隔で低級勇者が居て、安全は確保されている。
たまに魔物が自然発生するのを見るが、近くの低級勇者や巡回している中級、上級勇者がフルボッコにしていた。
そして、ようやく19階への階段に辿り着いた。
「正面には10人編成でタンカーを配置、背後には魔術師、及び魔法師を、治癒魔術師、支援術師は後方にて援護、最前線には剣士を5人、クレンは瞬間移動の用意!」
おぉ、さすが、数多の魔王城を攻略してきただけある。
で、俺は最前線の剣士、か。
結構怖いけど、この体は全く怖がってない。むしろわくわくする。
「ローグ、お前は最前線にいる剣士のさらに前に出ろ。まずはお得意の剣技だ。」
「えっ?あっ!はい!!」
「なっ!勇王様!一体どういう……。」
「ティレットよ。この世界の頂点の高さを噛みしめるんだ。ローグ!行けっ!!」
「行くぜ!超越剣!!素振り・超!!」
ー上級能力:超魔力ー
ー下級能力:感覚強化ー
ー下級能力:身体強化ー
ー超越能力:超越剣ー
やり過ぎたか?
「…………。最上階、魔王階までの全魔物の消失を確認。……。」
18階から23階までの天井という天井を貫き、向かい側の壁を貫いていた。
切断面は熱を帯び、魔王城の自己修復機能を阻害している。
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
俺の後ろにいた兵士達が驚きと戸惑いを含んだ絶叫に近い声を上げていた。
「勇王様!!彼は一体何者なんです!先程からやけに強い勇者のオーラを感じていましたが、先の禍々しい剣からは魔王の力も感じました!!」
「あいつの存在はややこしいのでな。夢だと思っとけ。それより、最上階を破壊した以上、魔王がここまで降りてくる可能性がある。全員、構えろ!!」
このオーラ!魔王か?しかし、かなり弱いな。そこらの魔物のほうが強いのでは?
「誰だああああああ!!俺の城を壊した奴はあああああああ!!」
魔王が魔王階から降りてきた。翼が生えてる。飛べるくちか!
10年ぐらいあれば、俺の幼い翼もあれぐらいデカくなってたのに!
「剣士は後方に下がれ!!魔術師、魔法師は攻撃用意!!」
「我が名はギアレス!!魔帝様より力を授k……。」
「名乗りが終わるまでに倒すぞ!!攻撃!!!」
「プリフィケイション!!」
「フリーズ・ディストラクション!!」
「ファイヤーブレス!!」
「エレクトリック!!」
「スーパープリフィケーション!!」
「フローズン・ディストラクション!!」
「バーン・アウト!!」
「アブソリュート・エレクトリック!!」
勇王エクシズ、こいつ絶対転生者だ!!
多分この世界の人間だと、魔王が名乗りを終えるまで、「くっ」とか言って待機してそうだからな。
「ぐああああああ!!」
魔王の闇属性を浄化、その後凍結させて燃やし、感電させる。
全て中級から上級能力の魔術と魔法だ。
すごい力技だな。
俺も超越剣を……。
「まだ死んでいないな!!やはり序列は上がっているようだ。」
「死ねぇえええええええええええ!!!糞勇者共おおおおおおお!!」
ー特殊能力:狂乱ー
ー固有能力:魔剣ー
ー固?能力:魔剣ー
ー?有能力:魔剣ー
ー固有能力:?剣ー
ー??能力:魔剣ー
ー 能力:魔剣ー
ー固有能力: 剣ー
ー能力一時進化ー
ー??能力:魔剣・豪
「何だ!!あの巨大な魔剣は!!防御陣形!タンカー、全力で防御!!ローグ!超越剣だ!!」
「あいよ!!」
ー超越能力:超越剣ー
魔王ギアレスが俊敏な動きで俺に迫ってきた。
くっ!超越剣で背後の壁がどんどん壊れてるのに、剣の有効範囲が広すぎて、全くダメージがいってないんじゃないか!!
剣速は驚くほど遅いくせに!
1秒で1回という鈍重な動きであるにも関わらず、俺は一秒に数回というペースで斬撃を繰り出す必要がある。
が、だんだんといなし切れなくなっていく。
「っ!!エクシズ!!魔王がそっちに行くぞ!」
「魔王が来る!!タンカーは現状維持、術師は後方で待機、剣士は隙を見て攻撃!!」
エクシズの指示のもと、勇者たちは即座に動いた。
「我が魔剣の元にひれ伏せええええええええ!!」
これで足止めできるか!!
「囲え!ダークジェイル!!」
ー中級能力:暗黒格子ー
「小癪なぁあああ!!」
まずい!強力な一撃だ!
あれっ?クレン。こいつ何してる。
クレンは突っ立っていた。状況を理解出来ていないのが、あからさまに顔に出ていた。
「「クレン!!」」
「えっ?」
その瞬間、魔剣・豪の斬撃が、鈍い音とともにクレンの腹をかすめたのを、誰も見逃さなかった。