【前日譚】我が復讐、ぬるま湯のように気付かれず3/5【協力者を増やそう】
人類絶滅計画を画策した纓示は、
ジゅう人を使った人類淘汰計画として立案した。
2/5の続きです
計画発表から数日経った頃、突然久守が会議を招集した。
「この計画はジゅう人の女性と人間の男ばかりで、人間の女性は蚊帳の外だ」
「人間の女性とジゅう人の男が結ばれない以上、反発を招くかもしれないぞ?」
円卓に着くなり久守が口を開き、磑も隣で頷く。
この計画の不備に自力で気付いたのは褒めたいが、まだ序の口。
取り敢えず用意したシナリオで様子を見よう。
「ジゅう人に押し倒される男は人間の女性から見れば非モテ陰キャ、不快なものが消えたと喜ぶだろうさ」
「だが。そういう手合いこそ、人の成功を妬むものだ」
準備していた問答集を読み上げた俺は大袈裟に肩をすくめるが、今度はトウカが静かに口を挟んだ、
流石は同性、奴等と同類でなくとも心は推測できる訳か。
だが俺だって、この程度の事は想定済みだ。
「本人が希望すれば、ジゅう人化手術でタイプウィッチになれるんだろ?」
「見た限り、ジゅう人の男しか愛せなくなるが?」
ハッタリで余裕の表情を作った俺はそれぞれの前に立体映像の計画書を浮かべ、ひと通り読み終えた磑は眉を顰めて聞き返す。
「若さと美貌を手にした代償と考えれば安いもんだろ」
「でも危険は無いのか?」
「そもそも人間の生体データに人造遺伝子を組み込んであるのがジゅう人だ、先か後かの違いしか無い」
わざと鼻で笑った俺は、尚も食い下がる久守を受け流して円卓の向かいを見る。
「わたし達とモモちゃんの体で実証済みです、問題ありませんよ」
「至って健康そのものだ、これで対価も貰えるなんて話が美味すぎる」
目が合ったアイリスがにっこりと微笑み、隣でトウカが躊躇いがちに肩を回す。
ちなみにアイリスはトウカを「モモちゃん」と呼ぶが、たぶん名前に桃華とでも字を当てたんだろう。
小説に出すキャラクターの名前を考え出す俺の傾向まで継承したのか、それとも元々の性格なのか、今となっては知る術も無いが興味も無いけどな。
「対価は各々の好みのジゅう人男性、これだけでギブ&テイクは充分成立してる」
「そうだったな、完成が楽しみだ」
「ジゅう人に仕込んだ願いはオミットしてるから、好きにしていいぜ」
計画のプラスになる点を仄めかしながら安心させた俺は、僅かに赤く染めた頬を緩めたトウカに更なる安心材料を提供した。
「願い?」
「人間を守り、人間を愛し、そして思うがまま自由に生きてくれと願いを込めた」
「プログラムが願いか、物は言いようだね」
オウム返しに口を開いた久守に簡単な内容を教えてやり、反対側からドクターが肩を震わせて笑い出した。
「だが古今東西のあらゆる創作で主人公が勝利したのは愛の力だ。俺自身は本当の愛なんて知らないし、知る事も無いだろうがな」
「先手を打って正義のお株を奪おうというのか、実に愉快な発想ですな」
持論と共に染み付いた俺の感情を吐き出し、腕組みをして考え事をしていた磑は豪快に笑った。
「ああ、愛の力で人間を守る悪役を正義がどう裁くのか楽しみだ」
「そこまでして人間を守る価値なんてあんのかね~」
「どんな計画も成功するには大勢の協力者、俗物を味方に引き入れる事が重要だ」
釣られて笑った俺は、大きくため息をついた久守に数の重要性を説いて見せる。
「計画に賛同する奴や反発する奴はもちろん、お高く留まって無視する奴や計画を理解出来ない奴の全てを協力者に仕立て上げるんだから恐れ入谷のなんとやらだ」
「これがここにいる6人の復讐計画なんて、もしバレたら袋叩きでは済まないね」
「俺達の復讐は、ぬるま湯のように心地よく気付かれない事が肝要なのかもな」
即座に計画の要点を理解した久守の向かいでドクターが肩をすくめ、俺は計画の性質を再確認してから鼻で笑った。
人ごみに埋もれて目立たない平凡な才能が人間を滅ぼす切り札になるのだから、世の中何が役に立つか分からないものだ。
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4/5に続きます




