【前日譚】我が復讐、ぬるま湯のように気付かれず4/5【主人公を味方に付けよう】
人類絶滅計画の問題点を指摘された纓示は、
予測できる問題点の全てに対策を立てた事を明かした。
3/5の続きです
タイプウィッチの話題から数日経った頃、またしても久守が招集をかけた。
「そろそろこの計画に名前を付けようと思ってさ」
「前から考えてたが、一応意見も聞かないとな。祟紡侖なんてどうだ?」
席に着くなり久守が口を開き、俺は円卓の中央に計画の名称を記した立体映像を浮かべる。
「すいぼうろん? 随分と変わった字を当てたな」
「ひとりひとりの恨みは小さいかもしれんが、数を紡げば神の祟りにも匹敵する」
訝しむように久守が立体映像を眺め、俺は名称に込めた真意を仄めかせた。
「纓示殿はここに来る前に、数多くの異能力持ちに会われたのでしたな?」
「ああ、異能力に目覚めたが故に異形者と呼ばれた人達の無念も継承してる」
「いいですねっ! みんなの異能力があの娘達を通じて人間を守るんですねっ!」
真意に気付いた磑の問い掛けに俺は握り拳を震わせながら答え、重くなりそうな空気を払うようにアイリスが声を弾ませた。
この明るさを継承したジゅう人は、必ずや未来の人間を救ってくれるだろう。
「決まりだな。あとはグループ名?……この集まりにも名前が必要だと思うんだ」
「一応そっちも考えてある、シショクの12人なんてどうだ?」
そんな感傷に浸っている間に納得してくれたらしく久守が次の議題を持ち出し、俺は円卓の立体映像を切り替えた。
「シショク?どういう意味だ?」
しばらく映像を眺めていた久守は、全く理解が及ばない様子で首を捻る。
カタカナ表記なら候補も多いが実態に合う漢字が浮かばなければ、どんなに頭が良くても気付かれない。
やはり謎は、解いて教える瞬間が何よりも楽しい。
「絶滅の絶を糸と色に分けて糸色、メを十と読ませて2と組み合わせる」
「それでシショクの12人と言う訳か」
はやる気持ちを抑えて俺が操作する立体映像を眺めていた久守は、目から特大の鱗が落ちたような表情で何度も頷いた。
万が一俺達の名前があいつらに語り継がれたとしても、実行役に目的を知られる訳には行かないからな。
「反対する訳ではないが、我々は6人だぞ?」
「空席は6個あれば充分だ」
話がひと段落したと思った直後に磑が顎髭を撫でながら当然とも言える問題点を指摘し、俺は準備していた答えをそのまま出した。
頭の固い磑なら必ず突っ込んでくれると思ったぜ。
「以前話してた、操夢のギフトで見せる円卓会議だね」
「運命と責任感を操作してやれば、ステ=イションまで来れた人間への最後のひと押しになる」
気が緩んだ隙にドクターが先に口を開き、俺は出遅れた焦りを隠して他の4人に意図を説明した。
ドクターが味方で助かったぜ……
もし敵に回っていたら、俺の考えた計画は早々に詰んでいただろう。
とはいえこの計画を阻止するメリットなんてドクターに無いし、どの世界線でも必ず協力してくれるんだけどさ。
「でも、どうやって人間をステ=イションに誘導するんだ?」
「ジゅう人の脳に追加した人間の記憶信号を読み取る機能を利用する」
勝利を確信して内心笑っていたら久守が口を挟み、俺は円卓の中央にジゅう人の立体映像を浮かべて頭部を点滅させた。
「この機能をどう使うんだ?」
「簡単な話だ、読み取り機能を逆転させれば人間の脳に直接言葉を送信出来る」
短い説明では理解出来なかった様子の久守が更に聞き返し、俺は点滅させた立体映像の頭部から外に向けて矢印を飛ばす。
「技術的に出来なくはないけど、送れるのはせいぜい10文字だよ?」
「それだけあれば釣りが来る、送るのは7文字でいいからな」
キーボードみたいなものを取り出したドクターが計算の結果を映像の隣に並べ、俺は勝ち誇った気分で肩をすくめた。
「ステ=イションか……」
「正解だ。女の子を前にしたら突然頭に言葉が浮かぶんだ、誰でも運命だと感じるだろうぜ」
いち早く気付いたトウカが立体映像に書き加え、勢い良く親指を立てた俺は込み上げて来た笑いを噛み締める。
「やれやれ、まるで物語の主人公だ」
「主人公を取り込んで味方に引き入れる計画なら勝利も確定するだろ?」
「違いない」
肩をすくめて鼻で笑った久守は、笑いを噛み締める俺の言葉に釣られて大笑いに変わった。
今はまだ冗談の範疇だが、未来ではきっと「主人公」が活躍してくれるだろう。
お読みいただきありがとうございました
5/5に続きます




