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悪役令嬢らしく全てを奪われ、断罪されたはずなのになぜかヤンデレ従者に溺愛されてます  作者: 音無砂月
第Ⅱ章 悪役令嬢、ヤンデレ従者に捕らわれる

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最悪。


私は今、馬車の中にいた。

婚約破棄のショックか、国外追放のショックか。多分両方。前世の記憶を思い出した。

私はここではない違う世界でミアとして生きていた。

死んだ理由は思い出せないけど、私は死んで転生した。この友人に無理やり読まされた恋愛小説『Liebe』の悪役令嬢イリスに。

どうして今、思い出すのだろう。

もっと早く思い出していれば殿下との婚約だって回避できたかもしれない。今の私ならアリシアと殿下の恋をもろ手を上げて応援するのに。


『道徳を説きながら悪役令嬢から愛する人を奪うヒロインがどうして愛されるのか理解できないわ。彼女こそ悪徳じゃない』


前世の自分が友人に言ったことを思い出して苦笑する。

まさに、その通りだと実際にイリスとしてアリシアと対面して思った。骨身に沁みたわね。

小説はアリシア視点で描かれていた。だからこそ友人はあれを名作と言い、イリスを悪役令嬢だと糾弾できたのだ。

アリシア視点で物語が進むからこそ、アリシアは母親に愛されない寂しさを押し隠した健気なヒロインとして読者を魅了できたのだ。

けれど実際は違った。

イリスは誰からも愛されてはいなかった。

母親から虐待に近い教育を受けていた。

そんな彼女の唯一の安らぎが月に一度殿下と過ごすお茶会だった。けれど、安らぎの時間はアリシアに奪われた。


『お姉様、お姉様が私を嫌うのは仕方のないことです。でも、どんな理由があろうと人を傷つけることは許されることではありません。どうか、外国で自分の罪と向かい合い、そして昔の優しいお姉様に戻ってくれると信じております』


イリスとしてアリシアの言葉にただ腹が立った。涙を流す姿が神経を逆なでさせた。

それは今も変わらないけど、少し違う。

アリシアを滑稽だと思った。

自分の罪と向かい合い?

ならまず、あなたが自分の罪と向かい合いなさいよ。

それさえせず、人を諭すなんて偽善者を地でいっているんじゃないかしら。

「お嬢様、ご気分が優れないようでしたら横になられてはどうですか?」

考え事をしていたからイスファーンが同じ馬車に乗っていることを忘れていたわ。

あの小説でもイスファーンは登場したわね。でも、あまり印象に残っていないのよね。すっごいイケメンなのにモブキャラだったのね。挿絵もなかったし、登場人物の欄にもなかった。

イリスの従者として時々でてきた程度だったものね。だからイリスが国外追放になった後、彼がどうなったかは書かれていなかった。

イリスも国外追放後の描写はなかった。

読者が望むのは悪役令嬢が断罪された事実とヒロインが幸せになった事実だけ。だって物語は「ヒロインのお姫様は素敵な王子様と幸せに暮らしました」で、終わるから。

「少し、休むわ」

「はい」

婚約破棄に国外追放、加えて前世の記憶まで思い出して完全にキャパオーバーだ。

殿下が貴族を勝手に刑に処することはできないから、まだ国外追放ではない。だけど、あの邸にイリスの居場所はない。

殿下の婚約者でなくなった娘など母親は要らぬと捨てるだろうし。元々気に食わなかった娘が家門に泥を塗ったのだ。父はきっと私を勘当するだろう。

回避できない以上、私の末路は路上で野垂れ死にかな。

そうならないように考えないと。でも、まずは休息が必要みたいね。瞼が何だか重い。






「おやすみなさい、イリス。これであなたは俺のモノです。二人で幸せになりましょう」






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