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[R-15]ステ=イション祟紡侖(すいぼうろん)~異界の住民が地球に転移してから200年、人間は希少生物になってました~  作者: しるべ雅キ
外伝いろいろ

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【後日談】~紅葉襍譚~

ノベルアップ+のイベント「秋の5題小説マラソン」の5周目、

「紅葉」を題材にした短編を再編集しました

「たまにはお出掛けするのもいいでしょっ? 教授っ」

 透明なドーム状の天井に覆われた街の中、前を歩く桜色の和服を着た少女が振り向いて満面の笑みを浮かべる。


「そうだな……マイスイートハニー……」

 少女の後ろを歩く紺色のスーツを着た青年は、躊躇(ためら)いがちに微笑みを返した。


「……やっぱり、この呼び方は勘弁してくれないか?」

「ダメですよっ、昨日からの約束なんですからっ!」

 恥ずかしそうに頭を掻いた青年が(うつむ)き、少女は悪戯じみた笑みを返す。


「これも埋め合わせの一環だったな……それで、どこに行くつもりなんだい?」

「もうすぐ着きますよっ!」

 観念した青年が周囲を見回し、丸い目を大きく見開いて上り坂を指差した少女は力強く歩き出した。



「とーちゃーくっ! どうですかっ、教授っ?」

「これは……谷戸を切り拓いたんだし、こういう形で自然も残ってる訳か」

 満面の笑みを浮かべた少女が腕を広げ、感心した青年は木々の間を通る遊歩道に目を向ける。


「以前教えてもらった緑地公園ですっ!」

「色々あって忙しかったけど、すっかり秋なんだな」

 腰に手を当てた少女が鼻息荒く胸を張り、(あか)に染まった木の葉に気付いた青年は静かに目を細めた。


「はいっ! 紅葉がとってもきれいですねっ!」

「何でだろうな……紅葉襍譚(もみじそうたん)を思い出しちまったぜ」

 腰の後ろに両手を回した少女が嬉しそうに微笑み、頬を指で掻いた青年は曖昧な笑みを浮かべる。


「ほえ? もみじそうたん?」

「古典のデータベースに隠れてた素人のネット小説だ」

 小首を(かし)げた少女の顔が疑問符をいくつも浮かべたものになり、簡単に説明した青年は気恥ずかしそうに頭を掻いた。


「どんな話なんですかっ?」

「紅葉を題材にした5つの短編だよ」

 興味津々の少女がスーツを掴み、袖を引かれた青年は歩きながら説明する。


「おもしろそうですねっ! ひとつ目はどんな話ですかっ?」

「未来の地球で宇宙人が作ったロボットが軍人と月見をする話だ」

 足を止めた少女が振り向き、軽く頷いた青年はあらすじを説明した。


「ロボットがお月見……何だか変わった話ですねっ」

「月や紅葉を見たロボットは的外れな受け答えばかりするんだ」

 しばらく(うつむ)いて考えた少女が大きく目を開き、青年は周囲を見回しながら続きを話す。


「ロボットなら仕方ないですね……」

「紆余曲折の末に月見団子を平らげて、ロボットが興味あったのは食べ物だけってオチなんだ」

 頬を指で掻いた少女が曖昧に微笑み、青年は悪戯じみた笑みを浮かべてから肩をすくめた。


「ロボットがお団子ですかぁ、なんだか不思議な話ですねっ!」

「宇宙人が作ったロボットだからな、しかも最後は熱いうどんを食べたくなる」

 口を手で押さえた少女が小さく笑い、青年は悪戯じみた笑みのまま軽く頷く。


「なんですか、それっ? 昔の人は面白い事を考えるんですねー」

「そいつが取り分け変なだけだよ」

 堪え切れずに大笑いした少女が目に溜まった涙を拭い、同じく笑っていた青年は息を整えて肩をすくめた。



「2つ目はデータを増やしすぎて重くなったメカ娘がダイエットする話だ」

「メカ娘? ロボットとはどう違うんですかっ?」

 しばらく歩いてからベンチに腰掛けた青年が話題を変え、隣に身を寄せた少女は小首を(かし)げて聞き返す。


「ひとつ目との関連も含めて、読者のご想像にお任せする形だ」

「何かいい加減ですねぇ」

 軽く首を振った青年が小さくため息をつき、少女は複雑な笑みを浮かべた。


「新作のパイロット版って考察もあるくらいだ。全くいい加減だよ」

「それでメカ娘さんは、どんなダイエットをしたんですかっ?」

 遠い目をした青年が肩をすくめ、気を取り直した少女は内容に話題を移す。


「忍者漫画を参考に分身の術を再現して体重を分散したんだ」

「自分を増やす術ですか……おもしろそうですねぇ」

 呆れ気味に笑った青年が内容を簡潔に話し、何度も深く頷いた少女は含み笑いを浮かべる。


「おーい……マイスイートハニーさん、色んな意味で勘弁してくれよ」

「わかってますよっ! みなさんもいますからっ!」

「そっちは……仕方ないか……」

 疲れた様子でため息をついた青年に少女が満面の笑みを返し、言葉を詰まらせた青年は諦め気味に項垂(うなだ)れた。



「それで教授っ、3つ目はどんな話ですかっ!」

「3つ目は、魔法を撃ち出す銃と機械刀を持った2人組の話だ」

 街を見下ろす高台に辿り着いた少女が振り向き、青年は斜面の手前に設置された柵に肘を乗せながら説明を始める。


「機械刀って、まさかっ!?」

「いや待て、色々と待て。さすがに違うだろ」

 思わず大声を上げた少女が顔を近付け、慌てて手のひらを向けた青年はスーツの袖を意識しながら静かに首を横に振る。


「ですよね~っ……ちょっと驚いただけですっ」

「昔の人が欲しいと思い描いたものが今につながってるだけだろ」

 口元を手で押さえた少女が照れ笑いを浮かべ、青年は眼下の街を眺めながら頭を掻いた。


「さすがは教授ですっ! それで2人組は何をしたんですかっ?」

「文化祭の準備中に発生した、紅葉に取り憑いた怪生物を人知れず駆除するんだ」

 大きく頷きを返した少女が鼻息荒く目を見開き、柵に背を預けた青年は舞い散る紅葉に目を向けて説明を再開する。


「これがホントの紅葉狩り、ですねっ」

「白黒付けない灰色の技術を生み出す灰色の脳細胞を持った男達の灰色の青春って訳だ」

 腰の後ろに手を回した少女が覗き込むようにして微笑み、作品のテーマを並べた青年は軽く肩をすくめた。


「でも人知れずなんて少し淋しいですね……」

「科学と魔法が対立してる世界なら、どうしても異端になっちまうからな」

 悲しそうに空を見上げた少女が静かに(うつむ)き、静かに頷いた青年は優しく微笑む。


「わたし達の世界ならモテモテだったでしょうねっ!」

「これも願望の実現、って訳か……」

 明るさを戻した少女が弾むような声で微笑み、青年は少女を見詰めながら静かに呟く。


「ほえ? 何の事ですかっ?」

「何でもない……」

「わかりましたっ! 次はあっちに行ってみましょうっ!」

 小首を(かし)げた少女に微笑んだ青年が軽く伸びをし、大きく頷いた少女は反対側に降りる道を指差した。



「それで教授っ! 4つ目はどういうお話なんですかっ?」

「剣と魔法の異世界で勇者になった地球人が創造神の依頼(クエスト)を受ける話だ」

 舗装された道路に出る手前の道で少女が振り向き、短くあらすじを話した青年はアーチ状の車止めに軽く腰掛ける。


「紅葉って異世界にもあるんですかっ?」

「作者の想像だからあっても不思議はないだろうけど、今回は違うんだ」

 元来た道を眺めた少女が丸い目を大きく見開き、軽く微笑んだ青年は静かに首を横に振った。


「ほえ? どういうことです?」

「創造神の依頼(クエスト)は地球の甘味(かんみ)を持ち帰るものなんだよ」

 全く理解出来ない様子で少女が小首を(かし)げ、青年は悪戯じみた笑みを浮かべる。


「わかりましたっ! 出て来るのは地球の紅葉ですねっ!」

「正解だ、勇者と相棒の女戦士は創造神の手違いで山奥に降り立つ」

 得心の行った様子で少女が頷き、優しく微笑んだ青年はつい先ほどまで自分達が登っていた高台を見上げた。


「確かに紅葉は楽しめますけど、スイーツを持ち帰れませんねぇ……」

「その通り、勇者達は制限時間内に目的地に行けなかった」

 同じく見上げた少女が人差し指を口に当て、笑いを堪えた青年は肩をすくめる。


「では、依頼(クエスト)は失敗したんですかっ?」

「目的地には行けなかったけど、勇者達は途中で出会った農家の畑仕事を手伝う」

 しばらく(うつむ)いた少女が縋るように見上げ、青年は安心させるように微笑んだ。


「そんな時でも人助けをするなんて、やっぱり勇者なんですねっ」

「手伝いの礼に貰ったサツマイモを持ち帰った勇者は、女戦士や創造神と焼き芋を食べる準備をして話は終わるんだ」

 思わず吹き出した少女が安堵のため息をつき、青年は車止めから降りて軽く腕を伸ばす。


「聞いてたら、何だか焼き芋が食べたくなりましたっ!」

「そうだな、帰りに買ってくか」

「はいっ! みなさんの分もですねっ!」

 はにかみながら微笑む少女に頷いた青年が道路に目を向け、少女は満面の笑みを返した。



「ところで教授っ、5つ目は?」

「それがな……データベースには4つしか無いんだ」

 街に戻る坂を下る途中で思い出したように少女が振り向き、青年は軽く首を横に振る。


「読み終えた人が心に描く物語、きっとそれが5つ目なんですねっ」

「そんな綺麗なものか? 単にデータが残ってないだけだろ……」

 胸元に手を当てた少女が陶酔したように目を閉じ、青年は呆れ顔で頭を掻いた。


「ちょっと夢が無いですよぉ、教授ぅ」

「すまない、今まで夢を見る事なんて出来なかったからな」

 現実に戻った少女が唇を尖らせ、頭を掻く手を止めた青年は素直に頭を下げる。


「いいんですよっ、教授っ! わたし達の物語はここから始まるんですからっ!」

「そうだな、マイスイートハニー……(おれ)達はここから未来につなげるんだ」

 満面の笑みを浮かべた少女が青年の手を握り、固く頷いた青年は柔らかな少女の手を優しく握り返して歩みを合わせた。

お読みいただきありがとうございました。

なろう版が完結、ノベプラ版は連載中と言う微妙な時期に執筆したので

キャラの名前をはぐらかす形となりました。


他の4つのエピソードは紅葉襍譚にて公開していますので

https://ncode.syosetu.com/n9188il/

興味を持っていだければ嬉しく思います。

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